21〜24話


第21話 「野いちごの味」

ハン尚宮(サングン)不在を知った皇太后は激怒するが、チャングムの人柄を知る皇后があいだをとりなし、競合は続行されることに。
その頃、ハン尚宮(サングン)は民家の蔵に幽閉されていたが、トックの知らせを受けて探しに来たチョンホが見つけ、救出。ハン尚宮(サングン)がようやく宮中に戻ったとき、全7品のうちすでに4品が終了し、チェ尚宮(サングン)側が3ポイントを獲得。しかしハン尚宮(サングン)は調理場に戻らず、チャングムにすべてを任せる。その後、巻き返したチャングムとチェ尚宮(サングン)の対決は、食後のお菓子で勝敗が決まることに。皇太后は最後の一品を前に、今日の課題「最高の料理」はどれかと両者に質問。チェ尚宮(サングン)は絶賛されたヨンジョ(イノシシ肉の煮込み)を挙げ、チャングムはこれから出すお菓子がそれだといい、最後の一品を出す。その頃、チョンホはチェ・パンスルの背後にいる「大物」の正体を知る。後任の最高尚宮(チェゴサングン)が決まり、3日後の交替を控え、チョン最高尚宮(チェゴサングン)は禍根を残さないよう女官長らに頼んで回る。チョン最高尚宮(チェゴサングン)を母と慕うヨンセンは、涙ながらに、あれこれと身の回りのお世話をする。そして、その日がやってきた……。

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ハン尚宮が再び食材を手配するために宮外に出て戻っていないことを聞き、大妃は怒る。残った食材を使って、刻限には間に合わせるのが道理だからである。また、ハン尚宮ではなくチャングムが料理を作っているのでは、競合の意味もないと憤慨する大妃。だが、王はチャングムが料理をしたと聞いて目を見張る。
中殿は太平館での一件を持ち出し、師匠を助けようと必死なチャングムを許してやって欲しいと大妃を取りなす。王もまた、大妃の生誕を祝う席でもあるのだから、宴はこのまま継続し、競合の結果は宴が終わった後のことにしてはどうかと薦める。大妃も気持ちを静め、チャングムの料理がチェ尚宮に比べて格段に劣る訳でもないからと宴を続けることを認める。
その頃、ハン尚宮は何処とも知れぬ場所に監禁されていた。外には見張りの者もいて、容易に脱出はできそうもない・・・。
四番目の料理は焼き物。チャングムは松茸とカルビの焼き物を出すが、チェ尚宮が工夫と手間をこらした海老の焼き物にかなうものではなかった。これで一勝三敗。あと一度敗れたら全て終わりになってしまう。
ハン尚宮は、閉じこめられていた小屋の閂が外されていることに気づく。ミン・ジョンホがようやく助けに来てくれたのである。・・・だが、何故ハン尚宮を拉致した男たちは捕えられる前に閂を外しておいたのか。その理由に気づく者はなかった。
次の料理は本来八卦湯(パルガタン)のはずだったが、冬虫夏草が手に入らないのではどうしようもない。チャングムはあり合わせの食材を使った料理を選ばざるを得なかった。ヨンセンはおろおろするばかりで、料理をする手も止まりがちである。「ねえ、チャングムったらどうするの?」「ねえ、ヨンセン。とにかくやるしかない時があるの」「それって・・・どういうこと?」「どんなに辛くても、怖くても、何も考えずに突き進むしかない。今がそういう時よ。こうなったらやるしかないの。ただひたすら、怖れも、迷いも捨てて。ね?」
だが、そう言ったチャングム自身も手が震えるのを抑えることができない。母の遺した飲食抜記を胸に、チャングムは自らを奮い立たせる。「そうですよね、お母さん。私に残されたのは、もうお母さんのあの料理しかありません。助けて下さいお母さん、力を貸して!」
五番目の料理。チェ尚宮の料理は軟猪(ヨンジョ)。猪の子の肉を使った煮込みである。以前狩りに行った際にこの料理を食べたことがある王は、大妃にも食べてもらいたいと考えていたという。チェ尚宮は更に麦飯石を使って浄化した水を使うなどの工夫を加えており、大妃もその味に満足げであった。
対するチャングムの料理。蓋を開くや眉を顰める大妃。王は怪訝そうな表情を見せ、中殿は溜息をつく。それは何の変哲もない若鶏の蒸し焼きだった。自らの勝ちを確信するチェ尚宮だったが・・・。
その肉を一口食べた途端、大妃の表情が変る。いままで味わったことのないほのかな辛みに大妃だけでなく王も興味を示し、何を使ったのかチャングムに尋ねる。
チャングムが用いたのは「伏龍肝」、竈の下で長年加熱され続けた土であった。その土を肉に塗って焼いたのである。土で味付けをしたと聞き、驚く一同。
息を詰めて成り行きを見守るミン尚宮たち。そこにやっとハン尚宮が戻ってくる。
チャングムが作った若鶏の蒸し焼きは、チェ尚宮の軟猪にひけを取るものではなかった。大妃も王もどちらを勝ちにするか迷うが、伏龍肝を使ったことが評価され、チャングムに勝ちが告げられる。「特別な食材を使わず、土を使って軟猪に匹敵するほどの味を出すとは。驚き、感心した」
チャングムが勝ったことを喜ぶミン尚宮とチャンイ。だが、あと一回負けてしまったら終わりなのは変らない。早く厨房に行くよう頼むミン尚宮にハン尚宮は答えて言う。「いいえ。この競合はチャングムに任せます」
図らずも負けを喫して険しい表情のチェ尚宮。

うなだれて厨房に戻ってきたチャングムを見てうろたえるヨンセン。だがしばしの間をおいてチャングムはにっこりと微笑む。チャングムには心配性のヨンセンをからかう余裕も出てきたようだ。

次の料理。チェ尚宮は蟹の醤油漬けを使ったピビンバを出す。対するチャングムはピビンバを釜ごと出して、提調尚宮からその非礼を咎められる。だが、釜ごと出し、暖かい状態で食べてもらうことがチャングムの工夫だったのだ。その心遣いと、暖かい状態でナムルを混ぜることから生まれる味わいに、大妃は勝ちを与える。
これで勝負は三対三。勝敗の行方は食後の菓子の出来如何によって決されることになる。「これで決着がつくんでしょ?そんな普通のものでいいの?」「違うわ。これこそ、王様に差し上げる最高の料理なの」
料理を運ぶ途中、チャングムはハン尚宮と出会う。そしてハン尚宮のその微笑みの内に自分への信頼を感じ取り、力強く頷いて宴席へと向かうのだった。
大妃は最後に、それぞれの「最高の料理」がどれだったのかを尋ねる。チェ尚宮は「軟猪」と答えるが、チャングムは本来ハン尚宮が出すはずだった「八卦湯」が出せなかったため、代わりに自分が作った「最高の料理」をこれから出すと答える。
・・・それは「野苺の砂糖漬け」だった。驚きながらも「野苺の砂糖漬け」を食べる大妃。中殿はチャングムに、何故これが最高の料理なのかを尋ねる。「・・・野苺は、母が亡くなる間際に、最後に食べてくれたものなのでございます」
チャングムは母の最期を語る。そして、この「野苺」に込められた意味を説明するのだった。「王様は全ての民の父でいらっしゃいます。例え、粗末な野苺であっても微笑んで食べてくれた私の母のように、どうか民をお守り下さいますよう」無言で頷く王。「私は母を思う気持ちを込め、この砂糖漬けをお作りしたのでございます」王は野苺を口に運び、そして言う。「実に美味い。幼いお前を遺し、逝った母の想いを余は忘れまい。幼い子が独りでどう生きていくのか、案じながらこの世を去ったお前の母の想いを、忘れずに国を治めよう。野苺は、余にとっても最高の料理だ。そしてお前は、国一番の水刺間の女官だ!」
勝敗を判断するのは大妃だったはずなのだが、王のその言葉に大妃は困惑する。事実上ハン尚宮の勝ちが宣言されたようなものだからだ。王の意志を尊重しようとする大妃と、自分はチャングムを誉めただけなのだから、あくまでも大妃が勝敗を決めて欲しいと言う王。そして、勝敗は別にしてもハン尚宮に会ってみたいという中殿の言葉を受けて、ハン尚宮が呼ばれる。
チェ・パンスルの妨害工作は大妃に対して十分な効果を上げていた。当初大妃は食材管理がずさんであったことと、刻限に間に合わなかったことを理由に、ハン尚宮ではなくチェ尚宮を最高尚宮に任命しようと考えていたのである。だが、大妃はチャングムの料理を気に入っている王の意向を酌むと同時に、チャングムのような女官を育て、慕われていることにハン尚宮の徳を認め、考えを変える。大妃が選んだ最高尚宮はハン尚宮であった。
ハン尚宮とチャングム。チェ尚宮とクミョン。戦いを終えた四人はそれぞれに異なる涙を流す。
そして、自らの役目を終えたチョン尚宮にもやっと涙を流すことが許される時が来た。
チャングムはハン尚宮から拉致された時の話を聞き、競合の刻限に間に合わせないためにそんなことまでするチェ尚宮一派のやり口に憤慨する。
その夜、チャングムは退膳間の当番に向かう途中でミン・ジョンホに出会う。ハン尚宮を救い出してくれた礼を言うチャングム。そしてミン・ジョンホは必死に頑張るチャングムの姿が美しかったと言い、王に伝えた言葉に感動したことを話す。
だが、ミン・ジョンホに捕えられた拉致犯たちは翌日になって釈放されていた。オ・ギョモがいち早く手を回し、ハン尚宮が間違った船に乗ったということにされていたのである。ハン尚宮が閉じこめられていた物置の閂が外されていたのも、証拠を残さないためだったのだ。
王が赤蟻酒を飲んだという証文を得られなかったカン・ドックは、自分で適当な証文をでっち上げるが、すぐに妻に見破られてしまう。彼女は今回の一件で名を上げたチャングムの名前を借りて赤蟻酒を売り出そうとするのだが、トックはそんなことをしたらチャングムの身に何か起こるのではないかと心配する。
家を逃げ出したトックはハン尚宮拉致事件のことを詳しく聞こうとトックを尋ねてきたミン・ジョンホと出会う。ハン尚宮とトックが船に乗る前に行き先を確認していたことを確かめ、二人はユン・マッケの経営する料亭へと向かう。そこでミン・ジョンホはチェ・パンスルと司?院(サオンウォン)のパク・プギョム、そしてオ・ギョモがよくこの料亭で会っていることを聞き出す。

その頃、同じ料亭の別室では、オ・ギョモとチェ・パンスルが最高尚宮の問題について話し合っていた。ハン尚宮が最高尚宮になったことで、司?院の責任者であるオ・ギョモと、仕入れを独占しているチェ・パンスルは窮地に陥っていた。宮中に入る品物のほとんどは水刺間が仕切っており、オ・ギョモも現場の声を無視してチェ・パンスル商団からの仕入れを継続することはできない。そうなればチェ・パンスルは利権を失い、オ・ギョモも利益供与を受けられなくなってしまう。何とかして大妃の決定を覆すしかない。チェ・パンスルはオ・ギョモに賄賂を渡す。

チョン尚宮は大妃に対し、健康状態の悪化と後任者が決定したことを理由に、引退を申し出る。申し出は聞き届けられ、三日後にハン尚宮への引き継ぎが行われることになった。そこでハン尚宮は正式に最高尚宮となり、チョン尚宮は宮中を去るのである。

チェ尚宮は、引き継ぎが行われるまでの三日間で大妃の決定を覆そうと画策する。ハン尚宮自身が競合に参加していない上に、大妃自身が最初はハン尚宮を認めていなかったのだから、可能性はある。加えて、現職にある尚宮たちはほとんどチェ一族から便宜を図ってもらったことのある者ばかりだ。彼女たちはハン尚宮よりもチェ尚宮が最高尚宮となることを望むはずである。尚宮たちが全員で大妃に願い出れば、大妃はもう一度考えを変えるかも知れない。チェ尚宮は他の尚宮たち一人一人を説得して回り始める。中にはそのことを知って自主的にチェ尚宮を支持することを伝えに訪れる者もあった。
チャングムやミン尚宮がハン尚宮の最高尚宮就任を喜んでいる傍らで、ヨンセンはチョン尚宮との別れを悲しんでいた。チョン尚宮もまた、純粋無垢なヨンセンを残して去ることが心配でたまらないと涙を流すのであった。
就任式の準備が進む中、チョン尚宮はハン尚宮を部屋に呼ぶ。そして、最高尚宮として最後の教えを次期最高尚宮に与えるのだった。宮中は孤独な場所だ。その孤独さ故に人は権力や富に頼ろうとする。それを許す広い心を持ち、毅然としながらも融通を利かせなければならない。「さもないと、お前のその毅然とした態度が人々を遠ざけてしまうだろう」感激したハン尚宮はチョン尚宮にお辞儀をしようとするが、病人にお辞儀をするのはあの世に旅立つ別れの挨拶だと止められる。チョン尚宮が部屋を出た後も、ハン尚宮は立ちつくしたまま嗚咽するのだった。
部屋を出たチョン尚宮は提調尚宮とチェ尚宮の部屋を巡る。提調尚宮には自分への怒りをハン尚宮に向けないで欲しいと頼み、チェ尚宮には素直に引き下がって欲しいと頼むチョン尚宮。チョン尚宮が立ち去った後、提調尚宮は一人物思いに沈む。
チェ尚宮もまた、思い詰めた表情で灯火を見つめる。
就任式が行われる当日。チャングムとヨンセンに付き添われて会場にやって来たチョン尚宮が見たのは、誰もいない会場に立ちつくすハン尚宮の姿だった。
尚宮たち全員がハン尚宮の最高尚宮就任を拒否し、別室に集まっていた。ハン尚宮が競合をしていないことと、賤民の出であることが問題視されており、ハン尚宮の下では働けないというのである。無論、これはチェ尚宮の働きかけがあってのことである。
「どっちつかず」の立場を貫き通すことで身の安全を図ろうとするミン尚宮とチャンイにとって、これは大変な事態だった。「尚宮様、目立たずに末永く楽に生きるためにはどうすればいいですか?」「知らないわよ!私もこんなこと初めて!」ミン尚宮は事が収まるまで仮病を使って姿を見せないようにすることくらいしか思いつけない。おろおろする二人をハン尚宮たちが見つけ、彼女たちから誰も就任式に来なかった理由を知る。
怒りに燃えて尚宮たちの元に乗り込むチョン尚宮だったが、提調尚宮とチェ尚宮を糾弾するうちに意識を失ってしまう。

チャングムも憤りを抑えきれない。だが、この事態をどう収拾すれば良いのだろうか?

第22話 「無念の死」

水剌間(スラッカン)の最高尚宮(チェゴサングン)にハン尚宮(サングン)が任命されるも、納得しないチェ尚宮(サングン)はさらに反攻に出る。それを知ったチョン最高尚宮(チェゴサングン)は憤怒のあまり卒倒、病状から、そのまま宮中を退出することに。ハン尚宮(サングン)はヨンセンとチャングムを供につける。一方、チェ尚宮(サングン)は他の尚宮(サングン)たちに呼びかけ水剌間(スラッカン)での作業をボイコット、ハン尚宮(サングン)を孤立させる。宮中を退出し民家で療養するチョン最高尚宮(チェゴサングン)に、中宗は侍医を遣わす。しかし間に合わず、チョン最高尚宮(チェゴサングン)はあとのことをチャングムに託して息を引き取る。チョン尚宮(サングン)の葬儀を終え、宮中に戻ってきたチャングムはハン尚宮(サングン)を支えようと奮闘、女官見習いや男性料理人らの手を借りて何とか仕事をこなす。一方、あとにひけないチェ尚宮(サングン)も強硬手段に出る。事態は混迷を極め、皇太后も最高尚宮(チェゴサングン)職を任命した自分の決断に迷いを抱き始める。ハン尚宮(サングン)はついに決断し、皇太后にあることを申し出る。

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倒れたチョン尚宮を心配するハン尚宮たち三人のもとにユン・マッケが訪れる。容態が悪化したチョン尚宮を宮外に連れ出すというのである。王族以外の者が宮中で死ぬことは許されていないため仕方のないことではあったが、倒れた直後に診察も受けられないままというのは異例であった。
供をするというハン尚宮だったが、チョン尚宮は彼女を叱りつける。「何を言うかと思えば!お前は水刺間の最高尚宮です。最高尚宮たる者が些細な情に溺れ、水刺間を空けて良いとでも思っているのか!」「・・・こんな時こそ冷静に、油断することなく座を守らなければ。気持ちは私にはよくわかる。不安であろう。恐くもあろう。でも気弱になると小さな山も大きな山に見えるもの。逆に気を強く持てば風もそよ風のように思えるものだ。私はお前を守ってやれなくなるのだから、お前自身が大きな山となり、突風とならなければ」そしてチョン尚宮は秘伝書をハン尚宮に手渡すのだった。
チェ尚宮との板挟みになり、チョン尚宮との別れの日に朝餉すら用意できなかったことを詫びるミン尚宮とチャンイ。チョン尚宮は二人に、そう思うならハン尚宮の力になってやってくれと言い残して去る。自分たちを守ることすらできない二人には荷の重い頼みであったが・・・。
チョン尚宮の病状を悪化させることを企んだ当人であるクミョン。チョン尚宮を見送る彼女の瞳もまた深い悲しみを湛えていた。それは一族の後継者としてのクミョンの限界を示してもいたのだが・・・。
ハン尚宮はチャングムとヨンセンに付き添わせ、チョン尚宮を見送る。第十一代最高尚宮チョン・マルグム。彼女の長い宮中での日々は終わりを告げた。
そして、第十二代最高尚宮ハン・ペギョンの孤独な戦いの日々が幕を開けたのだった。
チョン尚宮が宮を出たとの報せを受けた提調尚宮。「あんなに我を張らなければ、こんなに惨めな最後を迎えることにはならなかったろうに・・・」だがスバル尚宮は言う。「女官の最後は哀れなものと決まっております。お気になさることはありません」
チョン尚宮がいなくなった今、ハン尚宮の味方をする者はない。提調尚宮は大妃にハン尚宮の就任式への出席を全ての尚宮たちが拒否したことを伝える。ハン尚宮自身が競合に参加していないことと、両班の出身ではないことが問題になっているという話を聞き、皇后は大妃の決定を軽んじる行いであると怒る。だが、元々チェ尚宮を推そうとしていた大妃には迷いが生じていた。確かに「両者の競い合いによって決定する」という当初の取り決めには従っていないからだ。
その夜、チョン尚宮の看病をするうちに眠り込んだヨンセンを横に、チャングムとチョン尚宮は水刺間での思い出を語り合う。ヨンセンと出会って初めて母親の気持ちがわかったと言うチョン尚宮。自分にとってチョン尚宮は祖母のような存在だったと言うチャングム。
ハン尚宮に何度も水汲みのやり直しを命じられた幼い日。「ハン尚宮はお前が憎くてそうするんじゃないのよ。だから安心おし」そう言ってチャングムを慰めてくれたのはチョン尚宮だった。
「他の子たちはみんな部屋の尚宮様から料理を習い始めてるのに、ハン尚宮様は何も教えて下さらないんです」「自分より上手くなるのが嫌なのさ」「そんなことはありません!きっと私に自力で学ばせようと考えて・・・」「ふふっ、よくわかってるじゃないか。料理を勉強したいの?」「・・・はい!」「じゃあ、ハン尚宮に見つからないように作っておいで。私が色々教えてあげよう」・・・チャングムという希代の天才を育てた陰の功労者はチョン尚宮だったのである。彼女がいなければチャングムはどこかで挫けていたかも知れない。
チョン尚宮はチャングムに、「自分に替わってハン尚宮を助けてやって欲しい」と頼む。かつて親友ミョンイを失ってから、ハン尚宮は心を閉ざしてしまっていた。だが、心を閉ざしたまま人の上に立つことはできない。初めてハン尚宮の心の壁を崩したチャングムにしか、彼女を助けることはできないのだ。「約束して。ハン尚宮に必ずやり遂げさせると。どんなことがあっても、自分から逃げ出すようなことだけはさせないと、約束しておくれ」必ず成し遂げてみせると約束するチャングム。チョン尚宮は「これで安心だわ」とつぶやいて横になる。
他の全ての尚宮たちから拒否されたハン尚宮はセンガッシたちに手伝わせ、一人で水刺間の仕事をこなしていた。ミン尚宮とチャンイだけは手伝いに来ていたが、二人も他の尚宮たちの手前表だって手伝うことができない。
初めて王の食事を出すに当り、王に挨拶をしようとしたハン尚宮だったが、提調尚宮に邪魔される。王が水刺間の女官が来ていないことに気づくが、提調尚宮はチョン尚宮が宮から下がったことを伝え、巧みに話題をすり替えてしまう。
王のはからいにより、チョン尚宮の元には御医(王の主治医・内医院の最高責任者)が遣わされる。だが、時既に遅くチョン尚宮はこと切れていた。
自分が居眠りをしている間にチョン尚宮が死んでしまったと知り、ヨンセンは悲嘆にくれる。「黙って逝っておしまいになるなんて、絶対に許しませんよ!絶対に、絶対に・・・」
チョン尚宮を荼毘に付す間、ヨンセンは自分も一緒に行かせてくれと泣き崩れる。「尚宮様がいないと、私駄目なんです!もっと尚宮様のお話が聞きたかった・・・もっと足もお揉みしてさしあげたかったのに、私を置いて行かないで下さい、尚宮様・・・」チャングムもトックも彼女にかける言葉が見つからない。
「私は、宮中以外で暮らしたことがない。だから、遺灰は雲の上に撒いておくれ。雨になって、流れ流れて色々なところを見てみたい。世の中を見物してみたいのだよ」散骨するチャングムの脳裏に、チョン尚宮の言葉が蘇る。・・・最高尚宮まで上り詰めた女性の最期の願いとしてそれは余りにささやかだった。
つましい葬儀を終え、ヨンセンとトックとともに宮中に戻るチャングム。チョン尚宮の思い出が幾つも去来する。豪放磊落で暖かい心の持ち主だったチョン尚宮。チャングムが迷い、苦しんでいた時何度勇気づけてくれただろうか・・・。
チャングムとヨンセンが水刺間に戻ると、ハン尚宮が雨に打たれながら大量の大根の山を前にして呆然と立ちつくしていた。ヨンセンはチョン尚宮を喪った悲しみを訴えるばかりだったが、チャングムは即座に水刺間がただならぬ状況に陥っていることに気づく。大根を漬ける日だというのに、尚宮たちも内人たちも誰一人手伝おうとしないのである。
「待っていても仕方がありません。どんなことをしてでも私が終わらせてみせます。ですから尚宮様は早く執務室にお戻りになって下さい」だが、ハン尚宮はその場を動こうとしない。「戻って何をするのよ。何をするの?」「尚宮様!尚宮様は水刺間の最高尚宮なのですよ!」そしてホンイに命じてハン尚宮を執務室に連れて行かせ、代わりにセンガッシたちを連れて来させる。
「さあ、ヨンセン。これ全部私たちでやらないと。さあ、早く」「私できないわ。涙が止まらない・・・」「私だって悲しいの!だけど、これがチョン尚宮様のご遺志なの。ハン尚宮様をお守りすること。それがチョン尚宮さまのご遺言なのよ!・・・やりなさい!」
チャングムは覚束ない手つきの見習いたちをかき集め、何とか作業を進める。
そしてついにチャングムたちは全ての大根を漬け終えてしまう。物陰から様子を伺うヨンノもこれには驚くしかなかった。「・・・あれを一晩で漬けちゃったの!?」
だが、ハン尚宮はすっかり気力を失ってしまっていた。水刺(王の食事)を出すのもチャングムに任せ、自分は大殿に行こうとしない。食事も満足に摂っていないようだ。何か少しでも食べておくよう必死に説得するチャングムだったが、ハン尚宮は聞き入れようとしない。そこに追い打ちをかけるように、チェ尚宮たちの嫌がらせが始まる。
ハン尚宮に伝達事項が届かないようにして失態を演ずるようにし向けたその企みは着実に成果を上げていた。献上品の蟹を腐らせ、会議を欠席し、淑媛(スグォン 王の側室に与えられる官職名で、尚宮の一階級上であるが、側室の階級としては一番低い)の祝宴の献立も決めていない・・・それがチェ尚宮たちの陰謀によるものとは知らない長番内侍は、ハン尚宮の能力に疑問を抱き始める。
事情はどうあれ、三日後に迫った淑媛の祝宴の準備は急がなければならない。一時は完全に無気力になっていたハン尚宮も、チャングムに説得され、各部署の尚宮たちを招集して会議を開くことにする。「まさか淑媛様の祝宴を無視はできないでしょう」チャングムとヨンセンは手分けして全ての尚宮に声をかけて回るのだが・・・。
ミン尚宮とチャンイから、チャングムは他の尚宮たちが誰一人会議に出席する気がないことを知る。しかも、こっそりハン尚宮を手伝っていたことが知られ、二人の立場も悪くなっているという。
だが、淑媛の祝宴を無視するというのは、チェ尚宮一派の尚宮たちにとっても賭けであった。敢えて問題を大きくすることで、大妃に自分たちの主張を伝える。それがチェ尚宮の狙いであった。全ての尚宮を処罰することができない以上、大妃はハン尚宮を退任させる決断をせざるを得なくなるはずだ。
ハン尚宮は仕方なく、外部から熟手(スクス カン・ドックのような男の料理人)を雇い入れて祝宴の準備をさせてくれるよう長番内侍に申し出る。前例のないことではあったが、尚宮たちが従わぬ以上他に方法はなかった。
事情を知った長番内侍は提調尚宮に抗議するが、これは厨房の問題ではなく女官の問題であり、内侍府の介入すべき問題ではないと一蹴されてしまう。それどころか、事態を短期間に収めるために、最高尚宮の座を降りるようハン尚宮を説得してくれと頼まれる始末である。
チェ尚宮は祝宴の準備を拒否するだけではなく、祝宴への出席もさせぬよう尚宮たちに指示していた。「関係者全員を処罰することはできない」というのがこの策の拠り所だったのだが、チェ・パンスルは不安げであった。
その頃、ミン・ジョンホはチェ・パンスルとオ・ギョモの関係を同僚から聞き出していた。宮中にはびこる不正の根の深さに、彼は愕然とする。
無事祝宴の準備を終えて安心したのも束の間、チェ尚宮から祝宴に出席してはならぬとの指示が出たことをミン尚宮とチャンイが報せに来る。弱り切ったミン尚宮は、思いあまってハン尚宮に折れて欲しいと頼んでしまう。
チェ尚宮の元に集まっている尚宮たちに抗議するハン尚宮だったが、彼女たちが聞き入れるはずはない。ハン尚宮は八方塞がりの状況に追いつめられる。
淑媛の祝宴が始まる。水刺間から挨拶に上がったのはハン尚宮のみ。ハン尚宮はこの上ない屈辱を味わうことになった。
淑媛を通じて、事態は大妃の知るところとなった。最高尚宮の交代を願い出る提調尚宮。そして、その場に居合わせたオ・ギョモも「下の者から尊敬を得られぬ者は長ではない」と口添えする。大妃は中殿ともう一度相談してみることにする。
ついにハン尚宮は、最高尚宮の座を降りると言い出す。チャングムはハン尚宮を止めようとするが、ハン尚宮も譲らない。「お前は、私一人のために宮中が滅茶苦茶になるのを見ていろと?」「正せばよろしいのです!」「無理だとわかっているだろうに!」
「いいえ!まだ何もなさっていません。チョン尚宮様が亡くなってからまだ何も。ハン尚宮様は何のお仕事もなさっていません」「今の私は何もできない人間なの」「それは言い訳です。今の辛さから逃れるための言い訳です」「言い訳でも構わない。私は座にこだわる気はない」そしてチャングムは、今のハン尚宮は最高尚宮の座についてもおらず、チョン尚宮の志を継いでもいないのに諦めて投げ出そうとしていると責める。
孤独な戦いを強いられ、全てを投げ出しかけていたハン尚宮にチャングムは切々と語る。両親を早くに亡くし、宮中で一人生きてきたチャングムにとって、ハン尚宮は母であり師匠であった。「私は、諦めてものごとを投げ出してしまう母は嫌いです。努力もせず志を捨ててしまう師匠は嫌いです!もし、この部屋をお出になった後、身を引く旨をお伝えにいらっしゃるのなら、私は・・・絶対に尚宮様を許しません!」
弟子の叱咤を受けて、大妃の元へと向かうハン尚宮・・・。
ハン尚宮の処遇について皇后と話し合っていた大妃の元に訪れたハン尚宮は、もう一度競合をさせて欲しいと申し出る。しかも、それは単なる競合のやり直しではなかった。もしハン尚宮が勝ったら、水刺間の女官に対する全権を委ねて欲しいというのだ。例え厨房の尚宮全てを処罰し、内人しか残らないことになっても事態を鎮めてみせると言い切るハン尚宮。
チャングムはついにハン尚宮の心を動かしたのだ。

第23話 「横領発覚」

競合のやり直しを皇太后に提案したハン尚宮(サングン)。さらに、自分が勝った場合には、事態収拾のため全権を与えてくれるよう申し出る。賛同する皇后を見、皇太后は今後の采配を皇后に委ねることに。再競合の課題は「炊飯」。各厨房の尚宮(サングン)たちが試食し、多数決で決めることになる。クミョンは炊飯の秘技をチェ尚宮(サングン)に伝える。母の日誌から、かつて母が友人とともに埋めた甘酢の存在を知ったチャングム。甘酢を探し出し、母の友人に宛てた手紙を甘酢の瓶に入れる。チョンホは極秘にすすめている横領疑惑調査のため、内禁衛(ネグミ)から司憲府(サホンブ)に異動。さらなる調査のため、チョンホはハン尚宮(サングン)にあるお願いをする。新しい最高尚宮(チェゴサングン)のもと水剌間(スラッカン)新体制が発表され、ある役職が復活することになる。

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「全権を与えて欲しい」というハン尚宮の言葉に、大妃もさすがに驚く。だが中殿は、尚宮たちが反発している本当の理由がハン尚宮の身分の低さにある以上、全権を与えなければ競合をやり直しても意味がなく、むしろハン尚宮に全権を与えることで宮中に秩序が戻るのではないかと大妃に進言する。大妃もこれに納得し、ハン尚宮の望みは聞き入れられた。
そして、大妃はこの件の処理を中殿に任せる。「思えば今まで老獪な尚宮たちや側室たちに囲まれて、中殿は独りで辛いことが数多あったに違いない。しかし、太平館のことにしても、今回の水刺間のことにしても、立派な意見を持っている。内命婦(ネミョンブ 尚宮などの品階を与えられた女官の総称)を仕切るのは元々中殿の役目、これからは中殿に任せます。私に気兼ねせずおやり」チェ尚宮一派にとって、これは全く予想外の出来事であった。
中殿は全ての尚宮と内人たちを訓育場の庭に集合させる。自分たちの希望が聞き入れられたものと思った尚宮たちは意気揚々とその場に向かうが、大妃とともに現れた中殿は彼女たちが大妃の決定に異を唱えたことを厳しく叱責する。だが、中殿もハン尚宮が直接競合をしていない点に問題があることは認め、改めてその場でハン尚宮とチェ尚宮の競合を行うことを宣言する。
今度こそ勝った方に従うことを尚宮たちに約束させ、中殿は「最後の課題」を二人に与える。それは「ご飯」であった。ハン尚宮とチェ尚宮だけを残し、中殿は他の尚宮と女官たちを引き連れてその場を去る。
他の内人たちと一緒に競合の現場から立ち去ることを命じられたクミョンであったが、こっそり厨房に入ると、ホンイを呼んでチェ尚宮に何かを届けさせようとする。それを見れば、チェ尚宮はクミョンが考え出した炊飯の方法を思い出すはずだというのだ。果たしてクミョンが考え出した方法とは・・・。
中殿は尚宮たち自身に今回の審査をさせる。ただし、ハン尚宮とチェ尚宮が炊いたご飯を真鍮の器と白磁の器に盛り、どちらがどちらの器のご飯を炊いたのかは知らせず、結果も個人個人が紙に書いて提出するという方法が取られた。これで勝者を決めれば、尚宮たちには競合に口を差し挟む口実がなくなる。
中殿から感想を訊かれた尚宮たちは、口々に白磁の器のご飯を誉める。歯ごたえと柔らかさを併せ持ったそのご飯を炊いたのはチェ尚宮であった。チェ尚宮は釜の蓋に重石を置き、更に蓋の縁を練り米で塞ぐという、今日の圧力釜と同じ原理を用いて米を炊いていた。これがクミョンの考え出した方法だったのである。
だが、尚宮たちが美味しい方を記した紙を集計してみると、白磁の器が5名に対し、真鍮の器が9名。ハン尚宮の圧勝であった。尚宮たちは、白磁の器のご飯の美味しさは認めつつも、自分の好みに合う方を選んでいたのだ。だが、ある者は「堅めのご飯が好きなので・・・」と言い、またある者は「柔らかめの方が好きなので・・・」とその理由を述べる。同じ釜で炊いたご飯に対する感想としては余りに不自然であった。
実はそこにハン尚宮の工夫があった。ハン尚宮は釜の中に器を入れて水に浸かる深さを調節することにより、一つの釜の中でご飯の堅さを変えていたのだ。堅めのご飯を好む王と、柔らかめのご飯を好む中殿を、同時に満足させるためにハン尚宮はこの方法を編み出していたのだった。そして、ハン尚宮は幼い頃から一緒に過ごしてきた尚宮たち全員の好みを覚えており、一人一人の好みに合わせたご飯を出していた。この心配りには中殿はもちろん、ハン尚宮を拒否していた尚宮たちも胸を打たれた様子であった。
ハン尚宮は改めて最高尚宮に任命された。尚宮たちの処遇は中殿より全権を委任されたハン尚宮の判断に任され、提調尚宮も当面水刺間に関与せぬことを命じられる。
チェ尚宮と、チェ・パンスル商会に関わる人々にとっては致命的な事態であった。司?院を通して宮中に入ってくる食材を最も大量に消費する水刺間にチェ一族の力が及ばなくなれば、食材の購入に絡む利権を得ているオ・ギョモにも不利益が及ぶ。
目に涙を浮かべて悔しがるチェ尚宮。「私の代で我が一族の名誉を途絶えさせるなど、許さない!許さないわ!・・・」
とりあえず窮地は脱したものの、最高尚宮に全権を委任するのは異例中の異例であり、長期間に亘って継続することはできない。中殿は一刻も早く人心を掌握するようハン尚宮に命じる。
やっとハン尚宮の任命式が行われ、ハン尚宮は第十二代最高尚宮となった。それぞれに異なる涙に目を潤ませてその姿をみつめるチャングムとクミョンであった。
チャングムとともにこのことをチョン尚宮の霊に報告するハン尚宮。その脳裏にチョン尚宮の言葉が蘇る。「・・・広い心で慈しみなさい。やり方を押しつけず、下のものの意見にも耳を貸しなさい。これが私からお前に送る餞の言葉だ・・・」
「チョン尚宮様、見守っていて下さい。必ずやり遂げてみせます」「・・・おや、やらないつもりだったのかい?」ハン尚宮には悪戯っぽく笑ってからかうチョン尚宮の声が確かに聞こえていた。
そしてそんなハン尚宮を見つめるチャングム。彼女の耳にもチョン尚宮の声は聞こえていたのかも知れない。
「・・・最高尚宮になられたお姿を一目チョン尚宮様にお見せしたかったです」「きっとご覧になったわよ。チョン尚宮様のことだもの、あんなに面白い見せ物をお見逃しになるはずがないわ」
帰り道、チャングムはハン尚宮に「寄っていきたいところがある」と言う。それは母ミョンイの墓だった。
「お母さん、私が母のように思い慕うハン尚宮様です。お綺麗な方でしょ?ねえ、お母さん、最高尚宮になるまでは誰にもお母さんの手紙を見せてはいけないと仰いましたね。でも、ハン尚宮様だけにはお見せしたいのです。いけないでしょうか?」
「お前を私に下さるため、早くに旅立たれたのかも知れない・・・」それが親友ミョンイの墓であることを、ハン尚宮はまだ知らない・・・。
改めて任命式を終えたハン尚宮は、最初の料理として競合で出すことができなかった八卦湯(パルガタン)を用意する。冬虫夏草を刻んでいたハン尚宮にチャングムがふと口にした言葉に、ハン尚宮はと胸を突かれて振り返る。「冬虫夏草ってなんだか悲しいですよね。だって、冬は虫で夏は茸だなんて」それはかつてミョンイがハン尚宮に言った言葉そのままだった。
ハン尚宮が料理を出すために大殿に向かった後、チャングムはこっそり母の飲食抜記を開く。そこには「冬虫夏草は何故か悲しい。なんとなく似ているわ」という記述があったのだ。
初めて王の食事に立ち会うハン尚宮に、かつてチョン尚宮がそうしていたように、面白い話も聞かせてくれと頼む王。その頼みにハン尚宮は奇妙な返答をする。「私も尚宮たちや女官たちをせっついてみます」チョン尚宮は王にする話の材料を、尚宮たちに尋ね回っていたというのである。チョン尚宮はそうして女官たちの教養を高めさせていたのであった。「私にはチョン尚宮様のように面白おかしく話す才能はございませんが、女官たちをせかす才能はございます故、お話をたくさんお聞かせ致します」ハン尚宮の機知に富んだ受け答えに、王は満足げであった。また、炎症を抑える効能のある冬虫夏草を使った八卦湯は、胃炎と口内炎に悩む王を喜ばせる。
チャングムは母の甘酢の壺に、「母の親友」に宛てて是非会いたいと記した手紙を入れておく。ハン尚宮とチャングムがお互いのことを知る日が近づいていた。
壺を元通りに埋めて戻る途中、チャングムはミン・ジョンホに出会う。彼は一連の横領事件を調査するため、内禁衛(ネグミ)から司憲府(サホンブ)に異動していた。司?院の監査などでチャングムに協力してもらうこともあるかも知れないと言うミン・ジョンホに、チャングムは「やっと今までのご恩をお返しできます」と快く応じるのだった。
だが、ミン・ジョンホの調査は容易には進みそうもない。着任早々司?院のパク・プギョムに帳簿を見せて欲しいと願い出て調べてみるのだが、オ・ギョモの腹心であるパク・プギョムが帳簿にそれとわかる痕跡を残しているはずもない。それどころか、パク・プギョムは司憲府の長官との繋がりをそれとなく仄めかす。
内禁衛将もミン・ジョンホのやり方には懸念を持っていた。オ・ギョモやチェ・パンスルは、簡単に証拠をつかませるような相手ではなく、むしろこちらが探りを入れていることを悟られ、ミン・ジョンホの身が危険に晒される可能性もある。だが、ミン・ジョンホの狙いはまさにそこにあった。相手がこちらの動きに反応したところを押さえようというのである。
ミン・ジョンホはハン尚宮に協力を要請する。ハン尚宮もその要請に応じて「一つ、それを調べる良い方法がございます」と答えるのであった。
尚宮たちの配置を決める当日、チェ尚宮に同調した者たちの処遇は誰もが気にするところであった。常識的には処罰すべきところであるし、何事もなく済むとは思えない。一人ヨンセンだけは、それを材料にヨンノをいじめることができるのを喜んでいたが・・・。
チェ尚宮はハン尚宮に、自ら醤庫に行くと申し出る。その代わり、クミョンは水刺間に残して欲しいというのが彼女の望みであった。
ハン尚宮は自分がチョン尚宮の志を受け継ぐことを宣言する。その上で、新たな配属先を発表するが、配置換えとなったのは醤庫に行くチェ尚宮と、その異動に伴う欠員補充要員のみで、その他の尚宮は留任となった。ほっとする尚宮たち。そしてまた、ハン尚宮は燕山君の時代に有名無実化して消滅していた役職、「出納係」を復活させることを告げる。これがミン・ジョンホの要請に応えたハン尚宮の策であった。
この出納係はチャングムに任されることになった。
懲罰人事も行われず安心はしたものの、尚宮たちは「出納係」を置いた意図を量りかねていた。ハン尚宮が何を狙っているにしろ、当分の間食材の横流しは止めておこうというところで皆の意見は一致するのだが・・・。
そういう心配事とは無縁に、ミン尚宮は今回の人事異動で自分よりも年下の尚宮が水刺間に入ってくることを無邪気に喜んでいた。だが、年下の尚宮とは言っても料理の腕には定評があるだけに、チャンイ、ヨンセン、ヨンノの三人は今ひとつ調子を合わせ切れない。
料理から離れて帳簿付けをやることにチャングムは不満だった。だが、ハン尚宮がこの仕事を安心して任せられる女官はチャングム以外にいない。ハン尚宮の、「私が信頼して任せるのだから頑張りなさい」という言葉にチャングムは笑顔で応える。
クミョンは醤庫にチェ尚宮を訪ね、二人が生きている限り必ず機会はあると励ます。また、兄チェ・パンスルもひたすら身を低くして時を待てと妹を諭すのであった。つい先日まで彼女に阿諛追従していた尚宮たちも皆彼女を避けるようになり、その屈辱にチェ尚宮は「必ず巻き返してみせる」と決意を新たにする。
チャングムの出納係としての仕事が始まった。各部署を回り、食材の出入りを入念に調べるチャングム。
一方、ミン尚宮は大妃の兄の誕生祝いに、宴席に出向いての調理を任される。彼女の串焼きの腕を見込んでハン尚宮が下した決定であった。最初は及び腰だった彼女も、チャンイ・ヨンセン・ヨンノを引き連れて臨んだ現場で下へも置かぬ扱いを受け、次第に「尚宮らしい」態度を取り始める。やや芝居がかってはいたが・・・。一番年下の尚宮としてとかく卑屈になりがちだったミン尚宮。彼女に自信をつけさせることがハン尚宮の目的だったのかも知れない。
また、この出張調理はチャンイにとって、宮中に上がって以来初めての外出であった。初めて触れる宮外の空気に興奮気味のチャンイ。

市場で装身具を物色する四人。ミン尚宮には贈り物でハン尚宮に取り入ろうという意図もややあるようだ。そこにトック夫妻が通りかかる。愛想良く声をかけるトックだったが、そこで彼がヨンノに相場の三倍もの値段で品物を売っていたことと、売値を妻に対して安く伝えていたことが同時に発覚してしまうい、窮地に陥るトック。だが、同じその頃、宮中ではトックの不正などとは比較にならないほど大規模な不正が明かされつつあった。

厨房の食材は司?院からの支給を受け、余った分は返納しなければならない。出納係を設けたとたん、水刺間以外の部署から返納された食材の量が倍に増えてしまったのである。即ち、従来は返納分とほぼ同量の食材が行方不明になっていたということだ。これには長番内侍も激怒する。尚宮たちは以前からの慣行に従って皆で分け合っていたというのだが、明らかに尚宮たちが出納係の設置を警戒して横流しを止めたために発生した事態である。
チャングムはミン・ジョンホに協力して帳簿の確認作業を続けていた。先代王、燕山君の時代に連日宴会が催されていた関係で厨房に入る食材が急激に増えたのだが、中宗が倹約に努めたにも関わらず食材の納入量は減っていないことが判明する。
ハン尚宮とともにその報告を受けた長番内侍は、尚宮たちに厳罰を与えるべきだと主張するが、ミン・ジョンホは厨房以外でも横流しが一般的に行われていることを説明し、黒幕を突き止めるべきだと長番内侍にも協力を要請する。
自ら墓穴を掘った恰好になった尚宮たちは、提調尚宮に相談を持ちかける。提調尚宮もそれほど大規模な横領が行われていたとは知らず、思わず声を荒げる。だが、尚宮たちは動じない。彼女たちが横領した食材は、提調尚宮への賄賂に使われていたからだ。尚宮たちと提調尚宮は既に一蓮托生だったのである。
これまで彼女たちの不正が表面化しなかったのは、チェ尚宮の存在によるところが大きかったことを提調尚宮も悟る。もはやチェ尚宮に助けを求めるしかなかった。せめてハン尚宮がどこまでの事実を掴んでいるのかは知る必要がある。チェ尚宮にとっても、提調尚宮が失脚するようなことになれば再び実権を握ることはできなくなるため、チェ尚宮も提調尚宮に協力するしかない。それは裏を返せば、協力関係が成り立つのはチェ尚宮が再び実権を握るまでだということでもあったのだが・・・。
チェ尚宮はクミョンとヨンノに命じて、ハン尚宮とチャングムの周辺を探らせる。ヨンノはチャングムが毎夜遅くまで何か調べものをしていることに目をつけていた。
翌朝、ヨンノはチャングムとヨンセンが部屋を出た後、こっそりチャングムが調べていた書類を盗み出す。それをチェ尚宮の元に届けるが、中身は全てただの帳簿であった。しかも数十年前のものまである。ハン尚宮の意図がどこにあるのか訝しむチェ尚宮。
だが、その帳簿の中の一冊に、チャングムは母の飲食抜記を挟み込んでいた。帳簿の中から落ちた飲食抜記を手に取るチェ尚宮・・・。
部屋に戻って帳簿類が消えていることに気づくチャングム。「お母さんの飲食抜記が・・・!」

第24話 「危機迫る」

チェ尚宮(サングン)に指示され、チャングムの帳簿を盗み出したヨンノ。その中にはチャングムの母ミョンイの日誌もあったが、チェ尚宮(サングン)はそれと気付かず返却させる。ヨンノは料理の秘訣が書かれた日誌と知り、盗み見しているところをハン最高尚宮(チェゴサングン)に取り上げられる。その日誌を見たハン最高尚宮(チェゴサングン)は一目で親友ミョンイの日誌と知る。一方、ヨンノはハン最高尚宮(チェゴサングン)に見つかったことをチェ尚宮(サングン)に報告。その様子から、チェ尚宮(サングン)もその日誌を書いた人物に思い当たり、さらにそれを持っていたチャングムの素性を悟ることに。衝撃に震えるチェ尚宮(サングン)をクミョンが支える。一方、宮中物資の横流しは司憲府(サホンブ)を通じて中宗に報告される。危機感を募らせたオ・ギョモらは、自分たちを脅かす人物がチョンホであることを突き止め、チョンホ追放を画策。それを知ったクミョンは密かにチョンホを呼び出す。

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ミョンイの飲食抜記に目を通すチェ尚宮。だが、彼女はチャングムに勉強させるためにハン尚宮が自分の日誌を読ませているものと考え、特に深く追求しようとはしなかった。チャングムが調べていた帳簿類にも特に問題となるような記述がないことを確認したチェ尚宮は、ヨンノに帳簿類と飲食抜記を元の場所に戻しておくよう命じる。
チャングムは帳簿が無くなったことをハン尚宮に報告する。さして慌てる様子もなく、大したことの書かれていない帳簿だからすぐに戻ってくるだろうと言うハン尚宮だったが、ヨンセンはヨンノを疑う。
ハン尚宮の予想通り、ヨンノはこっそり帳簿を戻しに来る。だが、運悪く丁度部屋に戻ってきたチャングムと鉢合わせになってしまう。チャングムは帳簿の中を調べるが、そこに挟み込んでおいたはずの飲食抜記がない。ヨンノを問い詰めても白を切るばかりで一向に埒が明かない。
ミョンイの飲食抜記はヨンノが隠し持っていた。ハン尚宮がチャングムに勉強させるために与えたものであろうというチェン尚宮の憶測を真に受け、自分もそれを読めば料理の腕が上がると勘違いしたのだ。退膳間の夜食当番で、ハン尚宮とヨンセンが夜食を届けに出た間にこっそり飲食抜記を読むヨンノ。だが思いの外早く戻ってきたヨンセンに見つかってしまう。
更に間の悪いことに、二人で飲食抜記の取り合いをしているところにハン尚宮が戻って来てしまう。二人から飲食抜記を取り上げたハン尚宮は中身を見ると血相を変えてそれがどこにあったのかヨンノに尋ねるが、ヨンノは水刺間に来る途中で拾ったと言い張る。ハン尚宮はそれ以上問い詰めようとはせず、退膳間を出て行ってしまう。ハン尚宮にはそれがミョンイの筆跡であることが一目でわかったのだ。
「ミョンイが、私にも隠し場所を教えてくれなかった飲食抜記・・・。あれだけ探したのに見つからなかったものが今になってどうして出てきたの?」
ヨンノは自らの失敗をチェ尚宮に報告する。ヨンノはハン尚宮の反応から、あの飲食抜記がハン尚宮のものではないことに気づいており、チャングムが飲食抜記が紛失したことを誰にも話していないのにも不自然さを感じていた。飲食抜記は誰のものなのか。そして、何故チャングムがそれを持っていたのか・・・。ヨンノの失敗から、チェ尚宮にとって思いも寄らぬ事実が明らかになろうとしていた。
チェ尚宮は飲食抜記の持ち主が誰なのかを考えていた。古さから考えて、自分とほぼ同時期に宮に入った尚宮のものである可能性が高い。該当しそうな人物を一人一人思い出していくうちに、ついにチェ尚宮は本当の持ち主に気づく。

飲食抜記がいつ頃で終わっていたか、ヨンノに確認するチェ尚宮。それに燕山君の時代、燕山君と現在の王にとっての祖母、仁粋(インス)大妃の誕生祝いの時期だったと答えるヨンノ。もう間違いない。あの飲食抜記はミョンイのものなのだ。

ではミョンイの飲食抜記をチャングムが持っていたのは何故か。・・・チェ尚宮は今全ての真相を悟った。何故チェ・パンスルの手下ピルトゥは男の子だったはずのミョンイの子が宮に上がったらしいなどと言ったのか。何故チャングムは幼い頃から卓抜した能力を発揮していたのか。そして呪い札事件の際に退膳間でチャングムが探していたものは何だったのか。
チェ尚宮はクミョンに、苦渋に満ちた表情で全てを打ち明ける。かつて、仁粋大妃を暗殺しようと食事に毒物を混ぜていたところをミョンイに目撃され、濡れ衣を着せて殺したことや、何故か生き延びて再び都に現れた彼女を兄パンスルに頼んで始末してもらったこと。そして、そのミョンイの娘がチャングムであることを。
状況を冷静に分析したクミョンは、ハン尚宮とチャングムはまだお互いの関係に気づいていないことを指摘し、二人が事実を知る前に引き離してしまうべきだと主張する。
母の遺した手紙が無事なことを確認し一応は安心するチャングムだったが、あの飲食抜記を誰かに読まれたら母のことが知られてしまう。このことをハン尚宮に打ち明けるべきか悩んだ末、チャングムは「母の親友」に相談しようと決意する。だが、柿酢の壺に隠した手紙が読まれた形跡はなかった。
とはいえ、それで挫けるチャングムではない。彼女は出納係という立場を利用し、各厨房にある酢を一つ一つ確かめて回るのだった。
その頃、チャングムが隠した真鍮の箱を掘り出している者があった。その中には母の手紙が納められている・・・。
一方、水刺間の出納係が復活して以来、司?院のオ・ギョモやパク・プギョムは苦しい立場に置かれていた。出納係が物資の監査を行い始めた途端、消費量が半減してしまったことが内侍府から司憲府に伝わった以上、彼らが厳しく罰せられる可能性もある。
オ・ギョモたちが危惧した通り、司憲府は王に上訴する。訴状を読んだ王は激怒し、チェ・パンスル商団だけに王宮との取引を独占させることを禁ずる。
例によってユン・マッケの料亭で密談を交わすオ・ギョモ、パク・プギョム、チェ・パンスルの三人。本来なら、厨房で不正が発覚した場合はまず司?院に報告があるはずである。しかし、今回は内侍府から司?院を経ずして司憲府に報告されている。オ・ギョモたちが作り上げた利権構造を意図的に崩そうとしている者があるとしか考えられなかった。
チャングムが四阿に隠していた母の手紙を盗み出したのはヨンノだった。そしてその手紙はクミョンを通じてチェ尚宮の手に渡る。最も真相を知られてはならない相手に・・・。
一方、パク・プギョムはミン・ジョンホが横領に関わる部署全てを調べていたことを突き止めていた。
カン・ドックとミン・ジョンホが知己の仲であることに目をつけたパク・プギョムは、カン・ドックからミン・ジョンホを巡る人間関係を聞き出そうとする。そんなこととは知らぬトックは、ミン・ジョンホがチャングムやハン尚宮とも知り合いであることを話してしまう。
一連のミン・ジョンホの行動に、司憲府の長官が関わっていないことを確認したオ・ギョモは、ミン・ジョンホが手柄を立てようとして先走ったものと判断する。内禁衛将は利に聡い方ではなく、ミン・ジョンホを使ってオ・ギョモを陥れようとするとは考えられないからだ。ミン・ジョンホの弱みを探り出して宮中を追い、更にハン尚宮を片づけてしまえば事態は収拾に向かうだろう。・・・内禁衛の動きを悟られぬようオ・ギョモの身辺を洗うという内禁衛将の作戦は成功していた訳だが、その代わりミン・ジョンホとハン尚宮の身が危険に晒されることになった。
ミン・ジョンホを陥れることで横領問題に片を付ける見込みが立ち安心したのも束の間、チェ・パンスルはチェ尚宮からチャングムの素性を聞き、更にミョンイが遺した手紙を読んで愕然とする。この手紙が公になるようなことがあれば、チェ一族の地位を保つことはもはや不可能だ。だが今となってはハン尚宮を害する危険を冒すこともできず、手の打ちようがない。
ミン・ジョンホが狙われていることを知ったクミョンは、その夜思いあまって彼呼び出し、翻意を促す。「ご自分を大切にお思いなら、どうか、どうかオ・ギョモ様の側におつき下さい!」
「何を仰るかと思えば、無駄なことです。例え官職を剥奪され、宮廷から追われることになろうとも、それだけはできません。・・・クミョンさんは、例えチェ・パンスルの姪御さんであっても、チェ・パンスルやチェ尚宮様とは違うと思っていました。まさか、最高尚宮の座が欲しいためにハン尚宮様を攫って監禁したり、利権を得たいがためにオ・ギョモ様と結託して不正を働くはずがないと」
「私も悩んだのです。でも悩む私を、誰も助けてくれませんでした。一人では苦しすぎたのです!苦しみを分かち合いたくとも、側に誰もいてくれない・・・その孤独がわかりますか?結局私の居場所は、一族の中だけでした」
そして雲岩寺にミン・ジョンホを追いかけて行った時、彼とチャングムの関係を知ったことを話すクミョン。「私の一言で、チョンホ様は官職を剥奪され、チャングムも重い罪に問われて命をもって償うことになります!それでもご意志を貫くおつもりですか?」
ミン・ジョンホに背を向け立ち去るクミョンの目には涙が光っていた。「ご無事を願う一心で、脅迫まがいのことまで口にしたけれど、もしここで引き下がる決心をなさるのなら、それはチャングムのためなのでしょうね。私の想いは、どこへ行けば良いのですか?」
翌朝、オ・ギョモはパク・プギョムからミン・ジョンホに関する報告を受ける。ミン・ジョンホは急遽内禁衛に呼び戻され、密偵対策のために地方に派遣されたというのである。国防のために地方に下った人間に手を出すのはオ・ギョモの立場を却って悪くする可能性があるため、オ・ギョモも深追いはしなかった。
無論これは内禁衛将がミン・ジョンホの身の安全を図って出した辞令である。ミン・ジョンホは直接この問題に関わらず、より確実な証拠が得られるまで、部下を使って密かに内偵を進めることにする。
クミョンは、ミン・ジョンホが今回の件で左遷されたのではないかと心配するチャングムと、彼女を安心させようと真相を隠したまま去るミン・ジョンホの姿を偶然見かける。ミン・ジョンホを救うことはできたものの、クミョンの心中は穏やかではなかった。
各部署で次々と不正が暴かれ関係者が処分される中、ハン尚宮は横領を働いていた尚宮たちの罪を不問とした。その代わり今後自分に協力して欲しいというハン尚宮に、かつて彼女を排除しようとしていた尚宮たちも従順な態度を見せる。ただ一人、チェ尚宮を除いて。
醤庫で悔しさを噛みしめるチェ尚宮の元に、思い詰めた表情でクミョンがやってくる。「最高尚宮様とチャングムのこと、私にお任せ下さい。いずれは、通らなければならない道です」
何かをヨンノに耳打ちするクミョン。その言葉を聞いたヨンノの顔に恐怖の表情が浮かぶ。「本気!?本気でそんなことを・・・!」クミョンは一体何をしようというのだろうか。
自分は過ちを咎められ宮中から追い出されたというのに、ハン尚宮が他の尚宮たちの罪を不問に付したことが意外だったと語るチャングム。それに乗じて自分も二か月間続けて来た出納係から解放して欲しいと頼むチャングムに、ハン尚宮は元々二か月間だけのつもりだったことを打ち明ける。再び料理に戻れることを喜ぶチャングム。ハン尚宮も嬉しそうだ。
だが相変わらず母の親友が誰なのか、手がかりは得られない。厨房の酢を全部調べてみたがあの柿酢はどこにもなく、壺に隠した手紙もそのまま残されている。チャングムはハン尚宮に全てを打ち明けるべきか悩んでいた。
水刺間に戻ったチャングムは、そこに見慣れない器が置かれているのに気づく。既に空になっていたが、母の柿酢の香りと味が残っている。「そうよ!水刺間を調べるのを忘れていた!」それはハン尚宮が酢の物を作った時に使った器だった。
ハン尚宮の酢の物を食べた王はハン尚宮に問う。「これも何十年ものの柿酢を使ったのか?」だがチャングムが競い合いであの柿酢を使っていたことを知らないハン尚宮は、何故王がそのことを知っているのか不思議に思う。
チャングムは器の持ち主を探して退膳間に向かったが、ハン尚宮とミン尚宮は王の御膳を出した後で既に退膳間を立ち去っていた。再び水刺間に戻るとあの器がなくなっている。ハン尚宮が柿酢を補充するために持って行ってしまったのだ。慌ててその場に居合わせたミン尚宮に尋ねるチャングム。「あの、ここにあったお酢は?」「ああ、最高尚宮様手作りのお酢ね」
「・・・・最高尚宮様のお酢?」
ハン尚宮もまた、チャングムの手紙を手にする。
ハン尚宮の元に急ぐチャングム。
そしてチャングムの元へと走るハン尚宮。二人はようやく本当に出会ったのだ。
「チャングム!」
「最高尚宮様!」


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