1〜4話

第1話 「二人目の女」 
成宗13年(1482年)。朝鮮王朝第9代の王、成宗(ソンジョン)は品行の悪さを理由に元妃ユンを毒殺。現場に立ち会った武官の一人ソ・チョンスは王命に従っただけとはいえ、罪の意識に苛まれる。酔っ払い、山中で誤まって崖を転落したチョンスは洞くつで目を覚ます。傍らには老師が居り、チョンスの運命に関わる3人の女性の存在を告げる。3人の女性は「・順・好」と表わされた。チョンスは一人目の女性が元妃ユンであることに思い当たる。14年後、成宗(ソンジョン)を父に、元妃ユンを母に持つ燕山君(ヨンサングン)が即位して2年。いまだに老師の言葉が忘れられないチョンスは、自らの運命から逃れようと官職を辞す。宮中の台所、水剌間(スラッカン)。最高尚宮(チェゴサングン)の姪で女官のチェ・ソングムの挙動を不審に思った女官パク・ミョンイは、そのことを気味尚宮(キミサングン)に報告。しかしその夜、ミョンイは門番と通じ女官の誓いを破ったとして捕らえられ、山中で毒を飲まされる。歴代、最高尚宮(チェゴサングン)をつとめるチェ一族はその地位を守るべく権力闘争に加担、標的とした人物の食事に体調を悪化させるものを混ぜており、ミョンイが目撃したのはまさにその現場だったのだ。ミョンイの友人で女官のハン・ペギョンはことの一端を知り、ミョンイが飲まされる毒にこっそり解毒剤を混ぜる。翌朝、川縁に倒れているミョンイをチョンスが発見。こうしてチョンスは自分の運命を左右する第2の女性と出会ってしまったのだった。
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成宗13年、武官ソ・チョンスは弓の試合で相手に勝つが、的に命中した矢は折れ、弓の弦が切れて自らの手を傷つけていたことに気づく。不吉なものを感じるチョンス。その矢先、チョンスの上官に前王妃ユン氏処刑の命が下ったことが知らされる。
暮らしぶりの派手さや品行の悪さが取り沙汰されていたとはいえ、かつての王妃であり王子の母であるユン氏を殺すことに抵抗を感じたチョンスの上官はわざと落馬して怪我を理由に途中で逃げてしまう。処刑を任されることになるチョンスだったが、気が進まないのは彼も同じだった。もし王子が王位を継いだ後にこのことが知られたら・・
ことの非道さを訴える前王妃であったが、王命には逆らえなかった。彼女は武官の手で賜薬(毒薬)を飲まされることを潔しとせず、自ら服毒して果てる。「お前たち全てがこの報いを受けるであろう」と言い残して。見開いた彼女の目が見据える先にはチョンスがいた。

怯えるチョンス。この日を境に彼の人生は大きく変わり始めるのだった・・・。

母がどのような最期を迎えたかも知らず、無邪気に遊ぶ王子。その姿はチョンスには耐え難いものであった。

罪の意識に苛まれたチョンスは痛飲の果てに崖から転落してしまうが、謎の老師によって助けられる。老師はチョンスに、彼の運命は3人の女の手に握られていることを教える。「一人目の女はお前の手によって死ぬが、死なぬ。二人目の女はお前が命を救うがお前によって死ぬ。三人目の女はお前を死なせるが、多くの命を救う」と。一人目の女とはもう出会ってしまった。二人目の女に出会わなければ、チョンスを死なせるであろう三人目の女にも出会わずに済む。そのことをチョンスに伝え、三人の女を表す文字を記した紙を渡すと老師は忽然と姿を消す。

三つの文字は「?」「順」「好」。その文字が表すものを知ろうと、チョンスは知り合いの寺を訪ねる。住職はこの三つの文字を「破字(ハジャ)」、漢字を崩して読むことで意味が伝わるものと考え、チョンスにその解釈を教える。「?」は不吉という意味だが、これを崩せば「今の女」、今日会った女ということになる。この紙をもらった日に会った女・・・ユン氏である。二人目の女は「川」に「頭」が関係し、三人目は「女」の「子」が関係するはずだ。

14年後。チョンスは老師の言葉を信じ、40歳になるまで結婚もせず、女と接さぬように暮らしていた。だが、ユン氏の息子である燕山君が即位するに至り、彼は官職を辞して漢陽を去る決意をする。燕山君は一種の異常性格者であり、かつての恩師をも平気で処刑するような暴虐な面を持っていた。「母君のことをご存じない今でさえこうなのだ。母君のことを知られたらどうなってしまうのか・・・」チョンスの同僚がふと口にした言葉は、チョンス自身が抱いている不安でもあった。
一方、水刺間(スラッカン)ではミョンイがソングムの不審な行動に気づく。彼女は最高尚宮(水刺間の最高責任者)の姪であったが、大妃に出す料理の中に、食べた者の健康を害するような食材を混ぜていたのである。

ミョンイはそのことを気味尚宮に報告する。気味尚宮はこのことを知っているのはミョンイだけであることを確認し、自分が内密に調査してみるから他言はせぬようにと命じる。

だが、ミョンイは気味尚宮よりも先に一番仲の良い同僚であるペギョンに相談していたのである。万が一のことを考えて気味尚宮にはそのことを伝えなかっただけだったのだ。

ペギョンと別れた後、ミョンイは門衛に呼び止められる。彼は以前急な腹痛に苦しんでいたところをミョンイに助けてもらったことがあり、そのお礼にと高価な明国の白粉をミョンイに渡す。過分な礼を迷惑がるミョンイだったが、断り切れずに受け取ってしまう。

同僚の女官たちはそれを見てしきりと羨ましがる。ミョンイは複雑な気分だったが、同僚たちは自分にも使わせてくれとはしゃいでしまい、そこを通りかかった気味尚宮と最高尚宮に叱られてようやく仕事に戻る有様だ。 ・・・もちろんここで気味尚宮と最高尚宮が通りかかったのは偶然ではない。

ミョンイは夜になって最高尚宮からの呼び出しを受ける。昼間門衛から高価な贈り物を受け取っていたことを、最高尚宮は「宮女でありながら男と通じた(宮女は全員「王の女」であり、王以外の男と情を交わすのは重罪とされる)」証拠とし、気味尚宮への報告はその現場を目撃したソングムを中傷して宮中から追い出そうと謀ったものであるというのである。そしてミョンイは無理矢理毒薬を飲まされ、山中に放置される。
チェ一族は代々水刺間の実権を握り、その裏では料理を使った暗殺なども行ってきた人々である。今回の一件も最高尚宮以下、水刺間の有力者全員を巻き込んだ陰謀だったのである。友達を殺さなければならなかったことを泣くソングムに、最高尚宮はチェ一族の女としての使命を諭す。
だがミョンイは一命を取り留め、川縁に倒れているところをチョンスに発見される。彼女を背負って寺に運び込むチョンス。
チョンスがかつて三つの文字の解読を頼んだ住職の元に運び込まれたミョンイは、彼の献身的な介抱により死の淵から救い出される。

だが、チョンスが彼女こそ二人目の女であったことに気づくのにさほど時間はかからなかった。二人目の女を表す文字は「順」。「川」に「頭」をつけた女・・・。チョンスを死なせる三人目の女に出会わないためには、二人目の女に会わないことだと言われ、女と接さぬよう生きてきたチョンスだったが、運命からは逃れられなかったのだ。

意識を取り戻したミョンイは、自分の懐に押し込まれていた手紙から自分が助かった理由を知る。

ミョンイが処刑されようとしていることを知ったペギョンが解毒剤を用意し、毒薬に混ぜて飲ませていたのだ。そして彼女の手紙には、ペギョンがミョンイに送る最後の言葉が記されていた。もし死んでしまっていたら、自分を許さないで欲しい。もし生きているなら、この陰謀を企んだ者たちから遠く離れて、二度とここに戻って来てはいけない、と。

翌朝ミョンイは、まだ体調が十分に回復していないのだからと引き留めるチョンスに礼を述べると、一人行く当てのない旅に出る。

山頂から王宮の方角に向かってお辞儀をするミョンイ。そして、その後方には彼女を密かに見守るチョンスの姿があった。彼はどうしてもミョンイを一人で行かせることができなかったのだ。 だが、二人目の女はチョンスによって死ぬ運命であり、自分もまた三人目の女と出会って死ぬ運命にある。

自らは雨に濡れながら、雨宿りをするミョンイを物陰から見守るチョンス。

岩場で足を痛めたのか、足をさするミョンイ。遠く離れた岩の上にはやはりチョンスの姿があった。 ・・・こうして直接関わりを持たずにいれば彼女を死なせずに済むかも知れない。

ミョンイが立ち寄った酒幕(宿屋兼居酒屋)でも、こっそり女将に金を払って彼女の食事と宿泊、履き物の用意をさせる。
また、先回りしてミョンイが川を渡りやすいように石で道を作り、山中に潜んでミョンイを襲おうとしていた山賊を追い払いと、チョンスはミョンイの旅路を守り続ける。

とある酒幕に仕事を得て働き始めるミョンイ。酔客が彼女にからみ始めるのを見て、チョンスはたまらず手を出してしまう。ミョンイを連れてその場から逃げ出すチョンス。

だが、このままミョンイと一緒にいることはできない。チョンスは彼女を置いて早足に歩き始めるのだが、ミョンイは必死に彼を追って歩く。そしてチョンスは船着き場に彼女を残して船に乗る。・・・遠ざかるチョンスを見つめるミョンイ。その姿を見たチョンスは船頭から櫂を奪って船を岸に戻す。

チョンスはかつて老師から告げられた自分の運命をミョンイに話す。「私によって死ぬ定めでも、それでも私と一緒に来ますか?」「あなたに救われた命です。どうか一緒に連れて行って下さい」

それから更に8年。チョンスとミョンイの間にはチャングムという一人の女の子が生まれていた。「チョンスを死なせるが、多くの命を救う」三人目の女である。

第2話 「永遠の別れ」 

8年後、燕山君10年(1504年)。夫婦となったチョンスとミョンイは白丁(ペクチョン)の身分を称し、一人娘チャングムと3人でひっそり暮らしていた。チャングムは活発で向学心も強く、身分不相応な振る舞いを母ミョンイは心配するが父チョンスは可愛くて仕方ない。一方、燕山君(ヨンサングン)の暴君ぶりは激しさを増していった。生母ユン氏毒殺に関わった人物を探し出すべく、全土に当時の武官の似顔絵が張り出されることに。ある日、村の市に出かけたチョンスはチャングムにせがまれ、相撲に挑む。しかし騒ぎが起こり、チョンスは手配中の武官であることがばれ捕まってしまう。その家族まで処罰の対象であることからミョンイはチャングムを連れ逃亡。追っ手から逃れつつ、連行されたチョンスの後を追い漢陽(ハニャン)へ向かう。なんとか漢陽(ハニャン)についたミョンイはチョンスに会いたい一心で、意を決し、かつての友人ハン・ペギョンに手紙を書く。いまや水剌間(スラッカン)で尚宮(サングン)となっているハンは手紙を読み、宮中を抜け出しミョンイとの再会を喜ぶ。しかしハン尚宮の挙動を不審に思ったチェ・ソングムが後をつけ、ミョンイの生存を知る。同じく尚宮(サングン)となっているチェは一族の保身のため、再びミョンイの命を狙ってくる。

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鍛冶屋を営む白丁(ペクチョン)として、身を隠し暮らすチョンス一家。第一話ラストで嬉しそうにウサギを捕まえて来ていたチャングムであったが、第二話冒頭ではいきなり母ミョンイの激しい叱責に合う。両班(ヤンバン)の子供と遊んだり、こっそり寺子屋に行ったりしてはいけない。白丁が両班の真似などしていたら命さえ失いかねない、と叱るミョンイ。ミョンイにしてみれば、自分たちの置かれた状況からいっても神経質にならざるを得ないところであったが、元々好奇心が強く、学問への関心を押さえ切れないチャングムは納得できない。しかも、チャングムは本来自分たちが白丁ではないことを父から聞いて知っていた。チョンスはチャングムに将来の希望を持たせたいと願い、敢えて自分が武官であったことを教えたのだ。
ミョンイを取りなし、チャングムを連れ出すチョンス。チャングムが学問に興味を持つことを禁じはしないものの、チョンスが武官であったことは自分がいいと言うまで決して口外しないよう諭す。そうしなければ、三人とも死ぬことになるのだから。チャングムも決して他人に教えないと約束するのだが・・・。
一方、暴君・燕山君は母の死の真相を知り、関係者全員とその親族全てを処刑しようとする。かつてチョンスが危惧した通り、彼自身も「罪人」として追われる立場になってしまったのである。
チョンスはチャングムを連れて村の祭りを見物に来ていた。村の役場にはチョンスの人相書を含む手配書が貼られていたのだが、彼はそれに気づかない。チャングムにせがまれて出場した相撲の試合でチョンスは簡単に勝ってしまうが、負けた相手に逆恨みされ、「こいつが俺の腹を小刀で刺した」とぬれぎぬを着せられる。その騒ぎで見物人たちはチョンスが白丁であることに気づき、口々に彼を責め立てる。「白丁のくせに!」耐えきれなくなったチャングムはとうとう人々に向かって叫んでしまう。「お父さんは白丁じゃありません。王様をお守りする武官です!」
そしてとうとう見物人の一人が、チョンスの正体に気づいてしまう。捕えられるチョンス。チャングムは親切な白丁に促されるまま、母にこのことを知らせに駆け出す。
ミョンイとチャングムにも追手がかかり、ミョンイはチャングムを連れて8年間くらした村から逃げ出す。そして連行されたチョンスを追って漢陽に向かう。
逃亡の途中、ミョンイは一旦チャングムを崖下に隠し、単身追手をまいてしまう。その間、チャングムは父からもらったノリゲを手に、父のことを思い出していた。そして自分が犯してしまった失敗の大きさに打ちひしがれるのだった。
チャングムの回想シーンで、チョンスがチャングムに与えた、墨壺・小筆・小刀つき特製ノリゲについて語るシーンがあるが、この小刀について交わされる「これは決して自分の命を絶つために使うんじゃないぞ」「じゃあ何に使うの?」という親子の会話に不自然なものを感じた人もいると思う。この小刀は本来、婦女子が自決して貞節を守るために持つものなのである。小さな刀なので、頸動脈をこれで切断することになるのだが、実際に使用された例は非常に少ないのではないかと言われている。なお、このノリゲはチャングム成人後の物語で非常に大きな役割を果たす。
尚宮となったペギョンの元に、一通の手紙が届く。それは助けを求めるミョンイからのものだった。口実を設けて王宮の外でミョンイに会い、何とか手を尽くすことを約束するペギョンだったが、些細なことからペギョンの嘘が露見し、チェ尚宮(ソングム)と最高尚宮はミョンイが生きていたことを知ってしまう。二人はペギョンがミョンイに密会した事実には気づいていないふりをし、チェ尚宮の兄チェ・パンスルにミョンイの始末を依頼する。
ペギョンは何とかミョンイをチョンスに会わせてもらうよう手配をつける。そのことをミョンイに知らせに行くペギョンだったが、それを尾行されチェ尚宮にミョンイとの密会を知られてしまう。チョンスに引き合わせる約束の日。ペギョンは自分を尾行する女官に気づき、人を使ってミョンイの安否を確認させたが、チェ・パンスルの配下は一足早くミョンイを拉致してしまったのだった。
ところが、間もなくチェ・パンスルの屋敷に役人が乗り込んでくる。チェ・パンスルが罪人の家族をかくまっているとの密告を受けてやってきたというのだ。実は、この密告者はペギョンであった。役人に捕えられた方がまだ生き延びる可能性があると判断してのことだった。
形勢は一変し、チェ一族は不利な立場になってしまった。捕縛されたミョンイが事の顛末を全て話してしまったら、王族の暗殺を謀ったことまでが明るみに出てしまう。
ついに、チェ・パンスルは護送中の役人もろともミョンイを襲撃させる決断を下す。チェ・パンスルの手下の放った矢を胸に受けて倒れるミョンイ。
何とか追っ手を逃れ、山中に身を隠したミョンイとチャングムであったが、ミョンイは瀕死の重傷を負っていた。チャングムにあてた遺書を書こうとして、ミョンイはチャングムがチョンスにとっての「三人目の女」であったことに気づく。「チョンスを死なせるが、多くの命を救う」運命を持って生まれた子である、と。ミョンイは理不尽な運命に翻弄され、恨みを抱いて生きてきた自分たち夫婦にとって、チャングムが幸せをもたらす存在であったこと、そして「三人目の女」の運命について教える。「お前は何としても生き抜きなさい」
ミョンイはチャングムが採ってきた野苺を食べながら息絶える。「ああ、とても美味しいわ・・・」チャングムは必死に野苺を噛み砕いて母の口へと運ぶが、ミョンイがそれを飲み込むことはなかった。
チャングムは母の残した遺書を読む。「チャングム、水刺間の最高尚宮になっておくれ。最高尚宮になって、最高尚宮だけに受け継がれる秘伝の書にお母さんの無念を綴っておくれ・・・」遺書とは別に封をしてチャングムに遺された手紙には、ミョンイが殺されかけた事件の顛末が記されている。もし女官となり、最高尚宮を目指すのが嫌なら、その手紙は開いても人に見せてもいけない。もし宮中に上がったら、退膳間(テソンカン)に隠された母の「飲食抜記」(料理日誌)を見なさい。それが母の最後の言葉であった。そして、チャングムは山中で一人石を積み上げながら母の墓を作ると、女官として水刺間に入ることを決意する。

3〜4話

第3話 「夢の宮中」

両親を失ったチャングムはトック夫婦のもとに身を寄せる。2年が経ち、チャングムはトックに代わり一人で酒の配達が出来るようになっていた。その頃、燕山君(ヨンサングン)の暴政に堪えかねた臣下たちは、密かにクーデターを計画していた。首謀者パク・ウォンジョンらは燕山君(ヨンサングン)の異母弟である晋城大君(チンソンデグン)の擁立を計画、晋城大君(チンソンデグン)への連絡にチャングムが利用される。酒を届けに晋城大君(チンソンデグン)の前に通されたチャングムは、その場にいた皇太后殿の尚宮(サングン)に女官になりたいと直訴する。クーデターは成功し、1506年、晋城大君(チンソンデグン)は即位し中宗(チュンジョン)となった。チャングムはその働きが認められ、宮中に上がることに。これから半月の訓練を経たのち、女官見習になれるのだ。希望に胸膨らむチャングムだったが、仲間たちからは身分の違いを理由に仲間はずれにされてしまう。

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母を葬り、ひとり山を下りるチャングム。葛の根を囓って飢えをしのぎ、何とか村に到着した彼女の前に見覚えのある家があった。漢陽に着いた時、ミョンイから金をせびり取ったあの女の家である。チャングムは女が寝入っているのを見て、こっそり物置に忍び込んで食べ物を失敬しようとする。ところが、そこには先客がいた。
見るからに怪しげな初老の男が、酒壺を物色していたのである。物置の外には男の息子と思しき少年が待っていて、どうやら二人で組んで酒を盗もうとしているようである。「おじさん泥棒でしょう」「ど・・・泥棒だって?ここのうちのおばさんはもの凄いケチでな。俺に金を払わないんだよ」「じゃあ、おじさんも騙されたの?」「も、って、じゃあお前もか。可愛そうになあ」男はチャングムに物置に置いてあった蒸し米をたっぷりと持たせ、酒を盗んで立ち去ってしまった。やや遅れて物置から出る時、チャングムはうっかり桶を蹴飛ばしてしまい、目を覚ました女に見つかってしまう。逃げおおせることはできたものの、チャングムは酒泥棒のぬれぎぬを着せられることになってしまった。
チャングムは、母が遺してくれた金を使って宿屋で食事をしようとする。ところが、運悪くそこを女に見つけられ、ますます立場が悪くなってしまう。盗んだ酒を売り払った金で食事をしようとしていたと思われたのである。再び女の家に連れて行かれるチャングム。
女の家に着いてみると、そこにはさっき酒を盗み出していた親子がいるではないか。男はカン・ドックという熟手(スクス 宮廷の宴会料理を受け持つ料理人)で、妻がほとんど一人で切り盛りしている造り酒屋の酒を盗みだしては自分の飲み代にしていたのであった。驚くカン・ドック。一方チャングムはこれまでの疲れと緊張からついに倒れてしまう。
トックと彼の妻はチャングムの両親が二人とも死んでしまったことを聞き、当分の間家に置くことにする。それでもチャングムから宿代を取ることを忘れなかったが・・・。当初トックは秘密が露見することを恐れて(笑)、ジュテクは単なる厄介払いのため、早々に追い出そうとしていたのだが、よく働く上に心根の優しいチャングムと暮らすうちに、二人とももう追い出そうとは思わなくなっていた。
それから二年。ますます暴君ぶりを発揮する燕山君に対する不満は既に頂点に達しており、秘密裏にイム・サホン(任士洪)を始めとする、燕山君の支援者を排除する計画が練られていた。水刺間最高尚宮の強力を得て、宮中の兵士は毒入りの水と食べ物を与えられ、反乱当日には身動きできない状態になるはずであった。無論、チェ一族の暗躍が背後にあってのことである。チェ・パンスルは反乱勢力の後援者だったのだ。だが、肝心の燕山君に替わる王、晋城大君は厳重な監視下にあり、この計画を知らせる方法がない。
そこで目を付けられたのがチャングムだった。10歳になったチャングムはトックの妻の酒屋を手伝っており、晋城大君の居宅へも定期的に酒を届けに行っていたのである。オ・ギョモとその部下ユン・マッケはチャングムに4本の酒瓶を届けるように言う。「誕生日の贈り物ですから、必ずこの順番通りにお飲み下さいと伝えるのだぞ。覚えられるな?」一方、チェ・パンスルは万が一チャングムから秘密が漏れそうになった場合に備え、部下にチャングムを監視させる。その男はかつてミョンイを殺した男であった。
晋城大君の居室に通されるチャングムであったが、入るやいなや晋城大君を差し置いて世話係の女官にお辞儀をして「尚宮様、私を宮中にお連れ下さい」と頼み込む。女官はチャングムを叱るが、晋城大君は却ってチャングムに興味を持つ。そしてチャングムは酒瓶に漢字で書かれた酒の名前を晋城大君に伝えた上で、見事に四本の酒瓶を順番通りに並べ替えて見せる。だが、晋城大君は四本の酒瓶それぞれに書かれた文字を読んだ途端に顔色を変える。「お前は使いを頼んだ者に何と言うのかな?」「お酒はお納めになりましたが、深くお悩みの様子でしたと伝えます」チャングムの賢さに、晋城大君も女官も舌を巻く。チャングムが帰った後、晋城大君は女官に伝える。「できればあの子の望みを叶えてやれ」
酒瓶に書かれた文字を順番通りに繋ぎ合わせると、「今天既死 顕天当為」となる。「今の天は既に死す。新たなる天まさに為さんとす」。反乱計画の主導者、パク・ウォンジョンからの連絡文であった。晋城大君が顔色を変えた理由はこれであった。

そして反乱は成功し、晋城大君は第11代王として即位した。・・・それとは知らず反乱計画に協力し、王の心に深い印象を残したことが、後のチャングムの運命を大きく変えて行く。

それから数日後、チャングムの元に宮中からの使いが訪れる。晋城大君の指示通り、チャングムは宮女となるチャンスを与えられたのだった。すっかり家族の一員としてチャングムを受け容れていたチュテクは怒るが、チャングムは宮中へと去っていく。時を同じくして、チェ・パンスルの部下がトックの家を尋ねてくる。ミョンイと一緒にいたチャングムをうっすらと覚えており、晋城大君に酒を届けるのを見張っていた時から疑いを抱いていたのであった。だが、さしもの彼も
「何か知りたいなら金を出しな」というチュオクのがめつさと八つ当たりには勝てず、チャングムの身元についての情報は得られないまま、漠然とチャングムと迎えの女官の後をつけることしかできなかった。
ついに母のいた宮中に辿り着いたチャングム。正式に配属が決まる前の基礎教育の段階で既にチャングムの賢さは際立っていた。
ユン・マッケの姪、ヨンノは何かに付け目立っているチャングムの存在が目障りだった。身分が低いことを理由にチャングムをいじめるのだが、かつて「喋ってはいけない」と言われていたことを喋ったために父を死なせ、母からも最後の手紙で
「本当のことは誰にも教えてはいけない」と言われているチャングムは本当のことを言うことができない。
ヨンノに寝所から追い出され、チャングムは退膳間を探す。母の心が書き記されているという料理日誌を見つけようとして・・・。その途中チャングムは、宮中まで連れてきた亀に、母の病気を治してくれるよう祈っていたヨンセンに出会う。本来宮殿内にある退膳間はまだ正式な宮女ではないチャングムたちが立ち入ることのできない場所であり、ヨンセンはチャングムを止めようとする。だが、チャングムは聞き入れず、成り行きでヨンセンも一緒に退膳間に向かうことになる。

チャングムとヨンセンは、便殿(王の執務室)に向かってお辞儀をしている不思議な少女を見つける。二人が突然現れたことで少女は思わず悲鳴を上げてしまい、三人まとめて衛士に見つかりそうになる。衛士をやり過ごし、物陰に隠れている間、少女はチャングムとヨンセンにお辞儀の理由を話す。彼女が好きだった青年が、生進試に主席で合格し、便殿で王から茶を振る舞われているのだという。自分は親に女官にされてしまった身の上であり、両班と中人という身分の差もある。所詮叶わない恋であることを悟り、少女は便殿に向かって別れを告げていたのだった。チャングムは少女が別れの挨拶を済ませる間、見張りをすることを申し出る。チャングムと少女の間にはうっすらと友情のようなものが芽生えていた。

やっと退膳間に到着したチャングムとヨンセンだったが、チャングムが料理日誌を探している間に、ヨンセンがうっかり置いてあった食膳を落としてしまう。物音に気づいて退膳間に入ってくる尚宮と女官。ヨンセンが落とした食膳は王の夜食であり、水刺間は既に閉っているため、作り直しもできない。パニック状態になる女官に対し、尚宮は冷静にあり合わせの食材を持ってくるよう命じる。
見事な手際で替りの夜食を作る尚宮に、チャングムとヨンセンはただ見入るばかりだった。この尚宮こそミョンイの親友だったハン・ペギョンなのだが、チャングムがそのことを知る由もなかった。

第4話 「母の教え」

真夜中、王宮の退膳間(テソンカン)に忍び込み、王の夜食を台無しにしてしまったチャングムとヨンセン。訓育尚宮(フニュックサングン)に引き渡すまでの間、退膳間(テソンカン)の蔵に閉じ込められることに。翌日、事の次第を知った訓育尚宮(フニュックサングン)はヨンセンの分までチャングムに罰を与え、チャングムに訓練場の外の掃除を言い付ける。ヨンセンの助けもあり、チャングムは訓練場から漏れ聞こえる講義の声を頼りに懸命に学ぶ。半月がたち、女官見習としての配属が決まる試験を明日に控え、試験を受けさせてもらえるようチャングムは訓育尚宮(フニュックサングン)に懇願。訓育尚宮(フニュックサングン)はチャングムに水桶を持たせ、明日まで水をこぼさず持っていたら試験を受けさせると約束。チャングムはヨンノの妨害にもめげず、持ちこたえる。晴れて試験に合格したチャングムはハン尚宮のもとに配属される。ハン尚宮はチャングムに水を持ってくるよう言い付ける。何度もやり直しを命じるハン尚宮の真意がわからず、とまどうチャングム。仲間からのチャングムへのいじめは相変わらず続いており、先輩格のチョバンは水剌間(スラッカン)の洗い物すべてをチャングム一人に言い付ける。チャングムはこのところの黄砂で井戸の水が濁っていることに気付く。

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ハン尚宮の機転で王の夜食は何とかなったものの、チャングムとヨンセンは翌朝訓育尚宮に引き渡すまでの間、蔵に閉じこめられることになった。チャングムはヨンセンの腕の血に気づく。退膳間で夜食の膳をひっくり返した時に転んで怪我をしたらしい。蔵から出して手当をしてくれるよう訴えるチャングムであったが、ミン内人は蔵から出たい一心で嘘を言っているものと思い、相手にしない。
翌朝、カン・ドックが宮中にやってくる。酒を納めるついでにこっそりと何やら怪しげな商売をしているようだ。女官たちの喜びそうな装身具を高く売りつけたり、果ては自作の春画まで「唐のもの」と偽って売ろうとする。ミン内人もトックの客の一人で、ひとしきりはしゃいでいたのだが、たまたまハン尚宮が通りかかり、その場はお開きとなる。トックは以前から頼まれていた、ミョンイの消息がまだ掴めないという話題を切り出してその場を逃れる。そして、宮に上がったチャングムのことをハン尚宮に話し、面倒を見てやって欲しいと頼む。
その頃、チャングムとヨンセンがいなくなったことが発覚し、訓育場では騒ぎが持ち上がっていた。ヨンノが二人を追い出したことなど白状するはずはなく、チャングムとヨンセンは勝手に訓育場から逃げたということにされてしまった。ミン内人が朝になったら訓育尚宮に二人のことを伝えに行くよう命じられていたはずなのだが・・・。彼女は伝えに行くには行ったのだが、たまたま訓育尚宮の不在時に重なってしまい、改めて伝えに行くつもりでそれっきり忘れてしまっていたのだ。トックが持ってきた小物類に夢中になっていのだから無理もない。いなくなった二人を捜して、水刺間にも訓育尚宮の使いの女官が訪れる。そこでやっとミン尚宮が二人のことを思い出す。慌てて蔵に向かうハン尚宮とミン内人。
チャングムとヨンセンはすっかり眠りこんでいたが、ヨンセンの腕の怪我はしっかりと手当がしてあった。チャングムは蔵の中に置いてあった無数の薬草の中から、止血効果のあるものを探し出し、ちゃんと適切な手当をしていたのだ。薬草の効能を知っていただけでなく、暗闇の中で必要な薬草を探し出す能力に驚くハン尚宮。だが、それで処罰を逃れられる訳ではない。二人は訓育尚宮に引き渡された。
チャングムは無理矢理つき合わせたヨンセンに罪はないといい、一人で罰を受ける。だが、宮中の掟を破った罪は予想以上に重く、ふくらはぎをしたたか打たれた上に、訓育場から追い出されてしまう。「お前に宮女になる資格はない!これからは勉強はせず、外で掃除をしていなさい!」訓育尚宮の厳しい言葉にうなだれるチャングム。ヨンノはそれを見て一人ほくそ笑むのであった。
だが、それで挫けるようなチャングムではない。他のセンガッシ(宮女見習い)たちはなかなか覚えられずに苦労している膨大な官職名を、箒を振るリズムに合わせて覚えて行く。

さらに隙を見てヨンノの履き物を柱の陰に隠してしまう。いつまでもやられっぱなしでいるような性格でもなかったようだ。

訓育場の中のセンガッシたちは官職名を順に暗誦していくうちにだんだん記憶が怪しくなって黙ってしまうのだが、訓育場の外からその続きを暗誦する声が聞こえてくる。チャングムだ。扉を開けて睨みつける訓育尚宮。そして嘲笑するセンガッシたち。

他のセンガッシたちがお辞儀の練習をしている間も、チャングムは庭の掃除をしなければならない。ヨンセンは隙を見て扉を開け、外からチャングムが練習の様子を見られるようにするが、ヨンノは即座に扉を閉めてしまう。そんな嫌がらせにもめげず、チャングムは掃除をしながら着実に多くのことを学んでいった。
兄チェ・パンスルのもとを訪れ、談笑しているチェ尚宮。チェ・パンスルは多くの謀反勢力の中からオ・ギョモを選んだ自分の眼力を自慢する。チェ・パンスルは、料亭を遊び歩きながら着実に同志を増やしていったオ・ギョモのやり方を見て、これから宮中で必ず大成する人物であると目星を付けたのであった。その話を聞いたチェ尚宮は、自分の立場をより確かなものにするためにオ・ギョモと義兄妹の縁を取り持ってくれるよう頼む。また、チェ・パンスルは自分の手下であるピルトゥ(ミョンイを襲い、チャングムの後をつけていたあの男である)が、チャングムがミョンイの子かも知れないと報告してきたことをチェ尚宮に話す。だが、ミョンイがチャングムを男装させていたのが功を奏し、二人とも何か腑に落ちないものを感じつつもそれ以上の追求をしようとはしなかった。
訓育場ではセンガッシたちが試験を翌日に控えていたが、チャングムだけは試験を受けさせてもらえない。そのことを知り、訓育尚宮に何とか試験だけは受けさせてもらえるよう頼み込むチャングム。試験を受けられなければ宮中に残ることができないのだ。訓育尚宮は頑として聞き入れようとしなかったが、翌日の試験が終わるまでの間水桶に水を一杯にして一滴もこぼさず持っていることができれば試験を受けさせてやると約束する。
夜を徹して水桶を持ち続けることになったチャングム。監視係となった女官がその場を離れて戻ってみると、チャングムはいつの間にか座り込んでいる。「どうして座ってるの」「座ってはいけないとは言われておりません。こぼさなければいいんです」再び立たされ、泣き出すチャングム。「泣かないの!なんで泣くの?」「泣いたっていいでしょ。いけないとは言われてません!」「じゃあ下ろせばいいでしょ。私だって眠いのよ」「それはできません」
ついに試験が始まる。調提尚宮(チェジョサングン 宮女の統轄責任者。NHK版では「女官長」になっている)直々に、一人一人に対しての口頭試問が行われるのである。全員の試験が終わったところで、ハン尚宮は人数が一人足りないことに気づく。丁度その時、訓育場の外からヨンノの泣き声が聞こえて来る。ヨンノはチャングムから水桶を取り上げようとして、却って水をぶちまけられていたのである。その騒ぎに女官長以下、尚宮たち全員がその場に駆けつけて、チャングムが前夜から半日水桶を持って立たされていたことが知られる。女官長は非常識な罰を与えた訓育尚宮を叱り、チャングムに試験を受けさせる。
調提尚宮はチャングムが罰を受けるべき立場にあることは承知しつつも、約束は約束としてチャングムに機会を与えたのである。それ故、チャングムに与えられた問題は他の子たちよりも難しいものであった。だが、チャングムはその問いに完璧に答えてしまうのであった。
これにはチャングムに試験を受けさせまいとした訓育尚宮も含め、その場に居合わせた全員が舌を巻く。
チャングムはハン尚宮に預けられ、無事水刺間に入ることができた。ハン尚宮はチャングムに尋ねる。「小さな子が半日も重い水桶を持っているなんて辛かったろうに、そこまでして宮中に残りたいのはなぜです?」「私、水刺間の最高尚宮になりたいんです。尚宮様、どうしたら早く水刺間の最高尚宮になれるんでしょうか?」その答えに眉をひそめるハン尚宮。しばらくの後、ハン尚宮はチャングムに飲み水を持ってくるよう命じる。器に水を入れて運んでくるチャングムであったが、ハン尚宮はやり直しを命じる。何度となくやり直しをさせられ、悩むチャングム。
チャングムは、チャンイから亥の刻に綺麗な服を着て最高尚宮の部屋に挨拶に行くよう伝えられる。その言葉に従って最高尚宮の元に行くチャングムであったが、そこでは尚宮たちが国中を襲っている黄砂の害を鎮めるための祭事についての打ち合わせを行っていた。中宗の即位直後に発生した天災に、誰もが深刻な面持ちで話し合っていた所に現れ、叱られるチャングム。チャンイに騙されたのだ。ハン尚宮はチャングムを水刺間に連れて行くよう女官に命じるが、その表情は暗かった。チャングムはこのことで年長のチョバンの不興を買うことになり、一人で皿洗いをするよう命じられる。
ハン尚宮の「やり直し」はまだ続いていた。木の葉を浮かべたり、水を温めたりとチャングムなりに工夫を重ねるのだが、全く認めてもらない。そんなある日、ハン尚宮は毎日未明から起き出して外に出るチャングムに気づき、チョバンに朝早く起きなければならないような仕事をさせていないか尋ねるが、チョバンは皿洗い以外は命じていないと答える。
ハン尚宮はチャングムの後をつけてみることにした。ところが、そこにミン内人が皇太后殿で大事件が発生したことを伝えにやってくる。料理が一夜にして全て腐ってしまったというのである。皇太后殿には最高尚宮以下、関係者が集まっていた。食材にもその管理にも特に問題はないのに、料理全てが腐ってしまうなど、過去に例のない事件だった。そればかりか、東宮殿でも料理が腐っているという。もしや水刺間の料理も・・・。

水刺間の料理は何故か全て無事だったが、ここでは別の問題が起こっていた。まだ洗い物が終わらず、王の朝食のための器と食材が届いていなかったのである。チャングムのいる洗い場に向かう一同。そこではチャングムが湯を沸かして洗い物をしていた。湯が冷めないと食材が洗えないため遅れていたのである。チャングムが朝早くから部屋を出ていた理由を悟るハン尚宮。何故湯で洗っていたのか尋ねると、チャングムは黄砂のせいで井戸水に泥が混じっており、そのまま使うと臭う上に料理がすぐに腐ってしまうからだと答える。水刺間の料理だけが腐らなかった理由はこれであった。そしてチャングムはそのことを母から教わったという。ハン尚宮もチェ尚宮も、ただ驚くばかりであった。

チェ尚宮はチャングムだけに洗い物を押しつけていたチョバンたちを叱り、東宮殿と皇太后殿の厨房にチャングムと同じように湯を沸かして使うよう連絡させる。

その夜。ハン尚宮はまたチャングムに水を持ってくるよう伝える。耐えかねたチャングムはハン尚宮に尋ねる。「どうしてそればかり何度もおっしゃるのですか?」「考えればちゃんとわかるはずよ。お前は何故泥水を湧かしていたの?」「それはお母さんががいつもそうしていたのを見ていたから・・・」「お母様は何故そうなさったと思う?」「泥水を飲んで私が具合を悪くするといけないから・・・」完爾として微笑むハン尚宮。

「あっ。尚宮様、おなかは痛くございませんか?」「大丈夫」「今日はお通じがございましたか?」「ええ、あったわ」「それでは喉が痛い時はございませんか?」「喉が痛いことはよくあるわね」チャングムは暖かい湯に塩をひとつまみ入れたものを持ってくる。ハン尚宮は、一杯の水であっても器に入った瞬間にそれは料理となり、口にする相手の好みや健康状態を事細かに知らねばならないことをチャングムに悟らせたかったのである。「だけど、お前はお母様から既に教わっていたのね。お母様は本当に立派な方だこと」
ハン尚宮は、チャングムがそんな立派な母親の子であるとは思わず、親がいないから目上の者に取り入ろうとしているのではないかと疑っていたことを詫びる。思わず泣き出すチャングムに、ハン尚宮は優しく諭す。「心が弱くてはお前がそんなになりたい最高尚宮にはとてもなれませんよ」
水刺間ではチョバンたち年長組が、来る競合について相談を交わしていた。クミョンという少女がいつも特別扱いされていることに不満を持っていた。「私たちが松の実刺ししてる間にクミョンは包丁の練習だもの。松の実刺しだったら負けないのに・・・」彼女たちはチェ尚宮の元にいるヨンノから課題を聞き出してこっそり練習を積んで勝とうと考えていた。いともあっさりと課題をチョバンたちに教えてしまうヨンノ。さすがに心配になったチャンイがそんなことを教えて良かったのか尋ねるが、ヨンノの答えは「いいの。どうせ勝てないから」。クミョンは神童と呼ばれるほどの才能を持つ少女だったのだ。
チョバンたちが競合対策の極秘練習に集中するため、チャングムとヨンセンは面倒な松の実刺しを押しつけられる。松の実に開いた小さな穴に松葉を刺すのだが、なかなかうまく行かず、夜になても割り当てられた仕事が終わらない。とうとう消灯時間になり、母の病気が気になって眠れなかったヨンセンを帰らせたチャングムは一人月明かりの下でで仕事をしなければならなくなった。昼間でさえ上手くできないものが、月明かりの下でできるはずもなく、苦労するチャングム。
そこに、以前初恋の人に別れを告げていたあの少女が現れる。「あなたと会うのはいつも夜中ね」チャングムは少女に事の経緯を話す。チョバンたちが「松の実刺しなら負けない」と言っていたことや、ヨンノがクミョンは料理の天才だと言っていたこと等々。「どっちが本当なのかわかりませんけど、私は仕事で大変」。
「月明かりに頼っては駄目よ」少女はチャングムに松の実刺しの意味を教える。「子供たちに松の実刺しをやらせるのは、手の感覚を養うためなの。そんなこともわからずにやってるからいつまで経っても上達しないのよ」少女に言われるまま、目を閉じてやってみるチャングム。すると不思議なほど簡単に成功してしまう。こうしてチャングムは一つ一つ成長しながら水刺間での日々を送っていくのであった。


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