17〜20話


第17話 「疫病と策略」

休暇をとったクミョンはチョンホを追ってウナム寺へ来たが、チョンホとチャングムが親しげに話しているのを見かけ、声を掛けることが出来ない。その頃、宮中では皇太后から競合2回目の課題が発表された。肉の代わりに四季を通じて食べられる魚の刺身を工夫せよ、というもので、これは氷の調達に不自由しないチェ一族に有利なものだった。ハン尚宮(サングン)は一人、準備のため宮中を出る。その頃、女官たちの宿舎に謀反者が逃げ込んだとの情報があり、兵士により一斉捜査が行なわれる。捜索に立ち会ったチョン最高尚宮(チェゴサングン)は、チェ尚宮(サングン)の部屋で、代々最高尚宮(チェゴサングン)にのみ受け継がれるはずの書物を見つける。尚宮(サングン)のお世話を終えたチャングムは宮中に戻り、ハン尚宮(サングン)の許しを乞う。その頃、宮廷では風邪が流行っていたが、その後の調査により、風邪に似た疫病の可能性が高いと判明。感染の疑いのあるものは全員、直ちに、宮中からの退出が命じられる。女官長とチェ尚宮(サングン)は、この期に乗じ、あることを思いつく。

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ミン・ジョンホは、チャングムがまだ大筆を使っていることに気づく。そこにカン・ドックがやって来て、彼を無理に酒に誘う。・・・楽しげな三人を遠くから見つめるだけのクミョン。
持参した三色正菓(サムセクジョングァ)を渡す機会を失ったクミョンは雲岩寺を立ち去る。
宿屋で宮中に上がってから今日までのことを思い出して涙を流すクミョン。いつも物陰からミン・ジョンホの姿を追っていた日々・・・。一人泣き明かした翌日、クミョンは市場で筆を買い求めるミン・ジョンホを見かける。声をかけようとするが、彼がチャングムのために小さな筆を買おうとしていることに気づき、そのまま立ち去ってしまう。
一人、長い道のりを引き返すクミョン。自らの生き方を決するべき時が来ていた。
雲岩寺に戻ったミン・ジョンホは、市場で買ってきた小筆を「自分が使っていたものだから」と偽ってチャングムに贈る。元々チャングムはあのノリゲに付いていた小筆と墨壺を使っていたことを、ミン・ジョンホはまだ知らない。
その頃、宮中では大妃の次の課題が、提調尚宮から最高尚宮たちに伝えられていた。体調が悪く、肉類を食べることを禁じられた王のために、一年を通じて食べられる刺身を作ること。真冬以外は鮮魚を内陸部まで運搬できない以上、何らかの工夫をするしかない。一回目よりも遥かに難度の高い課題である。
一方、宮中では風邪がはやり始めていた。水刺間でも、ミン尚宮の他何人かのセンガッシたちが風邪に倒れ、人手が足りなくなる。このことが後々大事件に発展して行くのだが・・・。
折良く宮中に戻ったクミョンに、チェ尚宮は大妃から出された課題を伝える。クミョンもその困難さに驚くが、チェ尚宮は落ち着き払って言う。「この国でただ一人、魚を生きたまま宮中まで運べる商人がいるでしょう?」チェ・パンスルならそれができる。そのことを知っている大妃がチェ尚宮に有利な課題を出したのだ。
最高尚宮はチャングムを呼び戻すことをハン尚宮に薦める。「チャングムがいればあれこれ調べてくれて助かるんだけどねえ・・・。今からヨンセンに呼びに行かせようか?」だが、ハン尚宮はそれを拒み、自ら食材を探すために外出するのであった。
雲岩寺では、保母尚宮がついに息を引き取った。寺男の作ったオルゲサルを握りしめて・・・。チャングムにとって保母尚宮は、寺男とともに「真心と手間」の大切さを教えてくれた、隠れた師であった。
保母尚宮の弔いも終わり、チャングムはミン・ジョンホ、カン・ドックとともに山を下りる。
チェ尚宮は兄パンスルに魚の運搬を依頼する。チェ・パンスルにとっても、魚を生きたまま運んだ実績を作っておくことは、新たな取引の材料となるため、彼もまた並々ならぬ意気込みを見せていた。
ハン尚宮はそれとは対照的に市場を巡って丹念に食材を探す。
そんなある夜、不正を告発する檄文を壁に張り出した東宮殿の衛兵が、女官たちの宿舎に逃げ込むという事件が起こる。生きた魚を手配するために留守にしていたチェ尚宮の部屋に隠れていたところを捕えられて大事には至らずに済んだが、この事件が思わぬ波紋を呼ぶことになる。捜索中に荒らされた部屋をヨンノたちに片づけさせていた最高尚宮は、そこに歴代最高尚宮に受け継がれるはずの秘伝書があるのを見つける。本来なら自分に渡されるべきものが、提調尚宮からチェ尚宮に渡されていたのだ。
「チェ尚宮!よくもこの私を虚仮にしてくれた!」怒りに燃える最高尚宮。
チェ・パンスルはチェ尚宮とクミョンを送り出した後、成均館の人参畑の収穫量を聞き回っていた男たちがいたとの報告を受ける。無論、それはミン・ジョンホの部下たちのことなのだが、チェ・パンスルは多少気にはなるものの、取り立てて何か手を打つことはしなかった。
だが、当のミン・ジョンホは内禁衛長に成均館の学田とチェ・パンスルとの繋がりを報告していた。チェ・パンスルは徐々に追いつめられようとしていた。
チャングムがやっと雲岩寺から水刺間に戻ってきた。喜んで迎えるヨンセンとチャンイ。だが、ハン尚宮の態度は冷淡なままであった。
そして、クミョンの態度も微妙に冷たくなっていることに気づくチャングム。だが彼女にはその理由がわからない。
ミン・ジョンホとチャングムの関係を知ったことで吹っ切れたのか、クミョンは自らチェ一族としての務めも果たして行くとチェ尚宮に話す。そして、秘伝書の勉強も始めたいと申し出るのだが、秘伝書はチェ尚宮の部屋から消えていた。ヨンノたちから事情を聞いて、最高尚宮が持ち去ったことは察しがついたものの、殊更にそのことに触れようとしない最高尚宮の態度にチェ尚宮は危機感を覚える。
提調尚宮にとっても、秘伝書のことが最高尚宮に知られたのは致命的だった。競合の場で大妃に知らされるようなことにでもなれば、提調尚宮も無事では済まないだろう。チェ尚宮は、二度目の競合を捨ててでも取引をすることを提案する。
うっかりミン・ジョンホと親しいなどと嘘を言ってしまったために、妻から内禁衛に酒を納品できるよう頼んで来いと言われてしまうカン・ドック。思いあまった彼は、守り札や人参を偽造して賄賂として渡そうとし、却ってミン・ジョンホを怒らせてしまう。だが、トックの前では厳しい顔をするものの、何となく彼のことを憎めないミン・ジョンホは、内禁衛の代わりに自分の家に酒を届けることを認めてくれるのであった。
ハン尚宮のチャングムへの怒りも解けつつあった。ハン尚宮が二度目の競合のために探してきた食材はエイ。ハン尚宮はその味をチャングムに確かめさせる。
そしてハン尚宮はチャングムに、目先の問題を解決することを優先していると、やがて目先のことしか考えない生き方をするようになる危険があることを教えるのであった。「今のお教え、絶対に忘れません」「それならいいけれど・・・」「尚宮様は、本当に亡くなった母にそっくりでございます」
提調尚宮とチェ尚宮は秘伝書のことを最高尚宮に詫び、次回の競い合いでチェ尚宮がわざと負ける代わりに、秘伝書のことを伏せてくれるよう頼む。だが、最高尚宮が聞き入れるはずはなかった。
更に、チェ・パンスル商団では、大変なことが起こっていた。生きたまま運ぶはずの魚が全て死んでしまったのだ。しかも、運搬中に傷がついてしまっているという。だが、そのことを伝えに宮中に出向いたチェ・パンスルはクミョンからそれ以上に深刻な事態が出来していたことを知らされる。焦るチェ・パンスルだったが、もはや競合は翌日に迫っており、手の打ちようがない。
だが、思わぬところから事態は急変する。宮中で流行っていた、風邪と思われていた症状は疫病によるものだったことが判明したのである。急遽発症者の隔離が決定される。
これは提調尚宮たちにとって願ってもない好機だった。内医院を抱き込んだ上で、最高尚宮も発症していたことにし、彼女を宮中から遠ざけてしまったのである。
提調尚宮から状況報告を受けた大妃も事態を重く見て、二度目の競合は正式に中止となった。
そして最高尚宮が発症して隔離されたことがハン尚宮とチャングムにも告げられる。二人が退出した後、残ったチェ尚宮とクミョンに今後の手はずを説明する提調尚宮。提調尚宮は予め根回しをした上で、病気を理由に最高尚宮を退任に追い込もうとしていた。
最高尚宮が隔離されてしまったことを一番悲しんだのはヨンセンであった。だが、彼女は夕方まで全く症状のなかった最高尚宮が夜の間に隔離されてしまったことに疑問を抱いていた。
チャングムもまた、そのヨンセンの話を聞いて今回の件に疑問を感じるのであったが・・・。

第18話 「料理人の信念」

疫病感染の疑いがある女官たちは全員宮中を退出させられ、隔離治療を受けていた。その中に、持病を患っているだけのチョン最高尚宮(チェゴサングン)もいた。この期を利用して女官長たちは最高尚宮(チェゴサングン)職の交替を謀る。その根回しを最も周到にやってのけるのはクミョンだった。
その結果、当面、水剌間(スラッカン)の最高尚宮(チェゴサングン)代行を務めることになったチェ尚宮(サングン)。チェ尚宮(サングン)はハン尚宮(サングン)とチャングムに、明の使者への接待役として太平館行きを命じる。王位継承問題を話し合うため、まもなく明から使者を迎えることになっていたのだ。太平館での任務は、政治問題に巻き込まれるなど何かと辛い任務だった。ハン尚宮(サングン)は太平館行きを前に、トックにチョン最高尚宮(チェゴサングン)の見舞いを頼む。明からの使節団が到着。今回の使者は山海の珍味しか口にしない食通として知られる人物。ハン尚宮(サングン)は、その使者の患っている糖尿病がこの長旅で悪化していることを知る。

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チェ尚宮の策略により、疫病の罹患者として隔離されてしまった最高尚宮。同室のミン尚宮は熱と下痢に苦しんでいたが、最高尚宮には全くそのような症状はない。「最高尚宮様、病気が治ったら私たちまた宮中に戻れますよね?」「・・・当たり前でしょ。それとも、この際宮中を出ようと思ってるのかい?」「そんなこと思ってもいません。私には宮中以外いる場所はありません。なのにこんな所で病で死ぬのかと思うと恨めしくて・・・」「恨めしいとまで思うのかい?」「最高尚宮様はこの地位にまでおなりになって思い残すことはないでしょうが、私はそうじゃありません」「宮中に戻ったら、お前にその座を譲るから一度やってみるがいい」
宮中では疫病の発生を受けて、食材の徹底的な検査が行われていた。水刺間でも食器や調理器具の消毒と食材の検査が行われる。そしてハン尚宮は王の食事に生ものは一切出さないよう指示する。
最高尚宮と今後の対策を相談するために医官チョン・ユンスが水刺間にやって来る。そこで最高尚宮が疫病にかかって隔離されていることを知った彼は、大事に至る前に医官に相談しなかった最高尚宮への不満を漏らす。チョン・ユンスのその様子を見ていたクミョンは何かを思いついたようだが・・・。
チェ尚宮は、他の部署の尚宮たちを巻き込み、着々と足場を固めつつあった。疫病対策を話し合う会議の場を利用して、自らが最高尚宮となることを認めさせようとしていたのである。現最高尚宮が宮中に戻れる見込みが立っていない以上、緊急に統括責任者が必要とされているのは確かであり、そこで女官長と他の尚宮たちがチェ尚宮を推薦すれば問題なく認められるはずであった。
クミョンは疫病の対策会議に医官チョン・ユンスも同席させるようチェ尚宮に勧める。長番内侍が次期最高尚宮をその会議で決めることに反対するのは目に見えているが、チョン・ユンスが医官の立場から最高尚宮の責任を問う発言をすれば、状況を覆せる可能性があるからだ。そしてクミョンはチェ・パンスルにチョン・ユンスへの根回しを依頼するのだった。
案の定、長番内侍は次期最高尚宮を決めることに反対する。現最高尚宮は王からの信頼も篤く、加えて病気療養中に交代させるような前例はないからである。そこでチョン・ユンスがオ・ギョモから意見を求められ、医官だけで全ての厨房の状況を把握するのは難しいことと、水刺間に発症者が出た時内医院に報告をしなかった最高尚宮には疫病を蔓延させた責任があるとの見解を述べる。長番内侍もこれには反論できず、大妃の意志に従うこととなった。
疫病の問題もさることながら、間もなく明国から王子を継嗣として認めるか否かについて話し合うために使者がやって来る。最高尚宮の座を空席のままにはしておけない状況であり、早急にチェ尚宮を最高尚宮に任命し、事に当たらせるべきだとする提調尚宮。一方、長番内侍は王に挨拶もさせず最高尚宮を宮中から追うようなことはあってはならないと主張する。大妃は双方の言い分を容れ、チェ尚宮を臨時の最高尚宮代行とし、最高尚宮が戻り次第その後のことを決定するようを命じる。
臨時の代行職とはいえ、最高尚宮の座についたチェ尚宮は、ハン尚宮をチャングムを太平館に派遣し、明国からの使者の接待に当たらせる。歴代、明国からの使者は何かと難癖をつけては決定を引き延ばすことが多く、料理人といえども外交上の揉め事に巻き込まれる可能性が高かった。太平館への派遣は事実上体の良い左遷だったのである。
提調尚宮はチェ尚宮の策略を賞賛し、最高尚宮が隔離先から戻ってくる前に「秘伝の書」を見つけ出しておくように命じるが、結局チェ尚宮は見つけることができない。だが、最高尚宮は突然の拉致だったにもかかわらず、隔離先に「秘伝の書」を持ち出していたのだ。
苛立つチェ尚宮だったが、クミョンは落ち着き払ってチェ尚宮に言う。「ご心配はいりません。病気の症状が悪化するはずですから」クミョンは最高尚宮の居場所と、持病のことをチェ・パンスルに伝えさせていた。事を起こしたからには確実に仕留めなければならないと言うクミョンの変貌ぶりをチェ尚宮は喜ぶ。
「私はこうして生きていくしかありません。こうする以外に生きていく術がないのです」
そこに太平館に発つことを伝えるため、ハン尚宮とチャングムがやって来る。「これから出発します」「よろしくね。頼りになるのはあなたしかいないのだから」「・・・あなたのその言葉が、本心からの言葉だと思いたいわ」
ハン尚宮とチャングムまでいなくなると一人きりになってしまうと、べそをかきながら太平館に連れて行ってくれるよう頼むヨンセン。最高尚宮も自分もチャングムも、きっと戻ってくるとたしなめるハン尚宮であったが、無論戻れる保証などあるはずがなかった。
宮外に出ようとするところでカン・ドック夫妻に出会ったハン尚宮は、トックを物陰に呼んで何事かを依頼する。
一人残されたチャングムを見つけたミン・ジョンホは、彼女を優しく励ます。そして、その二人の姿をまたしても偶然クミョンが目にしてしまう。もはやその目に涙はない。そしてミン・ジョンホに接する態度も、彼の言葉に胸を躍らせていた頃とは違っていた。
ハン尚宮がトックに頼んだのは、隔離所に行って最高尚宮の様子を見てくることだった。トック本人は疫病患者の隔離所に行くことを嫌がるのだが、彼の妻が手間賃欲しさ無理矢理引き受けさせてしまう。
成均館の学田問題も含め、万事が上手く行ったことを喜び合うオ・ギョモとチェ・パンスル。更に二人は済州島の利権にも手を伸ばそうとしていた。水面下では着々と捜査が進んでいたのだが、二人はまだそのことに気づいていなかった。
最高尚宮の元にカン・ドックがやって来る。何の病気かも知らされぬまま、医女の煎じた薬を飲んでいるが、膝の痛みや体のむくみは悪化する一方だという。それはクミョンの企みによるものなのだが、最高尚宮が疫病に冒されていると信じているトックは最高尚宮の側に寄ることにさえ及び腰だ。最高尚宮はトックから水刺間の状況を聞き、事態が容易ならぬところまで悪化したことを知る。そして彼に予め用意していた手紙を託す。
怒りを抑えて太平館での仕事に従事するハン尚宮とチャングムに、最高尚宮からの手紙が届けられる。その手紙には最高尚宮が疫病に罹ってはいないことが書かれていた。ハン尚宮は全てが陰謀だったことを知る。
ついに明国からの使節団が到着する。継嗣問題は兼ねてからの懸案となっており、今回は何としても王子を世継ぎとして認めさせなければならない。直接の交渉に当たるオ・ギョモはもちろん、料理を担当するハン尚宮とチャングムも絶対に失敗は許されない。
山海の珍味が集められ、ハン尚宮とチャングムは使者のための料理に取りかかる。だが、そこに医女が薬を持ってやってくる。使者は糖尿病を患っており、今回の長旅でその症状が悪化しているため、薬を出して欲しいというのである。それを聞いてハン尚宮は料理の手を止める。
使者の幼い頃の乳母が朝鮮人だったということもあり、会談は和やかな雰囲気の中で始められようとしていた。だが、そこに運ばれた料理を見た途端、列席者の顔色が変る。
その料理は、野菜主体の見るからに粗末なものだったのだ。すぐに作り直すよう命じるオ・ギョモと長官。だが、再度運ばれてきた料理は同様に野菜を主体としたものだった。
激怒するオ・ギョモに、ハン尚宮は糖尿病の使者に脂分の多い料理は害となるため、無礼を承知で粗末な料理を出したのだと説明する。だが、オ・ギョモは聞き入れず、ハン尚宮を追い出してしまう。
連れ出されるハン尚宮とすれ違ったチャングムは事態を察知し、会談の席に飛び込む。
「私は一介の女官ですが、料理人でございます!料理人として、お体に害になるとわかっている料理をお出しする訳には参りません!」糖尿病で大事なのは薬ではなく食事の改善である。いくら薬を飲んでも、食事を工夫しなければ病気は治らない。加えて使者には復路の長い旅路が待っているのだ。滞在中に体を更に害するような食事を摂ってはならない。それがハン尚宮の判断であった。チャングムは使者に向かって、せめて五日間だけでもこの食事を摂って欲しいと頼む。そうすれば必ず体調が良くなるはずだと。
その話を聞いて、ハン尚宮とチャングムの心遣いの細やかさに目を細める反面、時宜の悪さに眉を顰める長官。更に怒りを募らせるオ・ギョモ。そして、使者は五日間食べ続けて体調に変化がない時はチャングムに厳しい罰を与えることと、ハン尚宮ではなくチャングム自身が料理をすることを条件に、野菜主体の料理を食べるのを承諾する。ただし、いくら体に良くとも、不味いものは一切口にしないと使者は言い切る。
この一件は皇太后の知るところとなり、大きな波紋を呼ぶ。チェ尚宮自身が太平館に出向いて料理を担当することになるが、ハン尚宮の失脚を狙う提調尚宮とチェ尚宮にとっては願ってもない展開であった。
軟禁状態となったハン尚宮に代わり、一人使者のための料理を作るチャングム。チェ尚宮とクミョンは、チャングムを追い出して自分たちが料理を担当しようとするが、チャングムはこれを断固として断る。「五日間は私の料理を召し上がって下さるそうです。ですから五日間は、この厨房の責任者は私です」怒りに言葉を失うチェ尚宮。だが、クミョンは冷たく言い放つ。「帰りましょう、尚宮様。どうなっても後で困るのはチャングムです。私たちの出る幕ではありません」
心配して様子を見に来たオ・ギョモにチェ尚宮は、五日間の食事制限により体調が戻ったところで特別な宴料理を出そうと考えていることを伝える。医務官チョン・ユンスは必ずしもそれが使者の体にとって良いこととは考えていない様子を見せるが、あえて異を唱えることもしない。
雲岩寺の寺男から学んだ「真心と手間」。そして最後に教えてくれた秘伝の調味料。竹筒飯など、かつて自分が創作した料理。それらを駆使してチャングムは使者のために料理を作る。それは料理人としての自分の全てを注ぎ込んだ料理であった。
だが、使者の反応は良くない。
約束の五日が過ぎ、山海の珍味をふんだんに使ったチェ尚宮の宴料理が使者に供される。贅を尽くした料理に満足げな使者。冷ややかにほくそ笑むチェ尚宮とクミョン。
「実に美味しい料理であった」使者の言葉を聞き、オ・ギョモは使者に問う。「では、あなた様を侮辱した女官を如何致しましょう?」
明国の使者はどのような判断を下すのであろうか?

第19話 「対決」

明からの使者はチェ尚宮(サングン)の作った豪華な料理を口にしたものの、残りの滞在も引き続きチャングムとハン尚宮(サングン)の料理を食べると宣言。悔しいチェ尚宮(サングン)は女官長に、自分の采配で騒ぎが無事納まったと報告する。疫病の疑いで隔離治療中の女官たちは快方に向かっていたが、チョン最高尚宮(チェゴサングン)だけは急激に悪化していた。チョン最高尚宮(チェゴサングン)の薬は直接宮中から処方されていたため、チョン最高尚宮(チェゴサングン)は、ミン尚宮(サングン)に頼み、町医者に自分の薬の内容を確認させる。チャングムは皇后に呼び出され、ウナム寺で看取った尚宮(サングン)の様子を語ることに。同席した長官は太平館での出来ごとを引き合いに、チャングムならば心を尽くしたに違いないと皇后に告げる。太平館での出来事は皇后を通じて皇太后の耳に入る。一方、自分の薬の内容を知ったチョン最高尚宮(チェゴサングン)は女官長を呼び出し、自分を宮中へ戻すよう取引を持ちかける。その頃チョンホは横領疑惑の調査のため、トックに案内を頼みチェ・パンスルが出入りする料亭へ様子を探りに行く。

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チェ尚宮の作った宴料理を満足げに食べる使者。そして、自分にどのような罰が下されるのか緊張した面持ちで使者の言葉を待つチャングム。そして既に勝ち誇った表情のチェ尚宮とクミョン。だが、使者の口から出た言葉は双方にとって意外なものだった。「これで食い道楽も終わりにすることにしよう」驚く一同。使者は更にチャングムに向かって言葉をかける。「つい食べてしまったが、今日だけ許してくれるか?」そして、残りの宴料理を全て断ってしまう。
一時滞在するだけの自分に、敢えて不興を買ってでも体に良い料理を出そうとしたハン尚宮とチャングムの姿勢を、使者は賞賛する。自分の体に害が及ぶことになっても、使者の体を害する料理を出そうとしなかったことが使者の心を動かしたのである。また、チャングムの料理を食べるうちに、使者は野菜の美味しさを知り、体に良いという点だけでなく味にも満足するようになっていた。
ハン尚宮も無事軟禁を解かれ、改めて使者の滞在中の料理を任されることになった。
チェ尚宮の完敗であったが、素直にそれを認める彼女ではない。「やはりあなたに任せて正解だったわ」
使者の問題は解決したものの、ハン尚宮にはもう一つ心配事があった。最高尚宮の病状である。彼女はトックに頼んで民間の医員を隔離所に連れて行かせるよう手配する。
太平館の状況を確認する提調尚宮に、チェ尚宮は事実を伝えず自分が事を納めたかのように報告する。それを聞いて提調尚宮も喜ぶのだが・・・。
水刺間には新しいセンガッシたちが配属されて来ていた。ヨンセンは訓育尚宮を手伝ってセンガッシたちの教育を任される。張り切るヨンセンだったが、ヨンノの横槍が入る。提調尚宮のつてで入ってきたセンガッシ二人を他の子たちとは別に、自分が直接教えようとするヨンノ。ヨンセンはそれを止めようとして喧嘩になってしまう。そこをチェ尚宮に見咎められるが、結局ヨンセンだけが叱られることになり、センガッシの教育はヨンセンではなくヨンノに任されることになる。
使者の接待の真相が大妃に伝わることを心配するクミョンだったが、チェ尚宮はあくまでも自分の指示でやらせたこととして、手柄を横取りしようとする。
無事王子の継承権は承認された。オ・ギョモは使者に対して、事が片づくまでの間観光に出かけることを申し出るが、使者は二人の料理が楽しみだからとこれをを断る。料理の腕のみならず、深い教養も持っているハン尚宮とチャングムの功績を使者高く評価する使者。
継承権の問題が解決されたこと王に報告するオ・ギョモ。だが、その陰にハン尚宮とチャングムの働きがあったことには触れない。
提調尚宮とチェ尚宮も報告のために大妃の元に上がるが、提調尚宮はチェ尚宮の話をそのまま鵜呑みにして報告してしまう。そして、太平館での功績を材料に、チェ尚宮を最高尚宮に据えることを認めてもらおうとする。
だが、チェ尚宮の話は突然の中殿の訪問によって中断されてしまう。中殿は使者の接待に関して「気になる話」を耳にしたと言うのだが・・・。
疫病の罹患者も快方に向かい始め、女官たちが宮中に戻れる見込みが立つが、最高尚宮の病状は快方に向かうどころか却って悪化していた。トックが連れてきた民間の医員も、急に症状が悪化したことを訝しむ。
トックが最高尚宮の病状について長番内侍とハン尚宮に報告していたところに、ユン・マッケが長番内侍を探しに来る。中殿から、保母尚宮の最期を看取った女官を連れてこさせるよう命じられたのだという。
中殿は保母尚宮の最期の様子を、世話を担当した女官から聞きたがっていたのである。中殿は幼い頃に母を亡くし、保母尚宮を実の母のように慕っていた。本来は自分がやるべきことを女官に任せざるを得なかったことを悔やむ中殿に、長番内侍は太平館での一件を伝え、そのチャングムが世話をしたのだから、保母尚宮もきっと心安らかに逝くことができたはずだと言うのだった。
最高尚宮はミン尚宮に、自分に処方されている薬を隔離所の外で調べるよう命じる。
その頃、提調尚宮は最高尚宮の病状が悪化したことを理由に、正式にチェ尚宮との交代を進めようとしていた。長番内侍は渋るが、最高尚宮が回復していない以上、抵抗にも限度があった。
ミン尚宮の調べにより、最高尚宮に処方されていた薬が持病を悪化させるものだったことが発覚する。内医院で最高尚宮の病状を悪化させる薬が処方されていたのだ。
それを知った最高尚宮は提調尚宮に手紙を書き、隔離所に呼びつける。そして、自分に与えられていた薬のことと秘伝書のことを持ち出し、自分を宮中に戻らせるよう提調尚宮を脅迫する。それが全て明るみに出れば、今度は提調尚宮が宮中を追われることになる。提調尚宮は従うしかなかった。
大妃に呼ばれる提調尚宮とチェ尚宮。中殿から大妃に太平館での真相が告げられており、大妃は二人をきつく叱る。
提調尚宮もチェ尚宮に対する怒りを抑えきれない。せめて提調尚宮に事の経緯を事前に知らせていれば手のうちようもあったが、今となっては遅すぎた。最高尚宮の座を目前にして、チェ尚宮の立場は一気に悪化した。
使者が明国に帰る日がやって来た。帰途につく使者は、ハン尚宮とチャングムの料理のおかげで来たときよりも体が軽くなったと喜ぶ。そして、明国に来る機会があったら必ず自分の元を訪ねるようにとの言葉を残し、使者は去って行く。
水刺間に呼び戻されるハン尚宮とチャングム。時を同じくして、最高尚宮も戻ってくる。再会を喜び合う一同。
そこに現れた大妃から、改めて競合で最高尚宮を選ぶことが伝えられる。最初は競合で最高尚宮を決めることに否定的だった大妃だが、今回のチェ尚宮の振る舞いを見て考えを変えたのである。ハン尚宮とチャングムを褒める大妃。王の健康を守るためには、時には敢えて王の機嫌を損ねることも厭わぬ者を選ぶべきだという中殿からの口添えも功を奏していた。
そして大妃は明国の使者への接待を二度目の競合と見なすことを宣言する。結果はもちろんハン尚宮の勝ちである。喜ぶ最高尚宮、チャングム、ヨンセン、チャンイ。チェ尚宮はクミョンとヨンノを引き連れてその場を立ち去る。
ハン尚宮・チェ尚宮・チャングム・クミョンの四人を呼び、秘伝書のことを知らせる最高尚宮。競合の公正を期すため、ハン尚宮にも秘伝書を見せようと言う最高尚宮だったが、ハン尚宮はこれを断る。
初めて秘伝書を目にして母の言葉を思い出すチャングム。「チャングム、水刺間の最高尚宮になっておくれ・・・」
その後チャングムは、母の手紙と料理日誌を隠した四阿で、一人母の思い出に浸るのだった。
成均館の学田の件に関し、上層部の反応が鈍いことを怪しむミン・ジョンホ。どうやら先に手を回されてしまったようだ。宮中にあってチェ・パンスルと通じている黒幕を暴き出さなければ、真相を究明することはできない。だが彼は部下の報告により、ユン・マッケが経営している料亭の所有者はチェ・パンスルであり、宮中の重要人物と合う際にそこを利用していることを知る。
都合良く酒を届けにやって来たトックに案内させ、ミン・ジョンホはその料亭に乗り込む。案の定、そこにはチェ・パンスルの姿があった。出世のために人脈を作ろうとしていると見せかけ、妓生からチェ・パンスルが会っている相手が誰なのか聞き出そうとするが、思うような情報は得られない。
大妃は関係者を集め、次の課題を発表する。最後の課題は「なし」。特に課題をを定めず、「王に奉る最高の料理」を作ること。同時にそれは大妃の誕生祝いの料理をも兼ねることとされた。
太平館での失態が影響し、競合に勝つ以外チェ尚宮が最高尚宮の座につく方法はなくなった。
最高尚宮はハン尚宮を呼び、競合を見届けることが自分の最後の役目だと考えていることを伝える。「どちらが勝っても、それが天の定めだと私は思う。お前も心を無にして臨みなさい」
日頃沈着冷静なハン尚宮も、今回ばかりは手が震えるほどの緊張を味わっていた。それを「可愛い」というチャングム。そしてチャングムは、ハン尚宮が勝つことではなく、志を貫き通すことを信じると言う。「たとえ、手は震えていらしても、お心が揺らいではいらっしゃらないことを信じます」
ハン尚宮はぽつりぽつりと自らの生い立ちを語り始める。幼い頃、貧しい両班の娘に助けられたこと。その娘と友情を育み、共に水刺間にやって来たこと。その娘とは他ならぬチャングムの母、ミョンイであった。
ハン尚宮はかつてミョンイと「どちらか最高尚宮になった方がもらい受ける」と約束して四阿の近くの松の木の下に埋めていた柿酢を掘り出す。チャングムもまた料理日誌からその柿酢のことを知る。
競合に勝つために、ためにハン尚宮はその柿酢を使うことにしたのだ。「誰が最高尚宮になっても、最高尚宮になった方に譲ろうと言ったけれど、私が使わせてもらうわ。ミョンイ、いいわよね。許してくれるでしょ?」 
母が埋めた柿酢のありかを知ったチャングムは、松の木の下に向かう。 だが、チャングムが来る前にハン尚宮は柿酢を埋めた場所から立ち去ってしまう。歩き出したハン尚宮は背中で懐かしい声を聞く。ミョンイの声だ。「ねえ、ペギョン。ペギョンったら!」
「王様へのお料理、八卦湯(パルガタン)にしたら?」
そこにミョンイがいるはずはなかった。だが、ハン尚宮はかつてミョンイが自分に言った言葉を思い出す。「私ね、八卦湯に入ってる冬虫夏草を見るとあなたを思い出すの。冬の間は昆虫で、夏になると茸になるって言うでしょ。なんとなく、悲しいじゃない。そんな悲しい生まれの茸だけど、食べた人のためになるんですってよ。あなたに似てるわ。」
再び戦いの場に赴くハン尚宮は、今は亡きミョンイに力強く微笑みかける。
そしてチャングムは一心に母とハン尚宮の友情の証が埋められた場所へと走るのだった。

第20話 「誘拐

水剌間(スラッカン)の最高尚宮(チェゴサングン)の座を巡る競合は、どちらも1勝1敗。決戦となる最終課題は皇太后の誕生祝に出す料理と決まった。ハン尚宮(サングン)はその昔、チャングムの母ミョンイと埋めた甘酢を使うことに。そのころチャングムは母の日記から、かつて母が友人と一緒に埋めた甘酢の存在を知り、その在りかを突き止める。一方のチェ尚宮(サングン)。ここまで来たら実力勝負、と小細工なしに料理に挑む。兄のパンスルは万全を期すため、チェ尚宮(サングン)に内緒でハン尚宮(サングン)の邪魔をする。その結果食材を失ったハン尚宮(サングン)は、再度の準備をチャングムに頼み、足りない食材を入手するため、宮中を出る。その道中でハン尚宮(サングン)の乗った船が不審な航路を取る。予定の時間を過ぎても戻らないハン尚宮(サングン)に、宮中では競合の中止が取りざたされる。

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ハン尚宮と入れ違いに、母とハン尚宮の甘酢が埋められた「裏庭の木」を探してチャングムが四阿にやって来る。
そこでチャングムは松の木の根元に最近掘り返された形跡があることに気づく。「もしかして、お母さんの親友が・・・」慌てて周囲を見渡すが、それらしい人影は既にない。
柿酢を掘り出し、その香りと味に思わず顔をほころばせるチャングム。「お母さんの親友って、一体どなたなのかしら・・・」
戻ってきたチャングムに、ハン尚宮は競合に出す料理を八卦湯(パルガタン)に決めたことを告げる。チャングムはチャングムで、王に差し上げたい料理があると言い出す。ハン尚宮もチャングムの熱意にほだされる形で、料理を出すことを認める。
事の成り行きに苛立つチェ・パンスル。だが、チェ尚宮は逆に競合に勝てば良いだけのことだと腹を括った様子である。「何を作るのか決めたのか?」「はい。宮中でも滅多に作られないものに致します」「では、あれを作る気でいるのか?」「はい。兄上には最高の食材の用意をお願い致します」
「わかった。わしは、お前を信じてはいるが、勝負は時の運、負けもある。何の裏工作もしなくていいのか?」「はい兄上。今回は私の誇りを賭けて勝負に挑みます」
だが、あらゆる不安材料を取り除いておきたいチェ・パンスルは、チェ尚宮とクミョンには知らせずに何らかの手を打とうとしていた。彼はユン・マッケに、彼の姪であるヨンノを使ってハン尚宮たちの動向を探るよう命じる。
ハン尚宮もチェ尚宮も献立を決め、材料が揃うのを待つのみとなった。その夜、ヨンセンとヨンノは互いに両陣営が用意している料理の献立を密かに教え合おうとしていた。が、二人とも本当のことを相手に教えるはずもなく、いつも通りの不毛な喧嘩で終わる。
トックは何とかハン尚宮の力になれないかと考えていた。そのことを聞いた妻チュデクは、ハン尚宮から頼まれていた冬虫夏草と一緒に秘蔵の赤蟻酒を渡すよう言う。赤蟻酒は貴重なもので、ハン尚宮が勝てば次期最高尚宮への賄賂となるし、仮に負けても王と、その場に居並ぶ重臣たちに供されることは後々彼女の商売の役に立つはずだ。
ハン尚宮に冬虫夏草を届けに来るトック。赤蟻酒をチャングムに託し、妻に言われるまま事もあろうに「王が確かに召し上がった」という証文を書いて欲しいと頼むが、さらりと受け流されてしまう。
いよいよ競合を翌日に控え、チェ・パンスルはユン・マッケに裏工作を命じる。その後チェ尚宮を訪ね、「安心」して競合に臨むよう伝えるのだった。
双方とも食材の準備が整い、翌日の段取りを決めて引き上げていく。その途中でばったり顔を合わせる四人。緊張した空気が漂う・・・。
「いいな、わかったな。司?院(サオンウォン)の門が閉ってからやるのだぞ」ユン・マッケはヨンノに「裏工作」の手はずを教える。喜々としてそれに応じるヨンノ。
その夜、チャングムは眠っていたところをヨンセンに起こされる。ヨンノが何かするのではないかと心配になったヨンセンが食材を確認しに行ったところ、猫と鶏が倉庫の中に入り込んでおり、貴重な冬虫夏草も含め、多くの食材が食い散らされていたというのである。慌てて駆けつけるチャングムとハン尚宮。司?院は既に門を閉ざしており、翌朝まで食材は手に入らない。加えて、冬虫夏草は司?院では入手不可能だ。ハン尚宮は巳の刻までに戻ることを約束し、冬虫夏草を探すために宮外に出る。
魚介類はいつも使っている盲目の魚売りが何とかしてくれることになった。翌朝店に取りに寄って受け取ることにし、ハン尚宮はトックの家に向かう。
冬虫夏草は元々余分があるようなものではないし、夜更けのことでもあり、心当たりを当たってはみるもののトックもなかなか見つけることができない。二人は松坡(ソンパ)の渡しで商売をしているという、トックの知り合いの薬売りを頼ることにする。
だが、薬売りは仕入れに出かけていて翌朝まで戻らないという。仕方なく、薬売りが戻るのを待つハン尚宮とトックであった。
チャングムとヨンセンは早朝から司?院の門が開くのを待ち、通常の食材を手に入れる。冬虫夏草と魚介類はハン尚宮を待つしかない。
やっと薬売りが仕入れから戻り、何とか冬虫夏草を手に入れることができたハン尚宮は、念のため海鼠と鮑を探しておくというトックを残し、一人渡し船に乗る。
一旦船着き場を離れたトックだったが、海鼠と鮑を仕入れる金をもらっていないことに気づき、出たばかりの船に向かって声をかける。その時、船頭たちがハン尚宮を拉致し、本来の行き先とは逆の方向に向かって船を走らせるのを目撃する。
急いで帰宅したトックは事の次第を妻に説明するが、二人ともどうして良いか判らない。とりあえずはミン・ジョンホを頼り、彼から捕盗庁を動かしてもらうことにする。
妻を最高尚宮の元に行かせ、トックはミン・ジョンホに事情を説明する。だが、慌てているせいで全く要領を得ない。「船が、逆に行くんですよ!私は止まれって言ったんですけど・・・」順序立てて説明しろと言うと今度は前夜妻の背中を掻いていたらハン尚宮が尋ねて来た、というところから延々と話し始める始末。苦り切るミン・ジョンホ。
辰の刻になっても戻らないハン尚宮。ヨンセンは落ち着きを失っておろおろするばかりだ。「辰の刻には戻るっておっしゃったのに、ねえ、どうしよう!」「絶対お戻りになるわ!」ヨンセンにはそう言ったものの、チャングムも内心では不安だった。
一方、トックの話をようやく理解したミン・ジョンホは捕盗庁の役人と共にハン尚宮を誘拐した船を探すが、容易には見つからない。宮中では巳の刻を過ぎても戻らないハン尚宮を、チャングムとヨンセンが待ち続けていた。
宴の始まる午の刻。宴会場に向かうチェ尚宮とクミョンをヨンノが呼び止め、チェ・パンスルの「裏工作」について報告する。だが、その話を聞いてチェ尚宮とクミョンは喜ぶどころか眉を顰める。「そんなことをしなくても私の勝ちよ。兄上もつまらないことを・・・」
直前の打ち合わせの場で、ハン尚宮がいないことに気づく提調尚宮。チャングムは仕方なくハン尚宮が食材を探しに出ていることを話す。提調尚宮は、大妃の誕生祝いを兼ねていることを知っていながら不在であることに加え、食材の管理不行き届きを理由に競合を中止させようとする。
このままではハン尚宮の負けになってしまう。思いあまったチャングムは、自分が料理をすると宣言してしまう。自分が下ごしらえをしておけば、ハン尚宮が戻り次第料理を出すことができると言い張るが、提調尚宮もチェ尚宮も了承するはずがない。その場は最高尚宮の機転と、クミョンの助け船で切り抜けることができたが、危機的な状況に変わりはなかった。
「料理をせずに負けてしまうよりはと思い、お前の言うことに賛成したが、本来ならばお前は当事者ではない。ハン尚宮が戻らなければ罪に問われるぞ」「お戻りになります!必ずお戻りになります!」

 

「戦わずして勝てたのに、何故こんな面倒なことを!ハン尚宮が戻ったらどうするの!」怒る提調尚宮。「・・・いえ、戻ることはありません。」「・・・」「しかし、お前が出しゃばらずとも良かった」クミョンがハン尚宮側を利するような発言をしたことを責めるチェ尚宮だったが、事情を察した提調尚宮は「ああ発言したのは正しい」と言う。あの発言で、チェ尚宮とクミョンは最後まで相手を待った信義の者という立場になれるからだ。
「そう思って発言したのか?」頷くクミョン。(でもそれだけではありません。チャングムが私を傷つけたのと同じだけ、傷つく姿が見たかったのです・・・)。
翌朝になっても注文した魚介類を取りに来ないハン尚宮を心配して、盲目の魚売りが品物を届けにやって来る。宮中に入れない魚売りの代わりに、丁度ハン尚宮のことを報せに来ていたトックの妻が預かって水刺間に届けることになる。
チャングムとヨンセンは、ホンイを通じて魚介類と同時にトックの妻からの伝言を受け取り、愕然とする。
かたや、チェ尚宮とクミョンは着々と料理を進めていく。
苦悩するチャングム。だが、そこにミン尚宮とチャンイが東宮殿から食材を貰って来てくれる。チャンイに至っては牛の肋肉をくすねて来たらしい。チャングムはついに決意する。これ以上ハン尚宮を待つことはできない。ヨンセンと二人で料理を作って出すしかないのだ。だが、食材の量が不十分で、失敗は許されない。二人でどこまでやれるのか・・・。
遂に宴は始まった。
最初の料理はチャングムが鮑の肝粥、チェ尚宮は五種粥。大妃は「体に良いこと」を考慮して作られた五種粥に軍配を上げる。
二番目の料理でも、チェ尚宮の技術と深い知識がチャングムの料理を上回る。追いつめられるチャングム。
チェ尚宮の勝ちを疑わず、得意げなヨンノ。ミン尚宮とチャンイは気が気ではない。
次の料理は冷菜。チェ尚宮の得意料理だ。チャングムは母とハン尚宮の柿酢を使うことにする。「お母さん、助けて下さい!」
三番目の料理が出される。チェ尚宮が出したのは鶏肉の冷菜。豆乳を使ったというその味に満足げな大妃と王。
だが、チャングムが出した海鮮の盛り合わせを口に含んだ瞬間、大妃は思わず目を見張る。「これはまた驚いた。こんな爽やかな風味は生まれて初めてです」。
味付けに何を使ったか尋ねられたチャングムは、松の実の代わりに大蒜を使ったことと、何十年も土の中で熟成させた「特別な酢」を使ったことを説明する。
双方の甲乙付けがたい味に対し、大妃と中殿は王に判断を任せる。王は、柿酢を長期間に亘って管理してきた真心を重視し、チャングムの勝ちを告げる。
喜ぶミン尚宮とチャンイ。悔しがるヨンノ。
だが、大妃はとうとうハン尚宮の不在に気づいてしまう。ハン尚宮が宮外に出てまだ戻っていないことを説明する提調尚宮。気色ばむ大妃。
チェ尚宮を向こうに回して一勝を上げた喜びも束の間、チャングムはこの状況を切り抜けることができるのだろうか?


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