5〜8話


第5話 「変革」

女官見習たちの定期競技。クミョンの提案で急きょ課題が「松の実刺し」に変更になる。その結果チャングムは2番の成績をとったが、クミョンに松の実刺しを教わっていたことが皆にばれて裏切り者扱いされてしまう。パク・ミョンイの娘の消息が気になるチェ尚宮(サングン)は、何かと情報通のカン・ドック夫妻に探りを入れる。チャングムのことを聞かれ、機転を利かせるトックの妻。夜、水剌間(スラッカン)の女官を対象に抜き打ちの持ち物検査が行なわれる。その夜はオ内人が恋仲のカン衛兵との逢瀬(おうせ)を約束した夜だった。一方、水剌間(スラッカン)のチェ最高尚宮(チェゴサングン)は、男性禁制の宮中に密かに医者を呼び寄せていた。宮中の診察を受けるとその結果はみなが知るところとなり、体調不良の程度によっては辞職を迫られるため、秘密裏に診察をうけようと企んでいたのだ。診察の最中、抜き打ち検査の報告に女官長が最高尚宮(チェゴサングン)の部屋を訪れる。そして新しい最高尚宮(チェゴサングン)のもと、月日は流れ、チャングムは18才になっていた。

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水刺間の仕事が終わった後、センガッシたちが競合のため、一室に集められていた。一人遅れて現れたクミョンの姿を見て驚くチャングム。それはあの夜松の実刺しのコツを教えてくれた少女であった。着席するや、クミョンは試験官を務めるチェ尚宮に課題を変更して欲しいと申し出る。自分が贔屓されているから競合で勝てるのだという誤解を解くため、自分がやったことがなく、他のセンガッシたちがいつもやっている松の実刺しで競わせて欲しいというのである。チョバンたちは喜ぶが、クミョンはその代わりに灯りを消して競うことを提案する。暗闇の中でやれば、松の実刺しによってどれくらい指先の感覚が養われているかを見ることができるため、チェ尚宮も納得する。
チャングムと、チャングムからコツを教わっていたヨンセン以外のセンガッシたちは、目に頼らずに松の実に松葉を刺す練習などしたことがなく、皆途方に暮れる。結果はクミョンが20個、松の実刺しなら勝てると豪語していたチョバンは4個。そしてチャングムは8個でクミョンに次ぐ成績を収めたのである。一同を叱るチェ尚宮。一般のセンガッシたちへの手本としてクミョンを競合に参加させていたのに、チェ一族の身内贔屓を疑いクミョンを妬んだことは、自らの実力を磨こうとしなかったばかりでなく、最高尚宮とチェ尚宮を侮辱したことにもなるからだ。だが、クミョンは実際に自分の実力を見せことたがなかったのだから誤解するのも仕方がないと、他のセンガッシたちを許してくれるようと頼む。そして、一位の褒美である三日間実家に帰る権利も二位のチャングムに譲ると言い出す。
黄砂事件の際の功績に続き、優秀な成績を収めたことでチェ尚宮に褒められるチャングム。「やはり母上の教えか?」と尋ねるチェ尚宮に、チャングムはクミョンからやり方を教わったことを正直に話してしまう。このことで、他のセンガッシたちのやり場のない不満がチャングムに向かい始める。
自分の犯した失敗に気づいた時には既に手遅れだった。水刺間でのチャングムの立場は一気に悪くなってしまった。ハン尚宮はチャングムを諭す。「だから宮中に上がったその時から口を慎めと教えているでしょう」「私のこの口、いつも失敗の元なんです」
チャングムは、クミョンから譲られた三日間の帰宅権を更にヨンセンに譲ってしまう。以前からヨンセンが母親の病気を気にしていたからだ。ヨンセンを見送った後、チャングムは偶然クミョンに出会う。「よかったじゃないの。私は誤解が解けたし、あなたはうちに帰れるし、あの子たち思い知っただろうし」「よくありません。クミョンお姉さんはよかったけど、私はのけ者にされるし、お姉さんたちは機嫌が悪いし」「だったら、これからはそんな人たちより私と仲良くすれば?これからは私が面倒見てあげる。何かあったら私に言って来なさい」「お断りします」
酒の配達に来ていたカン・ドックは、水刺間で扱ったことのない熊の手の料理を頼まれる。料理が終わるまでの間、チュデクとイルトも宮中で待つことになり、チャングムは久々にカン・ドック一家とのひとときを過ごす。そこに現れたチェ尚宮は、チュデクにパク・ミョンイという女官に心当たりがないか尋ねる。チェ尚宮もこの間ピルトゥがチャングムを疑っていたことが気にかかっていたのだ。だが、チャングムは両親のことをカン・ドック一家にも話していなかったので、チュデクがミョンイの名を知るはずはなかった。更に、最近宮中に上がったと聞いていたチュデクの養女がチャングムであると知ったチェ尚宮はチャングムの素性について尋ねる。だが、ただならぬ雰囲気を察したチュデクは適当な作り話でごまかしてしまった。
チェ尚宮に素性を尋ねられてごまかしておいたことをチャングムに知らせ、口裏を合わせるよういいつけるチュデク。「これは絶対裏に何かあるねえ。お前の両親は一体どういう人なんだい」「・・・」「全くもう、両親のことになるとこの子は貝みたいに口をつぐんじまう」
その夜、チェ尚宮に引き連れられて最高尚宮の部屋に女ものの上着を被って面体を隠した男がやってくる。最近体調のすぐれない最高尚宮を診察するために呼ばれた医員であった。最高尚宮の病気は深刻なもので、公式に診察を受けると職を辞さなければならなくなるため、このような手段を取ったのだが、医員が宮中から抜け出す際に駆け落ち相手と間違えた門衛に抱きつかれてしまい、結局全てが露見することになってしまった。
同夜実施された抜き打ち風紀検査で、水刺間からは博打用の遊具や春画が発見されていた。責任者であるチェ尚宮の立場が悪くなっていたところに今回の事件が重なり、チェ一族は窮地に陥る。提調尚宮はせめて自分にだけでも教えておいてくれれば何とかすることもできた、と最高尚宮とチェ尚宮を叱るが、既に後の祭りであった。チェ・パンスルはオ・ギョモに何とか事態を丸く収めてくれるよう頼むが、既に重病であることが明らかになっているだけに、最高尚宮の引退だけは避けようがなかった。早急に後任を決めなければならないのだが、能力はもとより、宮中での立場や、血筋も考慮しなければチェ一族の勢力が殺がれることにもなりかねず、人選は難航するが、一人だけ適任者が見つかる。

醤庫に朗々と響き渡る歌声。チョン尚宮がセンガッシたちに歌を歌ってやっているのだ。だが、その歌声はミン内人がチョン尚宮を呼ぶ声で中断される。提調尚宮がチョン尚宮を呼んでいるというのだ。「もしや最高尚宮を任されるのでは?」と言うミン尚宮に、チョン尚宮は「最高尚宮?お前がおやり」とにべもない。

だが、提調尚宮が次期水刺間最高尚宮として選んだ人物は、まさにチョン尚宮だった。彼女は両班の娘で、最高尚宮と張り合う実力の持ち主であったにも関わらず、風流を愛し権力に興味のない女性だったため、現在は醤庫の管理を担当しつつ、世捨て人のような立場にいた。チェ尚宮が最高尚宮に適した年齢に達するまでの間、チョン尚宮を傀儡とし、提調尚宮とチェ尚宮とで実質的に水刺間を管理しようというのが彼女たちの目論見だったのだ。

最高尚宮となることを引き受けた帰り、チョン尚宮は偶然長番内侍に出会う。「水刺間の最高尚宮になるそうだな。どうした、人形遊びでも始めたくなったのか?」「一人で遊ぶのに疲れましたので、みなさんに遊んでもらおうかと」「ほほう、それはそれは面白そうだな。天下のチョン尚宮が人の手の上で遊ぶとは。こりゃ見物だ」「どうぞ、見物にいらして下さいませ」・・・どうやらチョン尚宮、ただものではなさそうである。
だが、自分が何故選ばれたのか、その理由を十分に理解しているチョン尚宮にはまだ迷いがあった。チョン尚宮は一人だけ挨拶に来なかったハン尚宮の元を尋ねる。「チョン様には相応しくないような気が致しまして・・・」と懸念を素直に伝えるハン尚宮。「そうだねえ。辛い生き方をするか、楽な生き方をするか・・・お前たちはどう思うね?」ヨンセンと共に尋ねられたチャングムは逆にチョン尚宮に尋ね返す。「最高尚宮様は、辛いか楽かお選びになれるのですか?私は辛いのは嫌なのに、いつも辛いことばかりなんです」「なんだって?はっはっはっ」豪放磊落に笑うチョン尚宮。この時彼女の決意は固まっていた。
何とかチェ一族全体に累が及ぶのを防いでくれたオ・ギョモに、チェ・パンスルは過大とも思える礼金を渡す。これはとりもなおさず、チェ一族がオ・ギョモと運命を共にすることをはっきりと表明することでもあった。
翌朝。仕事が始まったばかりの水刺間にチョン尚宮が現れる。自分が最高尚宮になって初めて王にお出しする食事だから、自分自身で調理するというのである。その技術にハン尚宮とチェ尚宮以外の誰もが驚く。ハン尚宮は以前からチョン尚宮の実力を知っており、満足げに微笑みを浮かべてチョン尚宮が料理する姿を見ていたが、チェ尚宮はその姿に不安を覚える。口先では「お前だけが頼りです」と言っておきながら、実は傀儡という立場に収まるつもりなどないのではないか、と。
チェ尚宮が作った料理に王も満足する。また、チョン尚宮がメッチョク(貊炙)などという珍しい調理法を知っていたことも王に強い印象を残した。
王の食事が終わった後、チョン尚宮は水刺間の全員を集め、王に出した食事を一緒に食べるよう命じる。その場で、チョン尚宮の隣にクミョンが座るのは何故か尋ねる。本来、この位置にセンガッシを座らせるとすれば、チョン尚宮が面倒を見、身の回りのことをさせているヨンセン以外に有り得ない。チェ尚宮は、クミョンが卓抜した味覚を持っているため、先代から味の評価をさせていると答える。そこでチョン尚宮は料理の一品をクミョンに食べさせ、何で味付けがされているか答えさせる。すらすらと答えるクミョン。だが、チョン尚宮はその答えに満足せず、全員にその料理を食べさせる。「どうだ?この子の言う通りで良いか?」
尚宮たちを含め、誰も異議を唱えるものはいない。ハン尚宮も何となく納得しかねる様子ではあるが、はっきり違うとも言わない。そして、しばらくの後、チャングムが声を上げる。「柿でございます」「そなた、今何と言った」「砂糖ではなく、熟した柿です」驚く一同。
「何故熟した柿だと思った?」「えっ?私はただ、口の中で肉を噛んだら柿の味がしたので、何故柿だと思うと聞かれましても・・・柿の味がしたから柿を使っていると思っただけで・・・」「そなたの味覚はずば抜けておるなあ。考えてみれば、熟した柿が入っているから柿の味がしたのを何故かと聞いた私が愚かだった」
チョン尚宮とチャングムはチェ一族の地位を脅かす存在となった。チョン尚宮は、クミョンを他のセンガッシたちと同じ席につくよう命じ、今後は誰かに特権を与えることなく、実力のあるものに機会を与えると宣言したのだ。チャングムに負けて泣くクミョン。先代の最高尚宮なき後、チェ一族を守るため闘志を燃やすチェ尚宮。水刺間は大きな火種を抱えるに至った。
ハン尚宮は本格的にチャングムを鍛え始める。食材に始まり、水や火に至るまで、料理に関わるありとあらゆるものを知り尽くすこと。それがハン尚宮がチャングムに与えた課題だった。チャングムは毎日野山を駆け巡って一つ一つ覚えて行った。
一方、チェ尚宮もクミョンに対して一段と厳しい教育を始める。ハン尚宮とは異なり、正確な量の調味料を調和させることを徹底して教え込むのがチェ尚宮の教育方針だった。
ハン尚宮の期待に応えるべく、宮中を駆け抜けていくチャングム。彼女が宮中に入って初めて見せる、生き生きとした姿である。
8年後。18歳に成長したチャングムは今も駆けていた。「全くあの子ときたら、せっかちというか落ち着きがないというか・・・」年配の尚宮たちにとっては未だに頭痛の種であるようだ。
「尚宮様!ハン尚宮様!やっとわかりました!私ついに・・・・」ハン尚宮が最高尚宮の部屋にいると聞いて飛び込むチャングム。だが、そこでは尚宮たちの会議が行われていた。
・・・どうやらすぐに周りが見えなくなる性格は相変わらずのようである。

第6話 「追放処分」
18歳になってもチャングムは相変わらずの好奇心と行動力とで、さまざまなことに挑戦してはチェ尚宮(サングン)にしかられる毎日を過ごしていた。その頃、皇女が食事を摂らなくなり、水剌間(スラッカン)が皇女の食事も担当することになる。クミョンはチャングムの研究をヒントに、皇女の食事を作り問題を解決する。中宗の誕生祝に明より錦鶏が贈られ、調理するまでの間、その管理をクミョンが任される。しかし飼育場の鍵がはずれ、錦鶏が逃亡。誰にも言えないクミョンは意を決し、伯父パンスルを頼ることに。錦鶏がいなくなったことに気付いていたチャングムはクミョンに手助けを申し出、夜中、一緒に宮中を抜け出す。チャングムは万一に備え、トックにも錦鶏探しを依頼。翌日、中国からの交易船が入ることを知ったチャングムは港に行き、トックの手引きで申の刻(午後4時ごろ)錦鶏が入手できることに。クミョンと合流する約束の時間は酉の刻(午後6時ごろ)。一方その頃、水剌間(スラッカン)ではチャングム、クミョンと錦鶏の不在にチェ尚宮(サングン)、ハン尚宮(サングン)が気付いていた。
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水刺間の女官たちの朝礼(?)。身だしなみに問題があって罰を受けるチャンイとヨンセン。チャングムは身だしなみに問題はないものの、もっと大きな騒動を引き起こしていた。「昨日の夜、台所をあのように荒らしたのは一体誰です?」厳しく問うチェ尚宮に、チャングムは通常使わない木材を薪として使用したらどうなるか、弱火で水が煮詰まるのにどれくらいの時間がかかるのか、色々な実験をしたことを喜々として答える。そんなチャングムを見て心配げなクミョンとほくそ笑むヨンノ。チャングムは罰として幼年の見習いたちと一緒に十日間の皿洗いを命じられる。何度も罰を受けて皿洗いを命じられるチャングムは皿洗いの子供たちにまで心配されていた。「ほんとにのんきなんだから・・・クミョン姉さんは5年まえから王様の御膳を作ってるのに」
一方、王室では公主(コンジュ 皇女)が最近食事を摂ろうとしないことが問題になっていた。そのため本来王の食事だけを担当するはずの水刺間で公主の食事を作ることになる。チェ尚宮はクミョンとともに秘伝の香辛料を使い特別な料理を作る。だが、公主は二口ほどしか食べず、とうとう目眩を起こして倒れてしまう。一時的に食欲を増す効果しかない香辛料に頼るチェ尚宮のやり方にクミョンは疑問を感じるが、他に有効な手だてもなく、色々な味付けを試してみることにする。
チェ障宮に命じられて醤庫に味噌を取りに来たクミョンは、チャングムが何やら実験をしているのに出会う。「ハン尚宮様に言われてあれこれ試してみてるんだけど、炭を醤油や味噌や酢に入れたらどうなるかなと思って入れてみたの」「まったく。だからチェ尚宮様にいつも叱られるのよ」チャングムに促されるままに味見をしたクミョンは、炭を入れた調味料の味が良くなっていることに驚く。「炭を割ってみたら、とても小さな穴がたくさん空いてるのよ。だからかしら。臭いをよく吸い取るみたい」クミョンは興奮して、他のものにも入れてみるよう勧める
公主が倒れたことで、事態は深刻さを増していた。王が自分も食事を摂らぬと言い出したのだ。それに中殿(チュンジョン 王妃)と大妃(テビ 皇太后)も同調し、水刺間は何としても公主が食べられる料理を作らざるを得なくなってしまった。そんな中、クミョンは公主の食事を自分に任せてくれるよう、チェ尚宮に願い出る。
クミョンが作ったのは一見何の変哲もない粥だったが、実はチャングムの実験にヒントを得て、炭で米の臭いを抜いたものだった。公主はその粥を食べる。彼女は米の臭いが気になっていたのだが、王が何も言わないため、それを口に出せずにいたのだった。会議の席で最高尚宮から褒められたクミョンは、チャングムの実験から思いついたことであることを告げる。
一件落着したのも束の間、水刺間に重大な使命が課せられる。明国からの使節団が王の誕生日を祝うために、王室で飼育した錦鶏を手土産にやってきたのであった。本来、王命により誕生日は質素に祝うことになっていたが、明国の使者が訪れたとなっては自ずと話は別である。水刺間に緊張が走る。全員に献立表が配られ、万全の体制で料理に臨むことになる。料理の中心となる錦鶏は明国で無病長寿の霊薬と言われる食材であり、しかも王室で飼育されたものとなっては滅多な料理はできない。かつて扱った経験があるチェ尚宮が料理を担当し、その補佐と当日までの錦鶏の管理はクミョンに任される。
クミョンが錦鶏料理の手伝いを任されたことを相も変わらず妬むチョバン。ミン尚宮も「経験者ばかりに機会が与えられるので、手柄を立てられない」と愚痴る。ハン尚宮は「努力もしないで人を妬むなどもっての他」と二人を叱る。着々と実力を着けていく者とそうでないものの差がはっきりと出始めていた。
クミョンは鶏小屋の扉の留め金が緩くなっていたことに気づかず、錦鶏を逃がしてしまう。必死に探すが錦鶏は見つからない。チェ一族の将来を担うべき自分が、こんな重要な場面で問題を起こす訳には行かないと一人思い詰めた彼女は、夜の間に宮中を抜けだし、チェ・パンスルに頼んで錦鶏を手配してもらおうと決意する。勝手に宮中を抜け出したことが発覚すれば、厳罰を受けることは免れないのだが・・・。
だが、クミョンは門を出るところで早くも見つかりそうになってしまう。あわやというところを救ってくれたのはチャングムだった。チャングムは昼間の間クミョンが何かを探していた様子だったことと、鶏小屋に錦鶏がいなかったことから事態を察していたのであった。チャングムは、洗い物をしている時に見つけた水路の鉄扉が壊れている場所を使ってクミョンと共に宮中を抜け出す。
白丁の集落に入り込んで騒ぎになり、軍官に見つかる二人だったが、京畿道から来たチェ・パンスルの親戚ということにして何とかチェ・パンスル邸に辿り着く。ところが、頼みのチェ・パンスルは出かけてしまって留守だった。執事に事情を話し、なんとか錦鶏を手配してもらうよう頼むクミョン。チャングム万が一に備え、カン・ドックにも頼んでみると言い出す。トックなら珍しい食材を扱う商人たちともつきあいがあるからだ。二人は宮中に戻っていなければならないギリギリの刻限を待ち合わせ時間にし、別行動を取ることになった。
突然戻ってきたチャングムに驚くトック夫婦。事態が一刻を争うことを知り、トックはチャングムを連れて知り合いの鳥屋の元に向かう。
鳥屋は錦鶏を持ってはいなかったが、明国からの交易船が持ってくることを教えてくれる。丁度交易船が入ってくる日であったため、トックはチャングムを連れて渡し場に向かう。
二人は渡し場に着くが、肝心の明国からの交易船はまだ到着していなかった。予定通りに到着すればなんとかクミョンとの約束の刻限には間に合うのだが・・・
交易船が着くまでの間、市場で時間を潰すチャングム。彼女のすぐ横では、笠を被った見るからに怪しい風体の男が、目つきの異様に鋭い女から小さな包みをこっそりと受け取っていた。チャングムは、この女と間違えられ、突然現れた謎の男たちにつかまってしまう。「笠の男から渡されたものを出せ!」
「止めろ!この人ではない。隣にいた紺色の着物の女だ」遅れて現れた男たちの上司と思しき人物に救われるチャングム。どうやら彼らは地図を和冦に売ろうとしている国賊を追っているようだ。
水刺間ではチャングムとクミョンがいなくなったことがついに発覚していた。事情を知らされていたのはヨンセンだけなのだが、ハン尚宮とチェ尚宮の追求を逃れるには、ヨンセンではいかにも力不足であった。
そんなこととは知らぬチャングムは、無事に錦鶏を手に入れ、クミョンの待つチェ・パンスル邸に向かっていた。
チェ尚宮はチェ・パンスル邸を訪れ、クミョンの軽率な行動を叱る。こちらも執事の尽力により錦鶏を入手でき、チェ尚宮はクミョンを連れて帰ろうとする。だが、クミョンはチャングムを待つといってきかない。
帰路、チャングムは大勢を相手に大立ち回りを演じる両班風の男を目撃する。市場で人違いされた時にチャングムを助けたあの男である。男は「笠の男」を倒して地図を奪回するが、「紺色の着物を着た女」の手裏剣に倒れてしまった。地図を奪い返した女は、そそくさとその場を立ち去る。チャングムは倒れた男を見捨てることもできず、自分の下着を裂いて手当を始めてしまう。
夜になっても戻ってこないチャングムを待ち続けるクミョンとチェ尚宮。クミョンはもう少しだけ待って欲しいと懇願するが、これ以上宮中に戻る時間を遅らせる訳には行かなかった。
山中で薬草を探し男を手当するチャングム。手当に集中する余り、父からもらったノリゲを落としてしまったことにも気づかない。脈がしっかりしてきていることを確認し、彼女が男を残して立ち去った時には、周囲はすっかり暗くなっていた。
チェ・パンスル邸に戻り、クミョンとチェ尚宮が少し前に立ったことを聞いたチャングムは必死に後を追うが、追いつくことはできなかった。忍び込もうにも、宮中を出る時使った水路の鉄扉は修理されており、入ることができない。
翌日。クミョンとチェ尚宮が持ち帰った錦鶏を使って、料理をしている最中の水刺間に軍官が入ってくる。彼らは明け方に宮中に忍び込もうとしていたチャングムを捕えたのである。これにより事の顛末が提調尚宮にも知られることになる。王の誕生祝いは無事に執り行うことができたが、水刺間関係者の表情は暗かった。祝宴終了後、提調尚宮から最高尚宮の減俸とチェ尚宮・ハン尚宮の降格が言い渡される。チャングムは内禁衛(ネグミ 王及び王宮の護衛を任務とする軍隊)の裁定内容にかかわらず、職を解かれることになった。
そして、チャングムに内禁衛の裁定が下る。「鞭打ち20回の後追放処分とする!」
第7話 「失意の日々」
宮中を抜け出した罪で捕らえられたチャングム。しかしチョン最高尚宮(チェゴサングン)とハン尚宮(サングン)の必死の取り計らいで、宮中追放処分は免れ、配置換えとなる。チャングムの新しい配属先は菜園。菜園とは王宮の隅にある薬草畑で、異国の香辛料や薬草の栽培を試みるところ。しかし今まで栽培が成功したことはなく、事実上、宮中で見捨てられた人が配属される部署だった。菜園近くには護衛部隊の練兵場があり、菜園に向かうチャングムは過日傷の手当てをしたミン・ジョンホとすれ違う。傷から回復し職場に復帰したチョンホは、手当てをしてくれた命の恩人である女性の落し物、ノリゲを大切に持っていた。菜園では誰一人働いておらず、チャングムは責任者チョン・ウンベクから「何もしないことが仕事だ」と言い渡される。
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最高尚宮とハン尚宮はチャングムを助けてくれるよう提調尚宮に願い出るが聞き入れられることはなかった。女官が宮中を勝手に抜け出すことは大罪なのだ。チョン尚宮は長番内侍に頼んでチャングムが罪人として処分される形にならないよう手を回してもらう。その結果、チャングムの処分は水刺間に一任されることになったが、提調尚宮の意志が変わらない以上、追放は免れられない。クミョンもチェ尚宮に何とかしてくれるよう頼むが、チャングムを助けるためにはクミョンの失敗や、チェ尚宮がそのことを隠すために口実を設けて漢符(通行手形)を発行したことも明らかにせねばならない。チェ尚宮はクミョンに対してこの件は忘れるように言う。
ハン尚宮はチャングムを部屋に呼び、かつて人の命を救おうとして処罰を受けることになった友達がいたこと、自分がその友達を助けられなかったことを話す。そして、「お前のために何もしてやれない私を許しておくれ」と涙を流すのであった。ハン尚宮の言う「友達」は言うまでもなくミョンイのことなのだが、チャングムがミョンイの娘であり、ハン尚宮がミョンイの親友であったことを二人ともまだ知らなかった。
チャングムが宮殿を追われる朝。「私のせいだわ」とうなだれるクミョンを、チャングムは慰める。「約束の時間を守れなかった私が悪いの。錦鶏を持って帰って、王様のお祝いの御膳を作ることがあなたの仕事だったはずでしょ。立派にやり遂げたんだから、それでいいの」まさに門を出ようとするチャングムを駈けてきたヨンセンが呼び止める。前夜、ヨンセンが必死に最高尚宮に頼み込んだのが功を奏したか、チャングムの追放処分は取り消され、茶斎軒(タジェホン 王宮の外れに設けられていた薬草や野菜を栽培する菜園)に送られることになったのだ。最高尚宮とハン尚宮が、自分たちの俸禄を三年間返上することを条件に提調尚宮から引き出した譲歩であった。喜ぶチャングムとヨンセンであったが・・・。
茶斎軒に向かうチャングム。途中、チャングムが約束の刻限に遅れる原因となった武官、ミン・ジョンホとすれ違うのだが、二人ともお互いに気づかない。
チャングムが茶斎軒に到着してみると、そこに人影はなく、荒れ放題の畑が広がるばかりであった。男たちは畑の中で昼寝を決め込んでおり、ムスリの一人(下働きの女婢)も、ここでは暇を潰すしかやることはないと言う。茶斎軒は実質上宮中にあって見捨てられた場所であり、ここに送られて復職したものは未だかつてなかったのである。
失意に沈むチャングムであったが、いつまでも大人しく落ち込んでいるような性格ではない。リーダー格の男を叩き起こし、無理矢理雑草取りをやらせようとする。男は渋々従うものの、一向にやる気がなく、雑草と一緒に薬草まで抜いてしまう始末である。だが、その男はチャングムも知らない薬草のことを詳しく知っていた。一体この男は何者なのか・・・。
チャングムが畑から戻ってみると、ムスリ(下働きの女婢)が毒性のある木の実を食べて苦しんでいた。慌てて人を呼ぶチャングム。そこに現れた先ほどの男は、見事な応急処置で彼女を救う。実はこの男こそ、茶斎軒の責任者チョン・ウンベクだったのである。事実を知り、非礼を詫びるチャングムに、チョン・ウンベクは問う。「これからはわしの言うことを聞くか?」「はい!何でもおっしゃって下さい」「ようし、なら何もするな」「えっ?」「いかにもここに希望があるかのように、余計な真似をするのは止めろと言っている」
昼間から酒を飲んで昼寝をし、無気力そのものの茶斎軒の人々。チャングムは再び失意に暮れ、一人川縁で行われている軍官たちの教練の様子を眺めていた。その視線の先にミン・ジョンホがいることなど、彼女が知る由もなかった。
ミン・ジョンホは文官でありながら内禁衛に勤務し、軍官の教練を受け持つと同時に非番の時は特別な任務を遂行するという、極めて優秀な官員だった。彼は王宮の見取り図を作るために宮中に忍び込んだ密偵の捜査も続けており、休む暇もない日々を送っていた。そして彼の手にはあの日チャングムが落としたノリゲが握られていた。おぼろげな記憶を頼りに、部下を使ってチャングムを探させていたのだが、まだはかばかしい成果はない。チャングムはすぐ近くにいたのだが・・・。
菜園で使う種を受け取りに司?院(サオンウォン 宮中で使用する食材などを管理する役所)を訪れたチャングムはカン・ドックに出会い、三ヶ月後に水刺間で御前競演(料理試験)が行われることを知る。これに合格しなければ、正式に女官となることはできない。自分の置かれた境遇の厳しさを改めて思い知らされるチャングムであった。
チャングムは何を思ったか、昼寝中のチョン・ウンベクを何度も叩き起こしては幾つもの種の種類を確認する。さすがに耐えかねたチョン・ウンベク。「おい、馬鹿なことは止せ!言っただろう、何もするなって」
だが、チャングムはチョン・ウンベクに「それはできません」と答える。「今の私は何かしていないとどうにかなってしまいそうです!ここのみんなは希望がなくても構わないかも知れませんが、私は違います!」
チャングムの剣幕に気圧されつつも、妙に嬉しそうなチョン・ウンベクであった。

 

畑で酒盛りをする男たちをよそに、一人黙々と種を植えるチャングム。チャングムがいつまで続くか賭ける男たちの会話から、チャングムは明国原産の「キバナオウギ」は非常に優れた薬効をもっているが栽培が非常に難しくいまだ成功した例がないこと、明から買い付けるため法外な値段で取引されていることを知る。「じゃあ、これに決めました。キバナオウギの栽培を目標にします」喜々として答えるチャングムに誰もが毒気を抜かれた様子である。チャングムは書物を調べては色々な栽培方法を試してみるのであった。
そんなある日。畑に水を運んできたチャングムを、チョン・ウンベクが止める。彼女の足元にはキバナオウギの若芽が芽吹いていたのである。このことが、茶斎軒の雰囲気を一変させる。誰もが率先してチャングムを手伝い、キバナオウギの栽培を成功させようという機運が生まれていた。そしてチョン・ウンベクを通じてヨンセンからチャングムに思ってもみない救いの手がさしのべられる。習った内容を書き留めて送ってくれたのだ。
だが、喜んだのも束の間、夜の間に畑が荒らされ、キバナオウギの芽が根こそぎにされるという事件が起こる。
もう一度種を蒔き、芽が出たのを見計らって夜の畑を見張るチャングムとチョン・ウンベク。予想通り畑に現れた犯人をチョン・ウンベクが捕えるが、それは茶斎軒で働く男の一人だった。チョン・ウンベクは男を問いつめるが、何故そんなことをしたのか男は話そうとしない。報告を受けた監督官も貴重なキバナオウギの栽培に成功したことを喜ぶどころか、夜の畑に女官と一緒にいたことでチョン・ウンベクを叱る。
実はこの事件の背後にはオ・ギョモとチェ・パンスルがいた。明国からのキバナオウギの輸入はチェ・パンスル商団が一手に引き受けており、そこから得られる莫大な利益の一部がオ・ギョモに渡っているのである。監督官はチョン・ウンベクに酒を振る舞いながら、今回のことは無かったことにするよう命じる。さもなければ女官と情を通じたことで処罰されることになると。
その夜。したたか酔ったチョン・ウンベクは畑で奇怪な行動を取り始める。キバナオウギの苗を掘り起こしては袋に詰めていくチョン・ウンベク・・・。
翌日、チョン・ウンベクは軍官の手で捕えられてしまう。茶斎軒で作ったキバナオウギの苗を市場で売りさばいていたというのである。尋問を受けたチョン・ウンベクは、折角貴重なキバナオウギの栽培に成功したのに、監督官はそのことを褒めるどころか、畑を掘り返した罪人をとがめることすらしなかったこと、市場で売り捌けばキバナオウギが民の手に渡ると考えたことを説明する。このチョン・ウンベクの策略で監督官の不正が明らかになる。
苦境に立つオ・ギョモとチェ・パンスル。監督官の口から彼らの名が出ぬよう手を打つのが精一杯だった。
チャングムは功績を認められ、チョン・ウンベクも放免されて茶斎軒に戻ってくる。彼の策略を知らないチャングムはチョン・ウンベクの行動を責める。「何故あのようなことを・・・監督官から相手にされなかった恨みですか?もっと上へ訴え出るとか、他にやり方がありませんでしたか?」「そんなしかめっ面をするよりあっちを見てみろ。誰かがお前を呼びに来たようだ」
坂道を走ってやって来たのはヨンセンだった。
「チャングム、あのねえ、あのね、戻れって!戻っていいって!」
こうしてチャングムの「失意の日々」は終わりを告げたのであった。

第8話 「女官への道」

貴重な薬草キバナオウギの栽培に成功したチャングムはその功績が認められ、菜園から水剌間(スラッカン)に戻れることに。チョン・ウンベクの使いで書庫へ立ち寄ったチャングムは、ミン・ジョンホと初めて言葉を交わす。女官正式採用を決める試験を7日後に控え、懸命に遅れを取り戻そうと勉強するチャングム。試験は2段階に分かれていた。まず、料理名を当てる筆記試験があり、その後実技としてその料理を作る。筆記試験に正解した早い順に、その食材を選ぶことができることになっていた。チャングムが心配なトックは、何とか力になりたいと、古くから女官に伝わる「試験問題を事前に知る儀式」をチャングムに教える。試験当日。筆記試験を一番で正解したクミョンは最善の食材を獲得。下ごしらえを済ませ、課題の料理は翌日作ることになった。夜中、ヨンセンと一緒に復習を兼ねて料理場を訪れたチャングムは、自分の食材の一部がなくなっていることに気付く。

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ついに水刺間に戻ることになったチャングム。キバナオウギの栽培を成功させたことが長番内侍の耳にも入り、提調尚宮に口添えしてくれたらしい。
チャングムは茶斎軒を去る前に、奴婢たちにさまざまな植物の栽培方法を伝える。彼らは口々にチャングムとの別れを惜しむ。「きっとまた来て下さいね」・・・茶斎軒の人々との出会いが自分にとって大きな財産だったことをチャングムが知るのは、もっと後のことである。
別れを惜しむ人々から離れ、独り酒を飲むウンベクに、チャングムは酒を飲む時はつまみも食べるようにと簡単な料理を持って来る。「あの・・・ウンベク様。どんな理由でここにいらっしゃるのか、何故何もしようとなさらないのか、私にはわかりませんが、それは本来のお姿ではないはずです」毒のある実を食べて倒れたムスリを助け、破天荒な手段で不正を暴いたウンベクこそが本来の姿であることを信じているが、同時にそんな彼が心配であることを告げるチャングム。ウンベクはチャングムに答えて言う。「わしもお前が心配でたまらん。そんなにあっちにもこっちにも首を突っ込んでいると、そのうちにっちもさっちも行かなくなるぞ。覚えておけ」そして、司?院の書庫に勤務するパク・イヌという人物に宛てた手紙を託すのだった。
チャングムは茶斎軒を辞去してすぐに書庫を訪ねるが、中には誰もいない。大量の書物への興味を押さえきれず、手に取った書物を読み耽っているところに一人の官員が入ってくる。それは以前チャングムが命を救ったミン・ジョンホであった。チャングムは事情を説明するが、既にパク・イヌは異動になっていたのである。仕方なくチャングムはミン・ジョンホに手紙を渡す。実はウンベクの手紙は、特別にチャングムに書物を貸し出してくれることをパク・イヌに依頼したものだった。ミン・ジョンホはパク・イヌに替わってチャングムに書物を貸し出すことを約束する。「人が身分を問うのであって、書物は身分を問いません」

ミン・ジョンホの上官たちが書庫に入ってきたため、チャングムは書庫を出る。その時、書庫内の机の上に以前自分が落としたノリゲが置いてあるのに気づく。「では・・・あの方が・・・」それはミン・ジョンホが置きっぱなしにしていただけだったのだが、チャングムには知りようがない。一方、ミン・ジョンホたちは兼ねてから懸案の密偵問題について書庫の中で密談を交わす。ミン・ジョンホが密偵から取り戻した宮廷の地図は極めて精密で、早急に宮殿内に潜入した密偵を見つけて手を打たねばならなかったのだ。

チャングムが手柄を立てて戻ってきたことを喜ぶチョン尚宮だったが、目前に迫った御前競演のことを考えれば、大事な時期に水刺間を離れていた分チャングムは不利な状況に置かれている。だが、この御前競演で落第すれば、宮中にはいられないのだ。「残りわずかな時間だが、最善を尽くしなさい」

御前競演に向けて、チェ尚宮から厳しい指導を受けるクミョン。最高尚宮の座を守り続けるチェ一族であったが、彼女たちも楽をしてその座についた訳ではない。チェ一族の後継者は誰よりも優秀であらねばならないのだ。チェ尚宮はそのことをクミョンに告げ、一層の努力を求めるのだった。

夜、ヨンセンたちとの勉強会に出かけるチャングムにハン尚宮が声をかける。「頑張っておいで。もう私たちがあなたたちを個人的に指導してはいけないというお達しが出たの。融通の利かない自分の性格が嫌になるけれど、許しておくれ」
部屋を出たところでチャングムはクミョンに出会う。「戻ってこられたのね」「うん」「これ、料理に関する本よ。試験に直接役に立つかどうかは判らないけれど、読んでみて」「・・・ありがとう」
水刺間の女官たちの間に代々伝えられる、過去の試験問題とヤマを記した書き付けを使って試験勉強をするチャングム・ヨンセン・チャンイの三人だったが、ちゃんと教育を受けたはずのヨンセンとチャンイも細かい点ではかなり怪しい。道はなかなか険しそうである。
カン・ドックと妻チュデクもチャングムが試験を受ける際の助けになればと、料理のコツをまとめようとしていた。どうやら、カン・ドックが腕のいい熟手として認められている陰には、妻の内助の功があったらしい。カン・ドックは妻から料理を習う立場だったのである。
トックは妻と二人で作った書き付けをチャングムに渡し、以前主席で合格した女官から聞いたという、「昔から女官たちの間に伝わる、前もって問題を知る方法」を教える。だがどの話に飛びついたのはチャングムではなく、ヨンセン・チャンイ・ヨンノの三人であった・・・。早速その夜まじないを実行するヨンセンとチャンイ。宮殿の東側の池で夜明け前に沐浴し、王の御膳を作る火鉢を持ち出し、最高尚宮の使う包丁を盗み出して前年主席だった女官の服の紐を切り、水刺間の裏手にある楓の木の下で包丁を33回研いで・・・。
途中から何故かヨンノも便乗し、いよいよまじないの最終段階に入ろうかというところで、三人は見回りの軍官に見つかってしまう。一目散に逃げ出す三人。残された火鉢と服の紐を見て、軍官たちはつぶやく「ああ、明日が御前競演なんだな」

三人が宿舎に戻ってみると、そこにはチェ尚宮の他数人の尚宮と内人たちが待ちかまえていた。「今年は誰が引っ掛かるかと思ったら、やっぱりあんたたちだったのね」チョバンの言葉に面食らう3人。どうやらこれは水刺間の恒例行事のようなものらしい。しっかり学んでいないから迷信に頼ることになるのだと3人を叱るチェ尚宮。

さらに最高尚宮までその場に現れて3人に尋ねる。「それで、包丁は研いだのかい?」包丁を33回研ぐ、という部分はかつて最高尚宮が付け加えたものだったのである。

試験当日。課題を決めてもらうために大妃の元に参ずるチョン尚宮。だが、大妃は間もなく宮中を去り尼寺に入るノ尚宮の長年の功労に報いる意味で、ノ尚宮に課題を決めさせる。

いよいよ試験が始まる。試験は二段階に分かれており、一次試験の問題は「頭否頭 衣否衣 人否人」という文章から、料理の名前を答えさせるものだった。答えは饅頭(マンドゥ)。ハン尚宮の講義で料理にまつわる故事を習っていればわかる内容だったのだが、チャングムにはわからない。他のセンガッシたちが次々と答案を提出して行く中、チャングムはついに終了時間を迎えても答案を書くことができなかった。一次試験の成績で二次の実技で使う食材を選ぶ順番が決められてしまうため、チャングムは良い食材を選ぶことができなくなってしまったのだ。
一番に答案を出したクミョンは、饅頭の出汁を取るのに最適な肉を選ぶ。一方、チャングムは出しを取るのには不向きな、残り物のもも肉を使わざるを得なくなる。

この日は針房のセンガッシたちの試験日でもあった。彼女たちの課題は水刺間の見習いたちと二人一組になり、合格者の内人服を作ることだった。チャングムはハンイという少女と組むことになる。彼女がまだ16歳と聞いて驚くチャングム。宮中に上がってもう長いのだというハンイだったが・・・。一旦部屋で採寸してもらい、チャングムたちは下ごしらえの作業に戻る。

そして翌日。最上の食材と、確かな技術、十分な下準備によって着々と調理を進めるクミョン。クミョンから要領よく秘伝を聞き出そうとするヨンノ。
一方チャングムは、白丁の村で暮らしていた時の経験を元に、独特の出汁を作り上げていた。
その夜、チャングムはヨンセンに誘われて饅頭の作り方を復習するために試験会場に向かう。だが、食材の番をしていたムスリは居眠りをしており、チャングムの食材の中から小麦粉がなくなっていた。小麦粉がなければ饅頭を作ることはできない。番人役の女卑は居眠りをしていたため、どうして小麦粉が紛失したのかを知る手がかりすらなかった。慌てて最高尚宮に事情を話すチャングムとヨンセンだったが、当時貴重品であった小麦粉はすぐには手に入らない。また、食材の管理も水刺間の女官にとっては重要な職務であり、仮に誰かに盗まれたとしても再度の支給はできないと言われてしまうのであった。
なんとか小麦粉を取り返そうと宮中を探すチャングムとヨンセン。チャングムは試験会場から一番近い厨房で、小麦粉をこねているハンイを見つける。犯人はハンイだったのだ。
残った小麦粉だけでも返すよう迫るチャングムだったが、ハンイは頑として返そうとしない。もみ合う二人がたてた物音を聞きつけ、当直の役人たちがやってくる。その中にはミン・ジョンホの姿もあった。
チャングムからことの顛末を聞き、ハンイを問いつめる役人。ハンイは、明日宮中を去り尼寺に入る母のために、饅頭汁を作ろうとしていたのであった。そして、ハンイの母はノ尚宮だというではないか。事の余りの重大さにノ尚宮が呼ばれ、真相が明らかになる。ノ尚宮が若い頃明国からの使者に狼藉を働かれて身ごもった子供がハンイであり、周囲の女官たちの協力を得て今日まで密かに彼女を産み育ててきたというのだ。
言葉を失うミン・ジョンホ。
そして、母との別れの辛さを身に染みて知っているチャングムも、もはや何も言うことができなかった。
チャングムはハンイを手伝ってノ尚宮のための饅頭汁を作る。自らの試験で使われるはずだった小麦粉を使って・・・。ノ尚宮はその饅頭汁に涙を流す。だが、チャングムは小麦粉無しで明日の試験を乗り切らねばならなくなった。
部屋で独り苦悩するチャングムであったが、突如満面の笑みを浮かべて顔を上げる。「・・・あ、茶斎軒!」
一方、今回の試験には従来よりも厳しい制約が加えられつつあった。先頃起こった地震は宮中の女たちの恨みによって起こったものであると言われていた上に、中宗の即位後女官の数を増やし過ぎたために財政が逼迫しているという事情があり、合格者を20名に絞るようにとの通達が成されたのである。これまでは一定水準に達しているもの全員が合格とされていたのだが、今回は実力があっても上位20名の中に入ることができなければ宮中を追われることになるのだ。チャングムにとっては厳しい状況だった。

試験場では、センガッシたちの作った饅頭が次々と披露されて行く。饅頭の中に饅頭を入れるという工夫を加えて、卓抜した能力を示すクミョン。

チャングムは、野菜を饅頭の皮代わりにした、独創的な料理を作り出す。
長官はチャングムの料理を絶賛するが、小麦粉を無くしたという事実に変わりはない。そのことが試験結果に大きな影響を及ぼすのは避けられなかった。
そして試験は終了し、不合格者の名前が呼ばれる。最後に呼ばれた名前はソ・ジャングム。やっと水刺間に戻ったことを喜んだのも束の間、またしてもチャングムに危機が迫る・・・。


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