13〜16話


第13話 「みそ騒動」

最高尚宮(チェゴサングン)の座を巡り、競合することになったハン尚宮(サングン)とチェ尚宮(サングン)。チェ尚宮(サングン)はクミョンを、ハン尚宮(サングン)はチャングムを助手に指名する。味覚を失っているチャングムはハン尚宮(サングン)に辞退を申し出るが、ハン尚宮(サングン)はチャングムの「味を描く能力」を最大限に引き出そうと、強引にチャングムの訓練を始める。一方チェ尚宮(サングン)も周到に用意を始める。ヨンノをチャングムと同室にし、密かにハン尚宮(サングン)側の様子を探るよう指示。また女官長は本格的にチョン最高尚宮(チェゴサングン)の失脚を計り始める。そんな時、宮中に一大事件が起きる。宮中のみその味が変わったのだ。みそは基本食材であるだけでなく、吉凶までも左右する。味の変化は不吉の前兆とされていたのだ。女官長から原因追求を厳命されたチョン最高尚宮(チェゴサングン)は、これを競合の最初の課題として、ハン尚宮(サングン)とチェ尚宮(サングン)に言い渡す。

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次期最高尚宮を決める競合で、チャングムとクミョンが補佐役として選ばれたことにチョバンは憤慨する。例によってヨンセンとヨンノは頼まれてもいない代理戦争を繰り広げる。そんな中、将来ハン尚宮もチェ尚宮も退いた後、自分が最高尚宮になったらチョバンを贔屓してやると気安く請け合うミン尚宮。・・・脱力する一同。
ハン尚宮が自分を不憫に思って補佐役に選んだのだと思いこんだチャングムは、ハン尚宮に考え直すよう訴える。だが、ハン尚宮は私情に流された訳ではなかった。料理人に求められる二つの能力について説明するハン尚宮。一つは「料理の勘」。そしてもう一つは、ハン尚宮にもチェ尚宮にもなく、クミョンでさえ持っていない、「味を描く能力」である。その能力がチャングムにスンチェの饅頭や鉱仙水の冷麺を作らせたのである。そして「味を描く能力」を持つチャングムなら、味覚がなくとも美味しい料理を作るのは不可能ではないと諭すのだった。
そしてハン尚宮は、幼いチャングムに他の子たちとは違う修行を課していたのも、「味を描く能力」を養うためだったことを打ち明ける。その能力を備えた料理人は、新しい料理を創り出し料理を発展させるだけでなく、既存の料理に工夫を加えてより美味にすることもできるのだ。
ハン尚宮の話を聞いただけではまだ自信を取り戻すことができないチャングム。ハン尚宮はそんなチャングムに、一切味見をすることなく二つの料理を作るよう命じる。海老の和え物と豆腐のチョンゴル。いずれも繊細な味付けが求められる料理だ。果たして味を描く能力」だけでそんな料理を作ることができるのか。半信半疑のまま料理に挑むチャングムであった。
料理を作り終えたチャングムにハン尚宮は言う。「ほら見なさい。ちゃんとできたじゃないの!お前ならきっとできるはずだと言ったでしょう!」
「尚宮様・・・ほんとですか?本当にこれでいいんですか?本当に美味しく出来ていますか?」
ちゃんと味付けができているだけではなく、海老の和え物では海老の煮汁を使うハン尚宮独自のやり方を見抜き、豆腐のチョンゴルでは下味を付けた牛肉を豆腐に挟むという全く新たな調理法まで思いついたチャングム。ハン尚宮にとって、チャングムは最愛の弟子であるのはもちろん、味覚を失ってなお最も優秀な部下でもあるのだ。見捨てることなどできるはずがなかった。
その夜ハン尚宮は、盲目の魚売りの姿からチャングムに味覚に頼らず料理をさせることを思いついたことを話す。だが、視覚にせよ味覚にせよ、失った感覚を補うためには血の滲むような努力が必要になる。その努力はあの魚売りがそうだったように、チャングム自身がするしかないのだ。
「私は色々な人に尋ねて味覚を取り戻す方法がないかどうか探してみるから、お前もすべきことをしなさい」
「はい。そう致します。もう二度と諦めたり致しません」
同じ頃、チェ尚宮はクミョンに一冊の書物を見せていた。それは、代々水刺間最高尚宮に受け継がれ、水刺間の料理に関するあらゆる記録が記された「秘伝の書」であった。本来ならチョン尚宮の手に渡るべきものだが、先代の最高尚宮は密かにチェ尚宮に渡していたのである。チェ尚宮はこの秘伝の書の内容をクミョンに学ばせ、再びチェ一族の元に最高尚宮の座を取り戻す準備を始めようとしていた。
そして、提調尚宮も大妃殿や中宮殿の尚宮たちを語らい、チョン尚宮の追い落としを謀っていることをチェ尚宮に話す。「あの律儀な性格だけは認めよう。律儀だからこそ、こちらには都合が良いのだ。ああいう人は人を疑うことを知らないからね」提調尚宮は一体何を企んでいるのだろうか。
チェ尚宮は更にヨンノを抱き込んで、ハン尚宮とチャングムの様子を探らせようとする。チャンイをそそのかして賭け麻雀をしていたヨンノを叱ると見せかけて金を渡し、チャンイに悪い遊びを教えたりできないように引き離すという名目でチャングムたちの同室に戻したのである。
それから時日を置かず、水刺間に大事件が発生する。味噌(醤)の味が変ってしまったのである。味噌はあらゆる料理の基本となる調味料であり、味噌の味が変ると国に異変が起こるとも言われている。早急に原因を究明し事態を収拾しなければならない。
提調尚宮は味噌の管理が不十分であったとして、最高尚宮の責任を追及する。「裏であのようなことを企んだりするから、水刺間の仕事が勤まらぬのだ」最高尚宮にとっては最悪のタイミングで発生した事件であった。
醤庫に集まり、味噌の状態を確認する尚宮たち。確かに味が変ってしまっているが、醤庫媽媽の管理に問題があったとも思われない。最高尚宮は、この問題の原因究明と収拾をハン尚宮とチェ尚宮に対する最初の課題とする。ハン尚宮とチェ尚宮はそれぞれチャングムとクミョンを連れ、原因究明のため王宮を出る。
味噌に使う塩を王宮に納めているのは、チェ・パンスル商団である。チェ尚宮は万が一塩に問題があってはと兄の元を訪ねる。そこで明らかになったのは、オ・ギョモから急に多額の資金提供を求められたために、水刺間に納める分以外の塩に品質の劣るものを混ぜ、資金源としていたということだった。余りに無謀な兄の行為に、チェ尚宮もさすがに色を成す。ハン尚宮も味噌の味が変った原因を探っている以上、倉庫にある塩を入れ替えておかなければ思わぬところからチェ・パンスルの不正が明らかになってしまう。
ハン尚宮はチェ・パンスルの納めた塩を確認する。だが、塩は既に取り替えられた後だった。
塩に問題がないことを確認したハン尚宮とチャングムは次の目的地に向かう途中、カン・ドック夫妻と出会う。トックは、チュンジョチョナプタン事件で自分を助けてくれたチャングムに、お礼の松花酒を届けに行く途中だったのだ。ハン尚宮とチャングムは味噌の味が変ったことで大騒ぎになっていることを告げ、先を急ぐ。一方、トックはチャングムに恩返しをし、料理人として手柄を立てる時が来たと一人息巻くのであった。一体何を考えているのやら・・・。
塩に続いて、味噌種の状態を確認するハン尚宮。だが、味噌種は年々質が良くなっており、疑わしい点など全くなかった。
更に甕を確認しようとした二人だったが、王宮に納めた甕を作った職人は、納期を守れなかったために処罰を受けることになっても品質を落とさなかった程の人物であり、質の悪い甕を王宮に納めるなど考えられなかった。では一体何が問題だったのか・・・。
一方、チェ尚宮は新たに代わりの味噌を探していた。そして、麦を混ぜて作った良い味の味噌を見つける。だがその味噌は、王宮で使われているものより遥かに品質の劣る塩を使って作られていた。ハン尚宮の目をごまかすまでもなく、塩は関係なかったのだ。
チェ・パンスルの不正はむしろ全く別のところから露見しようとしていた。最高尚宮が、塩を挽いていたヨンセンに良い塩の見分け方を教えていたところ、チャンイが妙なことを言い出す。最高尚宮の見分け方に従えば、生果房(セングァバン 菓子を作る部署)では品質の劣る塩を使っているというのである。一人、生果房に赴いて塩の質を確認する最高尚宮。そこには確かに粗悪な塩が置かれていた。本人たちが気づかぬうちに、オ・ギョモとチェ・パンスルも追いつめられつつあった。
その夜、カン・ドックは王宮に忍び込む。占い師から、廃位された前王妃慎氏の恨みによって味噌の味が変ったと吹き込まれたトックは、チマ岩の伝説に倣って味噌甕にチマを巻き、怪しげな儀式を始める。だが、例によって早々に捕えられてしまう。
捕えられたトックを取り調べたのはミン・ジョンホだった。ミン・ジョンホは初めてトックとチャングムとの関係を知る。内侍府長官から、おかしな男だが悪人ではないとの口添えもあり、トックは釈放される。「本当にチャングムのお父上なのですか?」「ええ、本当ですとも。才気に溢れていて聡明なところは私にそっくりだと、皆さんそう仰います」「・・・似ていないからお訊ねしたのです」
時間は遡り、その日の昼。ハン尚宮とチャングムは味噌を祀る儀式をしている人々を見かける。その村では、味噌甕を一カ所に集めているようだ。宿の主人に事情を尋ねたところ、村の中に三カ所、良い味の味噌ができる場所があるという。
ハン尚宮がその「良い味の味噌」の味見をしたところ、確かに味が良く、王宮の以前の味噌とも似ていることがわかる。
味見をしながら、チャングムは松花酒に関するトックの妻の話を思い出す。「・・・花粉が入っているせいか、発酵も上手く行ってとっても美味しいんだから!」チャングムはついに原因を突き止めた。「尚宮様、きっと・・・!」
王の朝食。オ・ギョモからササン(四山 ソウルを囲む山々を指す)で火事が頻発しているため、消防に当たる人員を増やしたいとの奏上がある。提調尚宮はこのことを味噌の味が変ったことと結びつけようとするが、王は意に介さない。そして、チェ尚宮が見つけて来た麦入りの味噌を使ったチゲが王に供される。チゲに使うには甘すぎるとクミョンは難色を示していたのだが、何種類かの味噌を混ぜることで良い味を出せるとチェ尚宮が押し切ってしまったのだ。王は良い味だと認めはしたものの、以前の味噌の方が良かったと言う。
やっと王宮に戻ってきたハン尚宮とチャングム。「私が他の場所を探して来ます。先に最高尚宮様にお報せを!」
提調尚宮はチェ尚宮が見つけてきた味噌を今後も使うということでこの件を片づけようとする。だが、そこにハン尚宮が駆け込んでくる。「最高尚宮様!原因を突き止めました!」
遅れてやってくるチャングム。「尚宮様、ありました!木を切っていない

第14話 「蜂の針」

みその味が変わった原因を突き止めたハン尚宮(サングン)とチャングム。しかし、いまだ味覚の戻らないチャングムは気が晴れない。その頃菜園ではウンベクが蜂の針の効能について調べていた。負傷した兵士がさらに蜂に刺されたところ、逆にその兵士は全快したのだ。ウンベクからその話を聞いたチャングムは、自分に蜂の針療法を試して欲しいと申し出るが、断られる。その様子を見ていたチョンホは、チャングムを慰めようと声をかける。ヨンノはチェ尚宮(サングン)の言い付け通り、なにかとチャングムの様子を探ってはクミョンに報告。チェ尚宮(サングン)はチャングムの秘密に気付く。毎年恒例のシンミジェ(新しく考案した料理を競い合う行事)の審査をハン尚宮(サングン)とチェ尚宮(サングン)がつとめることになった。チェ尚宮(サングン)は、これを利用しチャングムの味覚が失われていることを確かめようとする。

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チャングムが見つけた「木を切っていない場所」。ハン尚宮は提調尚宮たちを水刺間に待たせ、その場所に置かれた味噌の味をみる。
「そうよ!この味よ!」そして、チャングムにこの味噌を使って王に供する味噌チゲを作るようチャングムに命じる。「ですが尚宮様、王様にお出しするものを・・・」「そうよ。だからこそお前が作るのです。お前は私付きの女官でしょう。チゲやナムル程度はお前の役目です。最初の仕事よ。・・・まだ自信が持てないの?」「・・・わかりました。私、やってみます」
チャングムが作った味噌チゲは大いに王を喜ばせる。味噌の味が変った原因は、味噌甕の周囲にあった木を切り倒したことにあった。栗の木や松の木から味噌甕に入った花粉が味噌の発酵を促し、良い味にしていたのであった。御医は、花粉には味噌の味を良くした酵素としての働き以外にも、消毒薬としての効能があることを王に伝える。味噌の味が変った原因を突き止めただけでなく、知られていなかった花粉の効能を見つけたことで、王は最高尚宮とハン尚宮の功績を賞賛する。最高尚宮の立場を悪化させるためにこの事件を利用しようとしていた提調尚宮とチェ尚宮であったが、結果は逆になってしまった。
味覚はまだ戻らないものの、料理人として十分前線に立てることを証明したチャングム。ハン尚宮は、味覚障害は焦らず時間をかけて治療することにし、間もなく開催される創作料理競演「新味題(シンミジェ)」の準備をするように言う。だが、チャングムは菜園に行ってウンベクの診察を受けたいと言うのだった。
茶斎軒ではウンベクが蜂を使った治療法を研究していた。以前、訓練中に怪我をした場所を偶然蜂にさされた兵士がウンベクの元に担ぎ込まれたことがあるのだが、その兵士はその翌日に怪我が治癒したばかりでなく、以前から患っていた腰痛まで完治してしまったのである。その話を聞いたチャングムは、自分が味覚を失ってしまったことを打ち明け、自分にその蜂針治療を施して欲しいと頼む。
そこに兵士を連れたミン・ジョンホが現れる。練兵場では無闇に蜂に刺されようとする兵士が後を絶たず、妙な噂の出所と目したウンベクに抗議をするためにやってきたのだ。誤解はすぐに解け、蜂に刺された兵士を連れて戻ろうとする途中、ミン・ジョンホは自分を蜂針治療の実験台にして欲しいと危険を承知で懇願するチャングムの話を聞いてしまう。
チャングムと共に菜園から戻る途中、ミン・ジョンホはチャングムに、聴覚を失った唐の楽士の話をする。その楽士は、自分の耳を治そうと国中の医者を訪ね、あらゆる方法を試した結果、聴覚は戻らなかったものの天下一の名医になった。そして楽士としても天下一だったという。
「慰めにもなりませんね。そういうものです。良い時は悪口を言っても有り難く受け取られるが、本当に辛い時は何と言ってあげればいいのか、かける言葉も見つからない。大丈夫と言っても口から出まかせのようだし、お気の毒と言っても人の心を弄ぶようで・・・」「今のお言葉には慰められました」ミン・ジョンホの言葉に、そう言って微笑むチャングム。
宮中に戻り、ミン・ジョンホはチャングムにまた医書を貸し出す。「ありがとうございます」「元気を出して下さい」「・・・はい」
そんな二人の姿を、偶然目にしてしまうクミョン。声をかけることもできず、彼女はただうつむく。
一方、自室に戻り借り出した医書を開いたチャングムは、本の間にミン・ジョンホの詩を書き記した紙が挟んであることに気づく。その詩は苦境にあるチャングムを励ますものだった。
一方、チェ尚宮から「お前は身内」と言われてすっかり舞い上がっているヨンノは、チャングムがハン尚宮の訓練を受けるため部屋を空けた隙にチャングムが読んでいた本の名前を控えてクミョンに報告する。クミョンは、チャングムが医書ばかりを読んでいることが気に掛かる。
ハン尚宮はチャングムにトッポッキを作ることを命じる。例によって味見は禁じられる。不完全な味覚であっても、一旦味見をしたらそれに頼ってしまう。味見をせず、その他の感覚を研ぎ澄ます訓練が必要なのだ。ヨンノはその様子を見て、クミョンに報告する。クミョンは、それが感覚を磨くハン尚宮なりの訓練法であると見抜く。
一方、最高尚宮の病状は悪化はしないまでも好転する兆しがない。
最高尚宮が医女の診察を受けているところに、ハン尚宮とチェ尚宮がやって来る。新味題(シンミジェ)の審査を依頼するためにやって来た二人だったが、最高尚宮は二つ目の課題として、今回の新味題の審査を二人に担当させる。
最高尚宮の居室から下がる途中、チェ尚宮は医女シヨンがチャングムと話しているのを見かける。チャングムはチェ尚宮に気づいて立ち去るが、何も知らないシヨンはチェ尚宮にチャングムが味覚を失ったことを話してしまう。
厨房で一人料理を作るクミョン。彼女はハン尚宮の訓練法を自分で試していたのである。それを知ったチェ尚宮は自分の教育法が気に入らないのかと叱るが、クミョンはただ誰よりも上手くなりたいだけだと答えるのだった。そしてチェ尚宮はクミョンとヨンノの話からチャングムが医書ばかりを読んでいることを知る。
新味題の開催が内人たちに伝えられる。不安げなヨンセン・ヨンノ、早くも頭を巡らせるチャンイ。・・・そして、チャングムに疑惑の目を向けるチェ尚宮。
チェ尚宮はチャングムと一番親しいヨンセンから、チャングムの様子をそれとなく聞き出す。チャングムが医書を読み始めたのがチュンジョチョナプタン事件以降であることを知り、チェ尚宮の疑惑は確信に変った。そして、ヨンノに何事かを命じるのであった。
新味題の審査当日。思い思いの創作料理を提出する女官たち。誰もが工夫を凝らした料理を作り、チャングムは竹筒飯で高い評価を得る。だがただ一人、ヨンノだけが味の劣る料理を提出し、ハン尚宮もチェ尚宮も顔をしかめる。
一通り審査が終わった後、チェ尚宮はお互いの料理を交換して試食させ、感想を述べるように命じる。チャングムはヨンノの料理を食べることになるが、味覚のない彼女にはヨンノの料理がひどい味付けであることが判らない。これがチェ尚宮の策略だったのである。
審査結果を最高尚宮に伝える際、チェ尚宮はチャングムが味覚を失っているらしいことを告げる。これには最高尚宮も驚き、急遽チャングムの味覚を試すことにする。水に少量の砂糖・塩・酢を混ぜ、どの水に何が入っているか当てさせる最高尚宮。チャングムは偶然順番通りに当ててしまうのだが、実は最高尚宮はチェ尚宮・ハン尚宮にも知らせず、ただの水を器に入れて並べさせていたのだ。チャングムが味覚を失ったことは明らかだった。それでもハン尚宮はチャングムの「味を描く才能」があれば料理は十分にできると主張する。それに対してチェ尚宮は、チャングムが珍しい献上品である鯨を上手く調理できればこのまま水刺間にいることを認めると言うのだった。もちろん、失敗すればチャングムのみならずハン尚宮の罪も問うという条件つきだった。
憤懣やるかたない表情で部屋を出た最高尚宮に、ハン尚宮はチャングムの才能があれば水刺間の仕事は十分にやれると訴える。水刺間は料理の味を見るところではなく、料理を作るところだと。「本気でそう思っているのか?」「はい、最高尚宮様」「ではお前は見たことも聞いたことも食べたこともない食材で料理が作れるというのか?!」
もはやチャングムが頼れる人は一人しかいない。ウンベクの蜂針治療以外に希望はなかった。一人茶斎軒を再び訪れるチャングム。
だがウンベクはチャングムに蜂針治療を施すことを拒む。蜂に刺されて死ぬ者もある。そんな不確かで危険な治療法をチャングムに試すことはできない。医者が治療に来た患者を死なせることなどあってはならないのだ。「でも、ウンベク様、私は死んだりしません。・・・私は死んだりしません!」ウンベクは蜂がどこを刺すか判らないという点に不安を持っていた。だが、チャングムは蜂の針を体から抜いて、ウンベクの手でそれを刺すという方法を思いつく。
チャングムの思いついた方法を採用して施術するウンベク。そして後々かゆみや呼吸困難の症状が起きた時のために蜂の毒を中和する薬をチャングムに持たせ、チャングムを帰すのだった。
チャングムが自分のために味覚を失ったことで責任を感じていたカン・ドック。彼は彼なりに何とかチャングムの味覚を取り戻そうと、王に蜂蜜を献上に行く道すがら、豚の胆嚢を用意する。
チャングムの体には蜂の毒によるかゆみの症状が現れていたが、チャングムは薬を飲もうとしない。薬を飲んでしまったら、毒は中和されるものの、治療の効果も消えてしまうからだ。
カン・ドックが来たことを知り、チャングムは彼の元へ急ぐ。トックなら鯨について何か知っているかも知れない。トックはトックで、チャングムに豚の胆嚢を食べさせようと待ちかまえていた。チャングムはとてつもなく苦い胆嚢を食べるが、実は豚の胆嚢を食べれば味覚が戻るというのは勝手にトックが言っているだけのことで、何ら裏付けのある話ではなかった。
チャングムはトックに鯨の味について訪ねる。牛肉に似ているが全く同じではなく・・・たまたま通りかかった長番内侍が茶々を入れる。「お前が食べていないものなんてないんだろう?五百年生きた大蛇も、千年の高麗人参も・・・」トックの話を当てにしていいのか・・・?
チェ尚宮は兄パンスルを通じて鯨の調理法を記した書き付けを入手する。同時に、宮中に納めた塩が全て最高級品とすり替えられたこと、オ・ギョモが最高尚宮に対して不興を示していることが伝えられる。
ついに水刺間に鯨の肉が届けられる。
最高尚宮は、ハン尚宮とチェ尚宮にそれぞれ調理をするよう命じ、補佐役のチャングムとクミョンは串焼きと煮物を担当することになった。今回ばかりはチャングムも生の肉を食べて味見をせざるを得なかった。それが形だけのものであっても・・・。
そして調理が終わり、最高尚宮は4人の料理を順に試食する。ハン尚宮の料理はタレが薄く、良い評価を得られない。チェ尚宮とクミョンはパンスルのもたらした調理法に従って手堅く仕上げる。そして、最後に最高尚宮はチャングムの作った串焼きを試食する。一口、そしてもう一口・・・。
「よろしい。御膳に出しなさい」最高尚宮はチャングムの料理を最高と認めたのである。チェ尚宮が驚いたのはもちろん、それはハン尚宮にとってさえ意外な結果であった。
チャングムの串焼きをつまみ食いしたヨンセンは無邪気に言う。「うわぁ、まるで牛肉の味と一緒だわ。おいしい〜。チャングムはやっぱり何を作っても上手ね」
自分でもその串焼きを食べてみるチャングム。彼女はウンベクの治療、そしてトックに豚の胆嚢を食べさせられた時のことを思い出す。「そうだ、あの時・・・苦かったわ!」チャングムの味覚は戻ってきていたのだ。

第15話 「捨てられた食材」

鯨の肉で串焼きを作ったチャングムの料理に中宗も満足し、おもしろくないチェ尚宮(サングン)。女官たち全員の前でチャングムが味覚を失っていることを暴露し、味覚を失った者が水剌間(スラッカン)に務まるかどうか、詰問。チャングムの味覚検査が行われることになる。すでに味覚が戻っていることを言いそびれていたチャングムは、アミの塩辛を使ったテストに全問正解、味覚が戻ったことをみなの前で証明する。チャングムは自分を助けてくれたウンベクとチョンホにお礼をする。更におもしろくないチェ尚宮(サングン)は競合の取り下げを狙い、根回しをするが、その結果、競合は行なわれるがその判断は中宗ではなく皇太后が行なうことに。王子の誕生祝いの料理が最初の競合とされたが、その後、皇太后が新しい課題を出す。一方その頃、チョンホは皇后の命を受け医務官と料理人を手配。幼い頃より皇后を世話してきた尚宮(サングン)が体調を崩し、ウナム寺で療養しているのだ。その料理人にトックが任命される。

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王は重臣たちに対して科挙制度の改革案を諮る。それは文章力と家柄を偏重した現行の制度から離れ、実務的な能力と人柄を見る試験を実施するというものだった。自分たちの勢力を殺ぎかねない制度改革に、オ・ギョモを始めとする勲旧派官僚が諸手を挙げて賛成するはずもなく、その場には重苦しい空気が漂う。
長番内侍は珍しい鯨料理を冷めないうちに食すよう王に薦め、科挙改革の話題はそこで断ち切られる。王はチャングムが作った串焼きを特に気に入り、二人の優秀な尚宮を競わせることによって切磋琢磨させるという最高尚宮の育成方針通り、料理の水準が上がっていることを賞賛する。
食べたことのない食材で素晴らしい料理を作ったチャングムの努力を褒めるハン尚宮。チャングムはハン尚宮に自分の味覚がウンベクの治療によって回復したことを伝える。
チャングムの味覚が元に戻っているとは知らないチェ尚宮は、何らかの方法でハン尚宮が手を貸したに違いないと苛立つ。だが、クミョンはあの場で手を貸すことなどできるはずがないと言い切る。「ではお前はチャングムがそれほどの料理の天才だと本当に思っているのか?!」
水刺間の女官は珍しい食材についても知っておく必要があると、最高尚宮は水刺間の女官たちに鯨料理を試食させる。その席上、チェ尚宮はチャングムが味覚を失っていることを持ち出す。料理を作る才能は優れていても味覚がなくては下の者の作った料理の味を見て指導することができず、水刺間の女官としての務めは果たせないというのである。最高尚宮はチャングムをかばうが、結局どの程度味を識別できるか試されることになる。チャングムは味覚が戻ったことを伝えようとするのだが、最高尚宮とチェ尚宮の会話に口を差し挟む機会を失ってしまう。
その直後、ハン尚宮は最高尚宮にチャングムの味覚が元に戻ったことを伝える。最高尚宮は大いに喜ぶが、ハン尚宮とチェ尚宮は次期最高尚宮の座を巡って争っている立場でもあり、そのことを直接チェ尚宮には知らせぬよう命じる。チャングムの味覚が戻ったにせよ戻っていないにせよ、味覚検査は一度やっておかねばならないことでもあった。
味覚検査の課題はアミの塩辛の汁を舐めて、使われているアミの種類を判別するというものだった。尚宮たちにとってさえ難しい課題であったが、チャングムはたちどころに正解してしまう。そして、鯨の串焼きを作っている時、既に味覚が戻っていたことが一同に明かされる。
自らの体を投げ出してチュンジョチョナプタン事件の真相を突き止めたチャングムの勇気と、その勇気故に味覚を失った彼女を追い出そうとした女官たちの情のなさを最高尚宮は一同に諭す。事実上チェ尚宮は名指しで批判されたようなものであり、苛立ちを隠せない。だが、クミョンはチェ尚宮とは違った目でチャングムを見つめる。クミョンの中でチャングムの存在は一層大きなものになっていた。
ハン尚宮やミン尚宮も交えて味覚が戻ったお祝いの料理を用意したにもかかわらず、チャングムは戻ってこない。幼い頃からチャングムと一番親しい友人であったヨンセンは、チャングムが自分に何も打ち明けてくれなかったと機嫌が悪い。そこに最高尚宮が現れ、チャングムが恩人に礼を言いに行くのを許可したことが伝えられる。
「恩人」とはもちろんウンベクである。チャングムは味覚が戻ったことを報告し、手料理と酒をふるまう。「・・・すごいな!」「王様の御膳を作る腕ですよ。煮干しよりはずっと美味しいはずです。保障します」
夜になって寝所に戻ったチャングムを待っていたのはすっかり不機嫌になったヨンセンだった。「何故私に何も言ってくれなかったの?」「動転してたから・・・」「でも、私にだけは話して欲しかった。一緒に考えるくらいできたのに・・・」「でもあなたまで動転させてしまったらと思うと、言えなかったの。あなたが側にいてくれただけで励まされたわ」「今度からはちゃんと打ち明けてよ。・・・ほんとに側にいるだけで励まされる?」「もちろんよ」すっかり機嫌を直して布団をかぶるヨンセンであった。
だが、チャングムを本当に励まし力づけてくれたのはミン・ジョンホのくれた詩だったかも知れない。・・・ミン・ジョンホにも何かお礼をしなくては。チャングムは感謝の気持ちを伝えるにはどんなお礼をすべきかヨンセンに相談する。「心を差し上げたらどう?最高尚宮様はいつも、料理は心でするものだって仰ってるわ。だから、料理を作って差し上げたら?」
夜更けの厨房で一人三色団子を作り始めるチャングム。
同じ頃、厨房の近くにそわそわと行きつ戻りつするクミョンの姿があった。クミョンは、厨房に灯りがついていることに気づく。
「何してるの?」「あっ、・・・ちょっと料理を作ってたのよ」「こんな夜更けに?」「ええ・・・私、味覚を失って本当に絶望していたの。でも、そんな時慰めて下さった方がいてね、そのお礼にと思って作ったの」「うらやましい。こんな宮中に慰めてくれる方がいるなんて。・・・味覚が戻ってきて嬉しいわ。あなたは私が認める唯一の好敵手だもの」それだけ言うとクミョンは立ち去る。
寝所に戻ったクミョンは、引き出しから大きな硯を取り出すと、何か思い詰めた表情でそれを見つめる。不審に思ったチャンイはクミョンに尋ねる。「それ、随分前から出したりしまったりしてるわよね。あなたのものでしょ?」「・・・いいえ」
チャングムは借りていた医書と出来上がった三色団子を携えてミン・ジョンホを訪ねる。呼び出されてやってきたミン・ジョンホは、良い医者の心当たりがあるのでチャングムに紹介しようとしていたことを話す。チャングムはウンベクの治療のおかげで味覚を取り戻したことと、ミン・ジョンホへの感謝の気持ちを伝え、三色団子を渡す。
「私はいつも料理を作る時、食べる方が笑顔になって下さるようにと願いながら、心を込めて料理を作ります。私の感謝の心がこの料理で伝われば嬉しいです」
満面に喜びを湛えて天を仰ぐミン・ジョンホ。彼にとってチャングムは既に特別な存在になっていた。
チャングムが作ってくれた団子を食べようとしていたミン・ジョンホの元に、水刺間の女官が訪ねてきているとの報せが届く。てっきりまたチャングムがやってきたものと思ったミン・ジョンホはいそいそと出て行くが・・・。
案に相違して、そこに立っていたのはクミョンだった。「クミョンさんでしたか・・・。」「はい・・・突然すみません」「いえ、それでご用件は?」
クミョンはミン・ジョンホに硯を渡す。クミョンはいつかミン・ジョンホに贈ろうとして硯を大事にしまっていたのであった。「チョンホ様がこの硯を探していらっしゃると叔父から聞きまして・・・」だが、ミン・ジョンホは礼は言ってくれたものの喜んではくれない。「ありがとう。我ながら自分の硯好きには呆れますよ」「呆れるだなんて・・・チョンホ様は小さな頃からそうでしたわ」
「クミョンさん、顔色が良くありませんね。何かありましたか?」「いえ、何も・・・。でも、今まで私は・・・ただ、ひたすら料理だけに打ち込んで来たのですが、最近は・・・何もかもが辛いのです。自信もなくしてしまって・・・」言葉を絞り出すように話すクミョン。
「そういう時もありますよ」「チョンホ様もそう思ったりなさいます?」「もちろんです。ある人がこんなことを言っていました。料理を作る時は食べる人が笑顔になってくれるようにと願って心を込める、と。素朴な言葉だが、とても心を打たれました」
「武術は、相手を如何に倒すかを考えて動きます。でも、料理は相手を如何に喜ばせるかを考えて作るものなんですね」
「実に素晴らしいお仕事です。自信を持って下さい」クミョンは何かから解き放たれたような笑みを浮かべる。
一方、チェ尚宮は提調尚宮・スバル官長を通じて、最高尚宮を決める競い合いを中止させようとしていた。提調尚宮とオ・ギョモから大妃に働きかけ、女官の人事に王が介入すべきではないと諭してもらおうというのだ。
大妃は水刺間の最高尚宮を王が決めるべきではないと諭す。王は素直に自分の非を認め、代わりに大妃が決めて欲しいと言い出す。当初の目論見と異なり、競合そのものは残ることになった。そして、最初の課題は王子の誕生祝いの料理と決められた。
「競合があった方が良いのです。勝負はもう決まっております。競い合いの体裁をとっておけば、どこからも不満が出ず好都合です」大妃が中宗の即位に功績のあったオ・ギョモたちの一派を重視する傾向があることにつけこみ、形式的な競合を通じて丸く納めてしまおうというのがチェ尚宮の狙いであった。しかも、兄を通じて良い食材を自由に調達できるという点でもチェ尚宮はハン尚宮よりも優位にある。負けることなど考えられなかった。
クミョンはチェ尚宮から与えられた本の料理を作り、黙々と競い合いに備えていた。「お前の元気な顔を見るのは久しぶりだわ。安心した。あの退膳間の一件以来ずいぶん落ち込んでいるようで心配していたの。ようやく全てが元にもどりつつあるのね。何もかもが」
いよいよ競合の本番が近づいて来た。チャングムはチェ尚宮が水刺間に届けられるものより良い食材を調達してくることを心配し、トックに食材の手配を頼もうとするが、トックは皇后の乳母の療養先に、医務官とともに派遣されていた。食材の手配はトックの妻に任されることになった。・・・ハン尚宮は、「良い食材」にこだわるチャングムを見て表情を曇らせる。
医官とトックを引き連れて療養先の雲岩(ウナム)寺に向かうのはミン・ジョンホだった。彼は、その途中にある成均館の学田の収穫量が激減した原因を調査するという密命を帯びていたのである。
そんな中、最初の競合の課題変更が関係者に告げられる。水害で多くの民が苦しんでいるというのに王子の誕生祝いが派手過ぎると王からの指摘があり、大妃もそれに納得して課題を変更したというのである。新たな課題は、「料理の仕方が判らず仕方なく捨てていたものを使った新しい料理」、そしてご飯と汁の三品であった。
食材探しに着手する四人。
それぞれに新たな食材を見つけるが、両者とも汁はソルロンタンを考えていた。
ハン尚宮は水刺間にある材料で十分だというのも聞かず、チャングムは良い骨と肉を買いに行ってしまう。だが、既に市場の肉屋では良い骨と肉は売り切れていた。チャングムは一晩待った挙げ句、白丁の村まで買いに行ってしまうのだった。
他方、クミョンは早々に見切りをつけ、水刺間にある骨と肉を使うことにする。「ソルロンタンは煮込む時間の方が大事ですから」「そうね。ただ煮込むのではなく、あの方法でやりなさい」
クミョンが調理を始めた翌日、チャングムがソルロンタンの食材を入手して戻ってくる。ソルロンタンに時間がかかるのは、煮込んでは冷ます手間を繰り返して脂を抜くからであり、障子紙を入れて煮込めば障子紙が脂を吸い込んで短時間に脂抜きができる。良い骨を使っているから煮込み時間は短くても大丈夫だとチャングムは言い切る。「それに、私いい考えがあるんです。尚宮様が鍛えて下さった能力で、いいことを考えついたんです!任せて下さい!」はしゃぐチャングムとは対照的にハン尚宮の表情は沈むばかりであった。
いよいよ競い合いの当日。チェ尚宮が出した総菜は、魚の鰓の塩辛。
ハン尚宮が出したのは梅の実の塩漬けであった。両方とも甲乙付けがたく、勝敗はソルロンタンの出来によって決されることになった。
大妃が選んだのは、チェ尚宮とクミョンの料理だった。
驚くチャングム。だが、「お前たちは何が理由だと思う?」と問う大妃に、ハン尚宮は「理由は承知しております」と答えるのであった。
最初の競合で一敗を喫してしまったハン尚宮。果たしてこの勝負の行方は?そしてチャングムの運命は?

第16話 「真心」

皇太后による1回目の競合に敗れたハン尚宮(サングン)とチャングム。ハン尚宮(サングン)はチャングムに、療養中の尚宮(サングン)の世話係を言い付け宮中から追い出す。助手のいなくなったハン尚宮(サングン)に、ヨンノやチャンイはチャングムの代役を申し出る。療養中の尚宮(サングン)の世話のためウナム寺に派遣されたチャングムは元気がなく、トックは気晴らしにとチャングムを海へ誘う。ウナム寺にはチョンホも派遣されていたが、チョンホは内密にある調査をしていた。医務官のお使いで市場へ出かけるチャングムにチョンホが同行。その帰り道、二人は正体不明の男たちに襲われ、ウナム寺で働く男にかくまってもらう。その男の山菜料理を食べたチャングムはその美味しさに驚き、秘訣を教えてくれとついて回る。一方、容体の思わしくない尚宮(サングン)の最後の望みは子供の頃に兄から貰って食べた「もちもちして香ばしい米」をもう一度食べたいというもの。トックがあれこれ差し出したが、どれも尚宮の探している米ではなかった。チャングムは寺の男が干している米に思い当たる。

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初戦を勝ち取ったチェ尚宮とクミョン。チェ尚宮はソルロンタンに牛乳を入れる一族の秘法により勝ったものと思っていたが、クミョンは高価な牛乳を使うのは課題にそぐわないと判断し、牛乳を使わずにソルロンタンを作っていた。チェ尚宮はそのクミョンの判断力に更に気をよくするのであった。「素晴らしい!見事だわ。しかし、それでもこちらが勝ったとは、あちらの味が余程ひどかったのね」
 一方ハン尚宮は、勝ちにこだわる余りソルロンタンという料理の本質を見失い、煮込みに時間をかける代わりに牛乳を入れるという小手先の技に走ったチャングムを叱る。「残念ながら、その才能が仇になってしまったようね。心を込めることを忘れ、高価な材料に頼って料理を作るような子だったとは・・・!」そしてチャングムに、保母尚宮(中殿の乳母)の療養先である雲岩(ウナム)寺に行くよう命じる。
必死に自分の非を詫びるチャングムであったが、ハン尚宮は聞き入れず、一人部屋を出て行く。
チャングムが牛乳を使っていたことを大妃もまた気づいており、料理に心を込めず牛乳でごまかすような者に王の食事は任せられないのではないか、と言う。元々大妃は競合によって最高尚宮を選ぶことには反対であり、王の政治改革と軌を一にするものであればこそ自らの考えを曲げて競合を許可したのだが、大妃の目には明らかに実力に差のあるものを競わせているように映っていた。チャングムの失敗は、ハン尚宮のみならず、競合の実施を主張した最高尚宮の立場までも悪化させてしまった。
チャングムが雲岩寺に送られることをヨンセンから聞いた最高尚宮は、ハン尚宮と話す。勝ちたい一心でやってしまったことであるし、大目に見てやってはどうかという最高尚宮だったが、ハン尚宮は頑として譲らない。この程度のことで心が揺らいでしまうのなら、誘惑や圧力の多い宮中で料理に対する姿勢を守っていくことなどできない。ハン尚宮が危惧していたのは、競合の結果よりも、むしろその後チャングムが水刺間の女官として志を貫き通せるかどうかだったのだ。
夜になって再度チャングムがハン尚宮の許しを請いにやってくる。二度とあのようなことはしないと必死に訴えるチャングムだったが、「それに次の競合、私がいなくてはお困りなのでは?負けたら終わりですのに!」という言葉を聞いてハン尚宮は表情を変える。「おやめ!私をこれ以上失望させないで!」
ついにチャングムは雲岩寺へと向かう。見送ってくれるのはヨンセンとチャンイ、そしてクミョン。ヨンセンとチャンイはハン尚宮の怒りが解ければ戻ってこられると慰めるが、チャングムの表情は暗い。
そして互いに視線を交わすクミョンとチャングム・・・。クミョンの胸中は複雑であった。
また、チャングムにとってもこんな形でクミョンに見送られるのは辛いことであった。
雲岩寺に向かう前にチャングムはもう一度ハン尚宮の部屋の前で許しを請うが、ハン尚宮の応えはなかった。宮を出た後、トックの家に立ち寄るチャングムだったが、余りに落ち込んでいるチャングムにトックの妻も驚く。「あらまあ・・・あの子があんなに落ち込んでるなんて。チャングムらしくないねえ」
クミョンは誰もいない厨房で微笑みを浮かべながら正菓(ジョンガ 野菜や果物の飴煮。おやつとして一般的に食されたものらしい)を作っている。自分を励ましてくれたミン・ジョンホに届けるつもりなのだ。彼はチャングムの言葉をそのまま伝えただけだったのだが・・・。

だが、ミン・ジョンホは雲岩寺に行ってしまい、留守だという。正菓の包みを持ったまま途方に暮れるクミョンだったが・・・。

水刺間では、チャングムに替わってハン尚宮の助手になれば上級女官になれるチャンスがあると考えたヨンノとチャンイ、そして親友としてチャングムの代役を務めなければという義務感に駆られたヨンセンが、それぞれハン尚宮に自分を助手にして欲しいと願い出る。ハン尚宮は彼女たちに、かつてチャングムに与えたものと同じ課題を与える。

ヨンノに与えられた課題は「水を持ってきなさい」だった。・・・だが何度と無くやり直しを命じられ、ヨンノは途方に暮れる。

チャンイに出された課題は「3日で100種類の山菜を見つけてくること」。
・・・だが、ホンイまで動員して探しても到底100種類は見つけられそうもなかった。
他の二人よりは幾分純粋な動機を持っていたヨンセンも、「味を描いてごらん」という課題には首をひねるばかりだ。
翌朝までに三合醤果(サマプジャングァ)に合う食材を見つけてこいと命じられたが、結局何も思いつけない。・・・「無理なことはしない方がいいんじゃないの?」とミン尚宮。
ついに諦めて日常業務に戻る三人。「チャングムって本当に天才かもね。今までどうやって来たのかしら」というヨンセン。だがヨンノとチャンイはハン尚宮はチャングムを贔屓してわざと自分たちに無理難題を課したのだと不満げである。「チャングムは全部やって来たわ」思わぬクミョンの言葉に三人は驚く。
そこにハン尚宮がやって来る。「何故やりなさいと言ったことを誰もやって来ないの?」自分たちには無理だと答える三人。ハン尚宮は、チャングムは幼い頃からハン尚宮の厳しい訓練を受けて来ており、ハン尚宮のやり方を一番良く知っているから助手に選んだことを話し、贔屓をしているなどと考えるのは全くの心得違いであると叱る。だが、ヨンセンの「なら、何でチャングムを追い出しておしまいになったんですか?」という問いには答えず、その場を立ち去ってしまうのであった。
幼いチャングムに水汲みの課題を与えた日のことを独り思い出すハン尚宮。何故誤った道に迷い込んでしまったのか・・・。ハン尚宮の苦悩は深かった。
クミョンは保留になっていた休暇を利用して宮外に出ることを無理にチェ尚宮に認めてもらう。
チャングムは雲岩寺でトックに会う。そして、保母尚宮が幼い頃唯一の肉親である兄を喪った時の話をトックから聞くのであった。幼い保母尚宮が空腹の余り泣いていると、兄がどこからともなく米を持ってきて食べさせてくれたのだが、その米を食べている間に保母尚宮の兄は眠るように死んでいたという。死期が近いことを自覚した保母尚宮は、死ぬ前にもう一度その米を食べたいと言っており、トックも様々な米を出してみたのだが、どれも保母尚宮が食べた米とは違っていた。「香ばしくてもちもちした米」。それ以外手がかりもなく、トックは半ば諦めてしまっていた。
ミン・ジョンホは成均館の学田の問題を部下に調査させていたが、ここ数年は豊作が続いており、主要産物である人参の収穫量は減っていないことを突き止める。何者かが横流ししているに違いない。
部下たちに引き続き慎重に内偵を進めるよう指示し雲岩寺に戻ったミン・ジョンホは、池に向かって石を投げているチャングムを見かける。だが、その常になく沈み込んだ様子を見て、声をかけそびれてしまう。
チャングムを追い出したことで最高尚宮とハン尚宮の間がぎくしゃくしている間に、一気呵成に事を運びたいチェ尚宮は、兄を通じてオ・ギョモから大妃に次の競合を早く実施するよう口添えを頼む。同時に、自らも提調尚宮に働きかける。
成均館の学田に調査が入っていることを知ったオ・ギョモは、チェ・パンスルに監察官に会いに行くよう命じる。朝鮮人参は栽培しにくいものであり、彼らには収穫量が減っても疑われないであろうという読みがあったのだが・・・。
ふさぎ込んでいるチャングムを見かねてか、トックは彼女を海に連れて行く。
波打ち際でトックと一緒にはしゃぐチャングム。そしてそこにはミン・ジョンホの姿もあった。
・・・・・・
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その夜、海で採ってきた蟹を焼きながら話し込むチャングムとミン・ジョンホ。チャングムは自分の父がミン・ジョンホと同じ軍官であったこと、廃妃ユン氏の死に立ち会ったために身を隠して暮らしていたこと、そしてその父が自分の失言が元で命を落としたことを語る。「お見苦しいところをお見せして申し訳ありません・・・」「とんでもありません。私こそ辛いことを聞いて・・・」「いつかきっと・・・何もかもお話しできると思います」
翌日、医官から頼まれた薬剤の買い出しに出かけるチャングムと一緒に村に下りたミン・ジョンホは、再び部下の報告を受ける。横流しされた朝鮮人参はチェ・パンスル商団に送られていた。調査だけを命じられていたミン・ジョンホは部下に引き上げを命じるが、事件は思わぬ広がりを持っていそうである。
その帰り道、ミン・ジョンホとチャングムは突然現れた無頼漢の一団に襲われる。ミン・ジョンホは後をつけられていたのだ。何とかその場を切り抜けて雲岩寺に戻った二人は、寺男の管理する小屋に隠れる。
夜になって彼らを襲った男たちが寺までやってくるが、寺男の機転で救われる。男たちが去って行った後、二人は寺男の用意してくれた食事を取る。その料理は粗末なものではあったが、チャングムも食べたことがないほどの味であった。
チャングムは寺男からその味の秘訣を聞き出そうと、しつこく追い回す。だが寺男は「秘訣なんてないですよ」の一点張りで一向に教えてくれようとはしない。
そんなチャングムの姿を見てミン・ジョンホはほっとしていた。どうにか元のチャングムに戻りつつあるようだ。
その頃、水刺間では第二回の競合の日程がハン尚宮とチェ尚宮に伝えられた。実施は7日後。ハン尚宮は一人で戦う決意をしていた。
一方、外出許可をもらったクミョンは一人雲岩寺に向かう。
保母尚宮の容態は芳しくない。何も食べないため、薬剤の効果も出ないのだ。何とか、あの米を探し出さなければ・・・。チャングムはトックの「蒸し米でもないようだ」という言葉を聞いて、寺男が干していた米のことを思い出す。
保母尚宮が食べたのは、オルゲサル(未熟米)だった。山間部では米の収穫が遅く、秋夕(チュソク 旧暦の8月15日に当り、日本のお盆のように先祖を祀る)に間に合わないため、実る前の稲を搗いて後から乾かすのである。そのことを寺男から聞いたチャングムは、早速そのオルゲサルをもらおうとするが、寺男はまだ乾ききっていないからと断る。
チャングムはそれを強いてもらうけ、乾きかけの米を火にかけて乾燥させる。
チャングムが作った「オルゲサルもどき」を食べる保母尚宮。「確かに似ているけれど・・・あの味ではないわ。これでは兄上には・・・。でも、どうもありがとう」
その後、寺男がやっと出来上がったオルゲサルを持って保母尚宮の元へやって来る。そのオルゲサルを一口噛んだ保母尚宮は涙を流す。「この味です。間違いありません。もう、この世に思い残すことはありません。私が死んだら、この米を必ず棺に入れて下さい。あの世で兄上に差し上げたいのです」そしてオルゲサルの器をかき抱いて泣き崩れるのだった。
「秘訣なんて・・・特別なことなんて何も無かったんだわ」陽が出れば乾かし、陽が陰ればしまう。寺男がかけていた手間が全てだったのだ。真心と手間が良い味を引き出していただけであったことにチャングムは気づく。
そして、寺男の母親がよく言っていたという言葉を聞く。「どうせ腹一杯食べることができないなら、真心だけでも一杯食べてお腹を満たそう。だから何があってもいい加減なものを絶対に人様にお出ししてはいけないよ」それはソルロンタンの味を牛乳でごまかそうとしたチャングムに向けられた言葉でもあった。
その言葉にチャングムは力強く答える。「はい」と。
チャングムはやっとハン尚宮が怒った理由を悟った。真心と手間。才能よりも大切なものをチャングムは見失っていたのである。そのことについて話すチャングムに、ミン・ジョンホは言う。「うらやましいです。素晴らしいお方に仕えておいでだ。目先のことに囚われ、上辺だけの人生を送ることがないよう戒めて下さったのでしょう」
「私は信じています。今回は自惚れたかも知れない。でもチャングムさんは、料理を作る時は食べる人が笑顔になってくれるよう、心を込める人です。人間の心を忘れる人ではありません」
・・・そんな二人のやり取りを雲岩寺に辿り着いたクミョンが見ていた。

 

そして、ミン・ジョンホが本当に励ましていたのが誰なのか、自分に贈ってくれた言葉が誰のものだったのか、彼女は知ってしまう。闇の世界に引きずられるクミョンをつなぎ止めていた唯一の糸は断ち切られた。


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