9〜12話


第9話 「最初の料理」

女官正式採用をかけた料理試験の結果、首席はクミョン、支給されたもの以外の食材を使ったチャングムは落第を言い渡された。そこへ試験の見学に皇太后が現われる。チャングムの料理を味見した皇太后は、その味だけでなく、代用の材料を選び出した機転と知識に感心し、チャングムの落第を取り消させる。晴れて女官となるチャングムに、ハン尚宮(サングン)はお祝いとしてあるものをプレゼント。トックの妻は里帰りしたチャングムに「母代わり」として訓示。チャングムは母の墓参りを済ませ、宮廷に戻り女官としての生活を始める。その頃、追っていた女密偵が捕らえられチョンホが聴取。女密偵から、自分の怪我の手当てをした女性が錦鶏を持っていたことを聞き出したチョンホは、錦鶏を手がかりに、自分の命の恩人を見つけようとする。王の狩りに同行し、野営の水剌間(スラッカン)で食事を作ることになったチャングムたち。しかし味見をしたハン尚宮(サングン)らが倒れてしまう。

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チャングムが不合格であることに憤り、無我夢中で抗議するヨンセン。しかし、最高尚宮は沈痛な面持ちで答える。
「材料の管理は料理人の基本である。また、試験において平等に与えられた食材を使わなかったことは規則違反である。従って失格とする。今回、試験の評価が厳しかったのは事実であるが、これは王の仰せに従って決まったこと」女官の総数を減らすことが前提となっている今回の試験で、規定外の食材を使ったチャングムの合格は有り得ないことだった。これは
「落とすための試験」なのだから・・・。
そこに試験の視察をしていた大妃がノ尚宮たちとともに現れる。センガッシたちの作った饅頭を順に見ていく大妃。真っ先に目にとまったのはクミョンの作った饅頭であった。
続いて大妃は小麦粉の代わりにスンチェ(漢字表記は某菜 今日の白菜の原種で、白菜のように葉が丸まっていなかったそうである)や夕顔などの野菜を皮として使ったチャングムの饅頭に興味を示し、その美味しさに驚く。菜園で薬草として栽培されていたスンチェと、一般的に普及している夕顔という対照的な植物を使ったその饅頭は大妃にとっても初めての味だったのである。そして、その饅頭を作ったチャングムが落第したと聞いて理由を尋ねる。最高尚宮は小麦粉を無くしたことが大きな減点対象だったと答えるのだが・・・
その時大妃の傍に控えていたノ尚宮が助け船を出す。「実は私の落ち度で無くなったのでございます。この場で事情は申し上げられませぬが、なにとぞこの子をお許し下さい」チャングムは大妃からスンチェや夕顔を使った理由を尋ねられて答える。王は日頃から胃腸が弱いので、胃腸に良く風邪を予防する効果のあるスンチェと、胃もたれに効果のある夕顔を使ったこと。宮廷の食は民の食の手本であるとの教えに従い、今後朝鮮全土に普及するであろうスンチェと、どこの家庭にもある夕顔という手に入れやすい食材を使ったこと。そのチャングムの答えに大妃は大いに満足し、ノ尚宮に言う。「お前の落ち度が思わぬところで手柄を立てたな。お前が小麦粉を無くさなければこの料理は生まれなかった」
「なんと言っても料理は、美味しく体にも良く誰でも手軽に作れて食べられる、それに越したことはない。この子は食材が揃わずとも工夫でこれだけのものを作る頭脳を持っている。なのに追い出すなどもってのほか」複雑な表情の提調尚宮とかすかに安堵の表情を見せる最高尚宮。そして満面の笑みを浮かべる長番内侍。「この子は宮中に残し、王のためは勿論であるが、民のためにもなる料理を作らせるように」チャングムは内人になることが出来たのだ。
ヨンセンと合格を喜び合うチャングムの元に、ハンイがチャングムの内人服を持って現れる。「どうぞ、内人服です。心を込めて縫いました」
正式な内人教育が始まる前日、各部門の新人内人たちを集めた「黙契式」(NHK版では「契りの式」)が行われる。提調尚宮は一同に向かって「黙契式について決して口外してはならぬ」と告げる。
そして提調尚宮に促されてノ尚宮が話し始める。それはハンイの出生の秘密そのものであった。ノ尚宮がまだ「若い尚宮」だったころ、身内のように可愛がっていた後輩が明国の使者に陵辱され、子供を身ごもったこと。ノ尚宮はその子を自決させたが、周囲の女官たちと力を合わせ、産まれた子供を自分の娘として密かに育ててきたこと。
ノ尚宮の話が終わり、提調尚宮が続ける。女官の掟は国法よりも厳しいものだが、同時に女官同士の絆は何よりも強い。ノ尚宮が話したことは、先輩の女官たち全てが知っていることなのだが、誰一人外部に漏らすものがなかったからこそ、ノ尚宮もその娘も無事に今日まで生きていることができたのだ。そして提調尚宮は言う。「これが女官です。」そして一同は契りの言葉を唱和する。「王に背き裏切る行為は如何なる行為であれ許されぬ。友を自分のようにいたわり裏切ることなく、女官の間で起きたどのようなことも決して外部に漏らしてはならぬ」
一方、ミン・ジョンホはチャングムのノリゲを手に、自分の命を救ってくれた女に思いを馳せていた。チャングムはすぐ近くにいるのだが・・・。
当のチャングムはついに正式な女官となり、母の恨みを晴らし、母に代わって夢を叶えるべく決意を新たにしていたのであった。
翌日。チャングムたちが正式に内人に任命される式典が執り行われる。だが、少女たちの喜びの裏側には、宮中を去る女の悲しみもあった。独り宮中を去り、尼寺へと向かうノ尚宮。見送る女官たち。ハンイはもちろん、最高尚宮の目にも涙が光っていた。
チャングムは見知らぬムスリ(宮中で下働きをする女婢)に呼び止められる。「あちらのお役人様がチャングム様にこの本をお渡ししろと・・・」勿論「お役人様」とはミン・ジョンホのことである。振り向いたチャングムはミン・ジョンホの後ろ姿を見つけ、微笑みを浮かべる。ミン・ジョンホは約束通り「書経」を貸してくれたのであった。
翌日に里帰りの日を控えた夜、同室になったヨンセンとヨンノの間に揉め事が起こる。何かにつけ神経質なヨンノと、気が優しい代わりに大雑把なヨンセンが同室で眠るのは無理な話であった。騒ぎは最高尚宮とチェ尚宮の知るところとなり、二人は部屋割りを変えて欲しいと願い出る。百回鞭で叩かれてもいいなら変えてやると脅して諦めさせようとする最高尚宮だったが、ヨンセンはそれでも構わないから変えて欲しいと言いつのる。結局諦めることになったのは最高尚宮であった。「辛い宮廷暮らし、寝る時くらいは楽でないと・・・」ヨンノとチャングムが交代し、晴れてヨンセンはチャングムと同室になることができた。
その夜、チャングムが寝ようとしていると、ハン尚宮から部屋に来るように言われる。着替えてハン尚宮の部屋に行ったチャングムはハン尚宮から包丁を渡される。「もう内人になったのだから、自分の包丁を持たないとね」その包丁はかつて、チャングムの母ミョンイが使っていたものだった。そして、ミョンイがハンイの母と同じようにある事情から宮中を追い出されたことや、今のチャングムのように好奇心旺盛で情が深く、実力で最高尚宮になろうと努力していたことを語る。「お前にこの包丁を渡す訳がわかるわね?」二人ともそれがチャングムの母のことだとは知らず・・・。
そして里帰りの日。チャングムは久しぶりにカン・ドック夫妻の元に戻る。
その夜トックを外に追い出したチュデクは、枕を並べてチャングムに言い聞かせるのであった。「女官として生きるってのは、あんたが今考えているよりもずっと辛い生き方だと思うよ。親子の情が天の定めなら、女が男を求めるのも天の定めなのに、恋しい男とも肌を合わせず一生を終わるなんて簡単なはずがない」「まあ、仕方ないか。決めた以上は行くしかないねえ。行くのはいいんだけどさあ、お前は何だかがむしゃらに先を急ぎ過ぎだよ。疲れたら途中で腰を下ろしたり、休みを取ったりしないと最後までたどり着けないよ。わかるかい?」
クミョンもまたチェ・パンスルの屋敷を訪れていた。丁度訪ねて来ていたオ・ギョモを接待している席に通されたクミョンは、クミョンを権力争いの道具としか見ていないオ・ギョモと、姪を権力者に取り入る道具にして憚らないチェ・パンスルの姿に不快感を覚えるのであった。
翌日。寄るところがあるからと早朝から出発するチャングムに、チュデクは習わし通りにお土産のご馳走を持たせる。彼らはそんな余裕のある暮らしをしている訳ではないのだが・・・。「気にするんじゃないよ。女官は俸禄が出るんだろう?月々白米2合ずつ返せば1年で完済だ。手間賃を入れると1年半てとこだね」
チャングムの「寄るところ」とは、母の墓であった。「お母さん、お久しぶりです。私、内人になりました・・・」母の遺書を読み返して涙を流すチャングム。「お母さん、内人なら退膳間にも入れるはずです。料理日誌を見つけられたら、お母さんが料理をどう勉強なさったのか、宮廷でどう暮らしていらしたのか判りますよね。そうしたらきっと寂しさも消えます・・・」
いよいよ正式に内人として仕事を始める日が来た。主席合格のクミョンは上級内人として退膳間の仕事を受け持ち、その他の者は水刺間の仕事をすることとなった。退膳間に出入りできるのは上級内人のみであり、チャングムにはまだ退膳間に入る資格が無かった。
内人としての仕事は厳しく、とかくうっかりしがちなヨンセン、チャングム、チャンイは勿論、優等生クミョンですら不注意を叱られる程の忙しさであった。
やっと休憩時間になり、ほっとする新米女官たち。調理場を出たチャングムはミン・ジョンホの上官の姿を見かけ、ノリゲのことを尋ねようと追いかけるのだが、彼は内禁衛の取調室に入ってしまい、それ以上追うことができなくなる。
取調室にはかつてミン・ジョンホに手裏剣で大怪我を負わせた女密偵が捕えられていた。彼女を取り調べているうちに、ミン・ジョンホは自分を救ってくれた女が錦鶏を抱えていたということを知る。
ミン・ジョンホは錦鶏を手がかりに、命の恩人を探し求める。そしてついにカン・ドックが若い娘を連れて錦鶏を探していたという事実を突き止める。彼は早速トック夫妻を訪ねるのだが、チャングムのことを尋ねるミン・ジョンホを警戒したチュデクは適当な嘘を言ってごまかしてしまう。
一方宮廷には慌ただしい空気が漂っていた。5日後に予定されていた王の狩りが、急遽明日行われることになったのである。水刺間ではハン尚宮・ミン尚宮・チョバン・クミョン・チャングムが担当に選ばれ、準備が進められることになった。
そして狩りが始まるのだが・・・。
料理の味がおかしいと何度も味見をしていたミン尚宮が倒れてしまう。ハン尚宮の味見により、貝から抜いた毒をチョバンが牛の脂肪と間違えて料理の中に使ってしまったことが判明するが、時既に遅く一緒に味見をしていたチョバンも倒れ、二人とも意識不明に陥る。また、ハン尚宮も毒の入った料理を口にしていたため、身動きできない状態になってしまう。
「お腹をお空かせになってお戻りになる王をお待たせすることはできない」と何とか調理場に戻ろうとするハン尚宮だったが、体がいうことを聞かない。「チャングム。クミョンを手伝いなさい。クミョン、あなたが今からこの水刺間の責任者です」もはや二人で何とかするしかなかった。ところが、悪いことに王の希望によって献立が冷麺に変更されてしまう。二人とも麺を作ったことがなく、冷麺用の出汁もない。動揺するチャングム。だがクミョンは断固としてやり遂げようとするのだった。

麺を打つことは何とかなるとしても、出汁だけはどうしようもない。悩んだ末に二人は同時にあることを思いつく。「トンチミ(水キムチ)の汁!」トンチミを入れた壺を確認する二人。だが、用意してきたトンチミだけでは汁の量が足りない。チャングムは何か閃いたらしく、突然出かけて来ると言い出す。「先に麺を作っておいて!すぐ戻るから!」

チャングムは山中に湧き出る鉱泉水を使おうと考えていた。だがそこには既に一人の老人が陣取ってわずかずつ湧き出る水が桶に溜まるのを待っていた。自分がとても急いでいることを伝えて、先に水を汲ませてもらおうとするものの、老人は耳が遠くてなかなかわかってくれない。しばしのやり取りの末、老人は既に溜まっていた分を快く桶ごと分けてくれる。

他方、クミョンは長番内侍から叱責を受けていた。もっと早くに状況を知らせていれば、近くの民家に頼むなど手の打ちようがあったが、今となってはどうしようもない。ハン尚宮が信頼して任せたのだから、自分たちを信じて欲しいと頼むクミョン。
「よかろう!今は他に方法がない故、お前たちに任せよう。だがもしも王や王族の方々が一口召し上がって、お顔をしかめたら処罰は免れぬぞ!よいな!」・・・例によってチャングムはなかなか戻ってこない。
チャングムは途中転んで足をくじきながらも、鉱泉水の入った桶を抱えて戻ってくる。チャングムも鉱泉水を冷麺に使うのは初めてだと聞いて不安になるクミョンだったが、もうそんなことを考えていられる状況ではない。早速その水とトンチミの汁を使って出汁を作る。出来上がった出汁の味見をして微笑むクミョン、そしてチャングム。
二人の作った冷麺が王と王族の前に出される。ゆっくりと冷麺を味わう王・・・。
チャングムの機知とクミョンの技術によって作られた初めての料理。王はその料理にどんな評価を下すのだろうか・・・。

第10話 「呪いの札」

王はクミョンとチャングムの作った冷麺に満足し、王の護衛部隊として同行していたチョンホも二人の活躍を知る。チョンホはチャングムに声をかけ、クミョンは自分の憧れの人チョンホとチャングムが旧知であることを知る。食材の管理を怠った罰として退膳間(テソンカン)への出入りを禁じられたミン尚宮(サングン)らに代わり、チャングムが退膳間(テソンカン)の手伝いをすることに。退膳間(テソンカン)のどこかに母の料理日誌が隠されているとあって、チャングムは浮き足立つ。何かと口実を作っては退膳間(テソンカン)に出入りするチャングムの様子を怪しむヨンセン。一方その頃、チェ一族はある陰謀に加担していた。チェ尚宮(サングン)はクミョンにその実行を命じる。懐妊している妃のお腹の子供を女の子に変える呪いの札を退膳間(テソンカン)に隠すのがその役目だった。ところがクミョンが隠したはずの呪いの札が明るみに出、チョン最高尚宮(チェゴサングン)が調査を開始、夜中に退膳間に出入りしていたチャングムに、その容疑がかかる。

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チャングムとクミョンの作った冷麺は、大いに王を喜ばせる。「実に美味い。如何にして出汁を取ったかは知らぬが、これは宮廷では味わったことがない」
長番内侍とハン尚宮から褒められる二人だったが、クミョンの表情は今ひとつさえない。それは冷麺を喜んで食す王を見て、互いに目礼を交わすチャングムとミン・ジョンホの姿を見たからかも知れなかった。
その夜、クミョンは野営地を見回り中のミン・ジョンホと偶然に出会う。「お久しぶりです」「はい・・・私こそご無沙汰致しております・・・」「チェ・パンスル殿はお元気ですか?今日は大変だったそうですね。明日は遠い道のりです。どうぞゆっくり休んで下さい」簡単な挨拶を交わしただけでその場を離れる二人だったが、クミョンは切ない表情で彼の後ろ姿を見つめるのだった。天幕の中に入って物思いに耽るクミョン。以前、クミョンが初めてチャングムに出会った夜、こっそりと別れの礼を送っていたクミョンの初恋の相手こそ、誰あろうこのミン・ジョンホだったのである。思い詰めた表情でもう一度天幕の外に出るクミョンだったが、そこにミン・ジョンホの姿は既に無かった。
その頃、野営地の外れに一人書き物をするチャングムの姿があった。調理法を一冊の帳面に事細かく書き記しているようだ。そこに現れるミン・ジョンホ。「月明かりで何をしてるんです?」「これは・・・その日のうちに書いておかないと忘れてしまうので・・」「そうですか。・・・筆が大きすぎますね。」袂を探って何か探している様子のミン・ジョンホ。「丁度いい小さな筆をお貸ししようと思ったんですが、置いてきてしまいました。」
「チョンホ様!」意を決してミン・ジョンホを追いかけて来たクミョン。だが、思いもよらずチャングムが一緒にいたために、クミョンの思いは断ち切られることになった。「・・・チャングム、ここにいたのね」チャングムを探しに来たことにして、その場を立ち去るしかなかった。ミン・ジョンホに伝えたかった言葉を押し殺すクミョン。
天幕に戻った二人は互いにミン・ジョンホとの関係を話す。だが、クミョンはチェ・パンスルのところに明国の本や品物を買いに来ていた人と説明しただけで、自分の初恋の相手であることは伝えない。一方、チャングムはウンベクから預かった手紙を届けに来た時に出会った人だと説明する。彼女はまだ自分が命を救った相手がミン・ジョンホであるとは知らないのだ。
「お役人様と女官が親しくなることは全くないとは言えないけれど、あんな風に二人きりでいるところを見られると誤解されるわよ」「違うわ!そんなんじゃ・・・!さっきは偶然に・・・」「わかってる。でも気を付けた方がいいわよ。」チャングムには微笑んで見せたものの、着替えるためにチャングムに背を向けたクミョンの顔には不安の色が色濃く浮かんでいたのであった。
ミン尚宮とチョバンは今回の失敗が原因で、退膳間への出入りを禁止されてしまう。代わりに退膳間の手伝いを命じられたのはチャングムとヨンセンだった。予想外に早く退膳間に出入りするチャンスが与えられ、喜ぶチャングム。鉱泉水を取りに行った時痛めた足をやや引きずりながらも、チャングムは退膳間へと走る。そして、その途中ミン・ジョンホと出会う。
「足首は治ったようですね」「あ・・・はい・・・いえ、まだ・・・その・・・」しどろもどろになるチャングム。チャングムがこの間借りた本を全て写し終わったことを告げると、ミン・ジョンホはその早さに驚き、次の本を貸してくれることを約束するのだった。
初めての退膳間。チャングムは早速母親の遺した料理日誌が隠してありそうな場所が気になって、今ひとつ仕事に身が入らない。
一方、宮中の裏側では人知れず新たな陰謀が進行していた。チェ・パンスルがオ・ギョモの部下から命じられ、チェ尚宮を通じて何かを行おうとしている。そして、今回はクミョンにその役割が与えられるのであった。
「お断りします!そんなことをしなくても、私たちチェ一族は料理の腕で十分に最高尚宮の座を守って行けるものと思います」そんなクミョンにチェ尚宮は、チェ一族から出た尚宮たちは皆優れてはいたが、優れているだけで最高尚宮になれるものではないこと、そして他に優れた者がいなかった訳でもないことを説明し、クミョンの甘さを叱る。「我らチェ一族は、宮廷を牛耳る勢力が表立ってはできぬ仕事を代わりに引き受けて来た。それが我が一族が存在する理由です。汚れ役を引き受けることにより、莫大な富を得て一族は繁栄して来た。それが我が一族の宿命なのだよ」
女官になってすぐに大きな仕事を一つさせるというチェ一族の育成方針に従い、今回の仕事はクミョンに任されたのであった。そしてチェ尚宮はかつて自分も命令を受けて友を死なせたことがあると語る。その「友」とは言うまでもなくチャングムの母ミョンイのことだ。天才的な料理人としての自尊心と、一族の使命との間で苦悩するクミョン・・・。クミョンに与えられた仕事とは、間もなく生まれる中殿の子供を男から女に変える呪いの札を、退膳間に隠しておくことだった。もしも中殿に跡継ぎの男子が産まれたら、チェ一族はもちろんオ・ギョモの地位も危うくなるためだ。
クミョンはあくまでも命令を拒み、チェ尚宮を部屋を出て行く。チェ尚宮はクミョンが出て行った部屋で一人つぶやく。
「それでもお前にはやってもらわねばならん。私がそうだったように・・・」その表情には深い悲しみが刻まれていた。
そんなことが行われているとは知らないチャングムは、ヨンセンに替わって夜食の当番を引き受けていた。最近しきりと他人の夜食当番を替わりたがるチャングムをヨンセンは訝しく思うが、夜食当番を替わってもらうこと自体はありがたいことなので、余り追求しようともしない。
一人退膳間の中で母の飲食抜記を探すチャングム。彼女が夜食当番を替わりたがる理由はこれであった。
翌朝、クミョンの部屋から苦しげな呻き声が聞こえるのに気づいて、チャングムが中に入ってみると、クミョンと同室のヨンノやチャンイの姿はなく、寝間着姿のクミョンが一人で腹部を押さえて苦しんでいた。チャングムはクミョンを心配するが、クミョンは「私のことは放っておいて!」とチャングムを追い出す。どうやらヨンノたちもそうして追い出されたらしい。チャンイはチェ尚宮に伝えたらしいが、チェ尚宮も具合が悪いといい、チャンイを怒鳴りつけて追い出したという。
その夜、部屋を一人抜け出したチャングムはチェ尚宮の元に向かい、具合が悪いというクミョンの代わりに夜食の当番を任せて欲しいと頼むが、チェ尚宮からその必要はないと断られる。だが、諦めきれないチャングムはそれでもこっそり退膳間に向かってしまうのだった。
ついにクミョンは運命を受け容れる。「これが定めなら受け容れます。でもこんな定めは私の代で最後にしてみせます」そう言い捨てて呪い札を受け取り部屋を出るクミョンを見送るチェ尚宮の胸中は複雑であった。
受け取った呪い札を隠すために退膳間に向かうクミョン。だがそこには既にチャングムがいた。チャングムを追い出し、退膳間の鴨居の上に呪い札を隠すクミョン。クミョンが退膳間から出るのを見計らって再び現れたチャングムはまた飲食抜記を探し始める。
夜の退膳間に出入りする二人の姿はヨンセンに全て見られていた。彼女はチャングムが妙に夜の当番をやりたがることを不審に思い、こっそりチャングムの後をつけてきていたのである。何かを隠すクミョンと、何かを探すチャングム。これはきっと何かある・・・。
翌日ヨンセンは自分一部始終を見たことをチャングムに話す。クミョンが何か隠していたと聞いて驚くチャングム。そしてヨンセンがクミョンが呪い札を隠していた鴨居の上を火掻き棒で探ると、小さな帳面のようなものが落ちてくる。その帳面が母の料理日誌であることに気づいたチャングムは、ヨンセンが転んで怪我をしたことにも気づかず、それを拾って退膳間の外へ飛び出して行くのであった。鴨居の上に隠された呪い札の包みが半ば露わになっていることには二人とも気づかなかった。
母の料理日誌を読み、一人涙を流すチャングム。彼女の知らないところで、彼女を取り巻く運命は大きく変って行こうとしていたのだが・・・。
その夜、チャングムは最高尚宮からの呼び出しを受ける。クミョンが隠した御札が発見されてしまったのだ。当番ではないにも関わらず、退膳間に入っていたチャングムが犯人として疑われていた。決行当日、具合が悪いといって部屋から出なかったクミョンに替わって当番を引き受けたいとチェ尚宮に申し出ていたのもチャングムにとっては不利な材料となった。チェ尚宮はその必要はないと申し出を却下していたのだから、何か思惑があると考えられても仕方がなかった。それでもチャングムは退膳間で自分が何を探していたのか、本当のことを話すことができない。自分がミョンイの娘だと知られてしまったら、間違いなく身に危険が及ぶだろう。父や母のように・・・。
そしてチャングムは食べ物も水も与えられず、倉に閉じこめられることになった。
チャングムを密かに処分し、内々に処理することを最高尚宮に進言するチェ尚宮だったが、最高尚宮はこの事件の黒幕を含めた全容を知る必要があると、性急な処置に走ることを否定する。全容を知られてしまったら、チェ一族はもとよりオ・ギョモも無事には済まない。
一刻も早くチャングムを亡きものとせねばならない。そのチェ尚宮の決断に異を唱えるクミョンも、自分の失敗がなければこうはならなかったと言われると返す言葉がない。「だからこういうことには失敗は許されぬと言ったのです」
チェ尚宮がチェ・パンスルに新しい御札の手配を頼んでいるその頃、最高尚宮はカン・ドックに頼んで退膳間から発見された御札の効力を調べさせる。そして、それが産まれてくる子供を男から女に変えるためのものであることが判明する。
最高尚宮の呼び出しを受けて以来、何日も部屋に戻らないチャングムを心配し、ヨンセンはハン尚宮にチャングムの所在をしつこく尋ねる。最高尚宮はハン尚宮の使いに出したと言い、ハン尚宮は最高尚宮の使いに出したと言う。二人が何かを隠しているのは明らかだ。ミン・ジョンホはその二人のやりとりを偶然耳にし、ただならぬ事態が起こっていると見抜く。
チャングムの行方を捜すヨンセンは最高尚宮の部屋の前で、チェ尚宮が最高尚宮にチャングムの処分を急ぐよう迫っているのを盗み聞いてしまう。早速倉に向かい、チャングムにあの帳面のことを話すよう説得するヨンセンだったが、チャングムは聞き入れない。かつて話してはならないことを話したために父を死なせたことが、チャングムの心に重くのしかかっていたのである。
最高尚宮はヨンセンが目撃した当夜の出来事を聞き、クミョンをチャングムが閉じこめられている倉に呼び出す。何かを隠していたのはクミョンであり、チャングムは帳面のようなものを探していたことがヨンセンの口から明かされる。クミョンは身に覚えがないと言い張るが、ハン尚宮はそのクミョンが手の震えを抑えているのに気づく。結局クミョンもチャングムと一緒に倉に閉じこめれることになった。
事態の悪化に苦慮したチェ尚宮はホンイにチェ・パンスルへの手紙を託す。その現場をハン尚宮に目撃されていたことには気づかず・・・。チェ・パンスルはこの不手際に激怒する。もはや、オ・ギョモを頼るしかない。
倉の中のチャングムとクミョン。「ねえ、クミョン・・・あなたがやったの?」「いいえ。私はやっていないわ。あなたでしょ」もう二人は後戻りのできない所まで来てしまったのだった。
ついに最高尚宮の決断が下る。内々に処理するのではなく、チャングムとクミョンを内禁府(ネグミ 王の身辺警護を担当する役所)に引き渡して正式に取り調べを行わせるというのである。その決断にチェ尚宮は反対する。「王様のお住まいに近い退膳間から、中殿様のご出産が迫った時期にあのような札が出たと明るみに出ましては・・・」
「チェ尚宮!あの札が中殿様の出産に関係したものだと何故判る?」出産に関係したものかどうかは判らないが、出産間近のこの時期なので謀反の疑いをかけられる恐れがあると言い繕うチェ尚宮。最高尚宮はだからこそ全てを明るみに出さねばならないと主張して譲らない。たとえ水刺間の全員が厳しい取り調べを受けることになっても・・・。
ついにチャングムとクミョンは内禁衛に引き渡されることになった。最後に最高尚宮は二人に問う。「どちらでも良い、答えなさい。退膳間で何をしていたのだ?」
話してもならず、黙っていてもならず、抜き差しならない状況に追い込まれたチャングム。果たしてこの危機を切り抜けることはできるだろうか。

第11話 「真相究明」

「呪いの札」陰謀の主謀者を察したチョン最高尚宮(チェゴサングン)。全貌を明らかにしようと、チャングムとクミョンの取調べを官憲に委ねることに。そこへ女官長が現われ、不問に付すように命じる。反発するチョン最高尚宮(チェゴサングン)だが、女官長に詰め寄られ引渡しを1日引き延ばすことに。その間に、チャングムに罪を被せるべく、女官長とチェ尚宮(サングン)はあらゆる手を打つ。チョン最高尚宮(チェゴサングン)と同じく事の真相を察するハン尚宮(サングン)は、チャングムの無罪を明かそうと、ヨンセンの発言を頼りに「チャングムが探していたもの」を見つけ出そうとする。しかしチャングムは今こそ亡き父母の遺言を守ると言い、真実を口にしない。このところ容体の優れない王子を気遣い、中宗は特別料理を用意させる。しかし、それを食べた王子の手足が麻痺、料理を作ったカン・ドックが取り調べを受けることに。トックの人柄を知るチョン最高尚宮(チェゴサングン)たちは納得がいかない。しかし麻痺の原因が特定できない医者たちは、料理に毒が混入されていたと主張してくる。

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何も喋ろうとしないチャングムとクミョンを連れて内禁府に向かう最高尚宮を提調尚宮が呼び止める。提調尚宮は最高尚宮を部屋に呼び、今回の件は公にしないようにと命じるのだが、最高尚宮は聞き入れようとしない。最高尚宮が自らの手柄とするために今回の事件を明るみに出そうとしているのなら、「誰のおかげで最高尚宮になれたのか」という理屈で押し切ることもできたが、もとよりそのような意図のない最高尚宮だけに、提調尚宮も説得に苦慮せざるを得なかった。そんな中、提調尚宮の口から出た「私は女官たちだけのことではなく、宮廷全体のことまでも考慮しなければならないのだ」という言葉に、最高尚宮は敏感に反応する。
「誰のために、何のために宮廷全体のことを考慮すると仰るのですか」気色ばむ提調尚宮。「何だと?誰のためにだと?そなたはこの私に疑いを持っているのか!私を疑っているのだな!」押し黙る最高尚宮に、提調尚宮は重ねて言う。「よかろう。では一日だけ待て。例え疑われようとも、私は役目を果たす。状況を把握して、女官たちになるべく害が及ばぬようにするために」
提調尚宮と敵対する自らの立場を宣言することになった最高尚宮。もはや後には引けない。
提調尚宮のそうした動きを知ってか、チェ尚宮は堂々をクミョンを倉から連れ出してしまう。そしてことが収まるまで姿を隠しているよう言い含めるのだった。一方、提調尚宮はチェ尚宮を呼び、事態がここまで悪化するまで自分に知らせなかったことを叱責する。一日の猶予は得たものの、最高尚宮が提調尚宮とチェ尚宮を疑っているのは明らかな上、本当に提訴するのを一日待つかどうかも定かではない。焦る提調尚宮に、チェ尚宮は兄パンスルを通じてオ・ギョモに何らかの手を打ってもらうよう頼んであることを話すのだった。
オ・ギョモを頼るチェ・パンスル。「下手に動けば我々がしたことを白状するようなものだ。強引に押し通すしかあるまい」それは即ち、無理矢理にでもチャングムに罪を押しつけるということだ。オ・ギョモは取調官を始め各方面への根回し工作を命じる。
ハン尚宮はチャングムの部屋で、ヨンセンの言う「チャングムが探していた何か」を見つけようとしていた。それ以外にチャングムを救う道はない。だが、何もそれらしいものは出てこない・・・。一方、オ・ギョモ一派の裏工作は着々と進行して行く。
元々傀儡のつもりで登用した最高尚宮が反意を露わにしたことに腹を立てながらも、不安を拭いきることのできない提調尚宮。そんな提調尚宮にスバル尚宮は、最高尚宮を交代させてはと進言する。最高尚宮は膝が悪く、水刺間を留守にし勝ちな上に、王宮にも滅多に行くことがない。それを理由に解任するのは難しいことではない。ところがその話をしている矢先、提調尚宮のもとに最高尚宮から王宮に参上するとの伝言が届く。
王は、集まった一同の顔色が一様に良くないことに気づき、何か心配事でもあるのかとか問いただす。「最近、女官たちが怠けてばかりおりますので叱りつけていたのですが、それが顔に出てしまったようでございます」そうごまかした最高尚宮に、王は笑って答える。「だが、一番怠けているのはそちであろうが」
王は最高尚宮から食べ物にまつわる話や、民が同じ食材をどう料理しているかについての話を聞くのを楽しみにしていたのであった。「何故最近来ないのだ?毎日欠かさず来るように。そちの話を聞いて余は民に思いをはせるのだからな。」この王の一言で、これまで最高尚宮が余り王宮に足を向けなかったことを王が許した形になってしまい、提調尚宮の目論見は早くも崩れた。後はオ・ギョモが手を打ってくれるのを待つしかないのだ。
必死の努力にも関わらず、何も見つけることができないハン尚宮は、倉の中にぐったりと横たわるチャングムにかつてミョンイを死なせてしまったことへの後悔を語り、何故何も話そうとしないのか問う。だが、チャングムはいつかは打ち明けるつもりだが、今話すことは母との約束を破ることになるからと答えるのだった。「何故こんなに愚かなのか自分でもわかりません。・・・いいえ、本当はわかっています。幼い頃・・・決して他人に話すなと両親に言われていたことがありました。でも私はその言いつけを守れず・・・そのせいで父も、そして母までも命を落としました」自分のせいで両親が死んだのに、自分だけが生きていていいのか。ハン尚宮が自分を責め続けた歳月以上に重い過去がチャングムの口を重く閉ざしていたのだった。
一人自室に戻ったハン尚宮は、ミョンイが濡れ衣を着せられるに至った事件の経緯を思い出す。陰謀に気づき、気味尚宮に訴え出たことが結果的に彼女の命を危険に晒すことになったのだ。もしこのまま最高尚宮が訴え出てしまったらどうなるのか・・・。
最高尚宮にも、迷いがない訳ではなかった。この事件が明るみに出れば、何らかの犠牲は避けられないのだ。深い溜息をつく最高尚宮。
そして翌日、提調尚宮の元に赴く最高尚宮。「一日が過ぎました」だが、追いつめられていたはずの提調尚宮の表情には何故か余裕が感じられる。「行くがよい。お上に訴え出てみよ」薄笑いさえ浮かべて席を立つ提調尚宮。
この一日で裏工作が完了し、提調尚宮は既に身の安全を確保してしまったのだ。「一日待ってしまったのが間違いだった・・・」自室で一人臍を噛む最高尚宮であった。
苦悩する最高尚宮の元に、ハン尚宮がやって来る。「お前も私に事を隠せというのか?」最高尚宮は、料理を権力争いの道具にする輩があれば、必ず真相を明らかにし、厳しく罰しようと決意してこの座に着いたことを語る。

 

だがハン尚宮は、今訴え出れば結果的にチャングム一人が死ぬことになると、提訴を止めてくれるよう懇願する。かつてミョンイが無実の罪で殺された時、彼女たちは何もすることができなかった。自分に心を開いてくれたチャングムが、同じようにして死ぬのはハン尚宮にとって耐え難いことだった。だが、最高尚宮は同じ理由から敢えて訴え出ねばならないと考えていた。あの時ただ見ていることしかできなかったことを深く悔いているのは彼女も同じだったのだ。しかも、高齢の最高尚宮に次の機会はない。

ハン尚宮を部屋に残し、内禁衛を訪れる最高尚宮。だが、彼女の胸中にはハン尚宮の言葉が重くのしかかる。チャングムがミョンイと同じ目に会うことが、それをただ見ていなければならないことが怖い。ハン尚宮の想いは最高尚宮の想いでもあった。しばしの逡巡の末、最高尚宮は水刺間へと引き返すのだった。

最高尚宮は深い無念を胸に提訴を諦め、提調尚宮に非礼を詫びる。チャングムが母との約束を守ろうとしたことは、結果的に最高尚宮に犠牲を強いることになってしまったのだ。ハン尚宮は衰弱したチャングム背負いながら、損得を考えずに行動しそれ故に苦しむチャングムと、チャングムに振り回されることになるであろう自分の人生を「それでいい」と語る。「そうやって、生きて行きましょう。」チャングムもクミョンも罪を問われることなく、事件は闇に葬られた。だが、クミョンにとってはチェ一族の一員として生きることの苦しさを思い知らされる出来事となったのである。
水刺間が落ち着きを取り戻したのも束の間、新たな事件が持ち上がる。カン・ドックの作った「チュンジョチョナプタン」を食べた王子が全身の麻痺を起こしてしまったのだ。チュンジョチョナプタンはごく普通の食材を用いて作られる料理で、それ自体が麻痺を引き起こすことなど有り得ない。また、銀の匙を用いた毒の検査も行われており、通常の毒物が含まれていたとも考えられない。内医院からは御医(王のみを担当する最上位の医員。通常王子はもっと下位の医員が担当する)までが王子の容態を見るが、全く原因は掴めなかった。結局、カン・ドックが未知の毒を用いたのではないかと疑われることになる。
料理に関わる事件であるだけに水刺間にも協力が要請された。様々な毒物を入れてチュンジョチョナプタンを作り、その中に銀の匙を変色させないものがあるかどうかを調べることになるが、全て匙が変色してしまい、手がかりは得られない。
王の意向により、カン・ドックの取り調べよりも王子の治療法を見つけることが優先されていたが、全く手がかりが見つからないことに業を煮やしたオ・ギョモは、カン・ドックを尋問してどのような毒を使ったのか聞き出すよう命じる。内禁府に連行されるカン・ドック。チャングムは必ず原因は突き止めるから、苦しくても絶対やっていないと言い通すようトックに伝えるのだった。
だが、チャングム自身にも何が原因なのか見当がつかない。
ハン尚宮の「食べ合わせ」の講義を受けていてチャングムは解決の糸口をつかむ。チュンジョチョナプタンの中に含まれる食材と一緒に食べてはいけないものを、王子は口にしていたのではないか。
講義の途中で飛び出したチャングムは、医女に王子が摂っていた薬について尋ねる。王子は不眠に悩まされていたため、「肉豆蒄(にくずく ナツメグのこと)」の油を飲んでいたという。「肉豆蒄」は明国で薬剤としても食材としても使われるものだが、食材として使う場合は油を抜くらしい。その油を飲んでいた王子。これはきっと何か関係しているに違いない。
ミン・ジョンホに頼んで医書を借り受け、夜を徹して「肉豆蒄」について調べるチャングム。そしてついに、大量に摂取すると体が強張ることがあるとの記述を見つける。だがたまたま目を覚ましたヨンセンに、医官がそんなことも知らずに処方するはずがないと指摘されてしまう。
「医者にも判らなかったことをあなたがどうしようっていうの?そのうち判るわよ」諫めるヨンセンにチャングムは答える。
「でも判らなかったら?自分でも調べなきゃ。万が一このまま、原因がわからなかったらトックおじさんは毒薬を飲まされてしまうわ」その時、チャングムはあることに思い至る。「毒薬・・・毒薬・・・人参・・・高麗人参!」真夜中の部屋を飛び出すチャングム。
翌朝、王子の容態が好転しないことに頭を痛める長官や尚宮たちの元に、ヨンセンが駆け込んでくる。「尚宮様!チャングムが!チャングムが!」
一同が駆けつけてみると、チャングムが竈の前で倒れているではないか。
「尚宮様!わかりました!わかりました!」チャングムは一体何を突き止めたのであろうか。

第12話 「ハン尚宮の賭け」

王子の手足麻痺の原因が、食べ合わせにあることを身をもって証明したチャングム。晴れてトックは無罪放免となり、チャングムも治療を受け麻痺を治す。女官長の誕生祝いを翌日に控え、ハン尚宮(サングン)はチャングムにチョン最高尚宮(チェゴサングン)の手伝いを申し付ける。女官長誕生祝いの宴は水刺間(スラッカン)の最高尚宮(チェゴサングン)が作る料理で締めくくるのが慣わしなのだ。誕生祝いの当日。次々と高価な贈り物を贈られ、ご機嫌の女官長。締めの料理を食べた女官長はしかし、その味に激怒し自分への反逆だとまで言い放つ。その料理とは具合の悪いチョン最高尚宮(チェゴサングン)に代わり、チャングムが味付けしたものだった。チャングムは自分の味覚が麻痺したままであることに気付き、一人、治療法を模索する。チェ尚宮(サングン)はこの期に乗じ、最高尚宮(チェゴサングン)の座を得ようと画策。それを察したチョン最高尚宮(チェゴサングン)は対抗策を講じる。

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チャングムは肉豆蒄と高麗人参という組み合わせが王子に麻痺症状を引き起こしたことを、自らの体を実験台にして証明して見せた。王子が摂っていた肉豆蒄の油は少量だったが、チュンジョチョナプタンに入っていた高麗人参がその効果を最大限に高めてしまったのだ。余りに無謀な試みを叱る最高尚宮だったが、チャングムはトックの無実を証明できたことを喜ぶ。
麻痺の原因が特定できたことで、王子の治療も進展し、手足の感覚が戻り始める。王は明国で使われているというだけの理由で十分な検証もなく肉豆蒄の使用を許した御医を叱り、チャングムには褒美として牛肉を与えるのだった。
カン・ドックは無事釈放された。トック夫妻はチャングムに会って礼が言いたいとハン尚宮に頼むが、チャングムはとても外に出てこられる状態ではない。ハン尚宮は二人に「具合が悪くて休んでいる」とだけ伝え、彼女が何故具合を悪くしたかは言わずにおいた。トックの妻は、毎月チャングムの俸禄から引いている米を半分にするとの伝言をハン尚宮に預け、トックを連れて帰っていくのだった。
チュンジョチョナプタン事件は解決したものの、水刺間にはまた新たな問題が起こっていた。提調尚宮の誕生祝いの宴が近づいていたが、呪い札事件以来無理を続けてきた最高尚宮の体調が悪化していたのだ。膝の痛みも腎臓が弱っているのが原因であり、これ以上体を酷使することはできない。
宴の最後は水刺間最高尚宮の料理で締めくくるのが例年の習わしであり、ここで最高尚宮以外の者に料理を任せてしまっては、最高尚宮を疎ましく思っている提調尚宮に恰好の口実を与えることになってしまう。ハン尚宮は当番があって最高尚宮を手伝うことができないため、チャングムに補助につけ、最高尚宮の負担を減らそうとする。
一方チェ尚宮は毎年恒例となっている提調尚宮への珍奇な贈り物をチェ・パンスルに用意してもらっていた。同時に、提調尚宮と最高尚宮の対立が表面化したことに目をつけ、チェ・パンスルからオ・ギョモに探りを入れさせる。この機会を利用してチョン尚宮を最高尚宮の座から引きずり下ろそうというのだ。・・・最高尚宮は些細な失敗も許されない状況に追い込まれていた。
提調尚宮の誕生祝いの宴が始まる。様々な祝いの品を贈られ、上機嫌の提調尚宮。
だがその頃、締めくくりの料理を作っていた最高尚宮の体調に異変が起こっていた。目眩と吐き気を訴えてよろめく最高尚宮。そこに丁度宴の会場からの使いが訪れ、料理を出すように伝えられる。
やむを得ず最高尚宮はチャングムに味付けを任せる。チャングムは最高尚宮が作った出汁の味が薄いことに気づき、調味料を足して行く。最高尚宮の体調不良が味つけに影響したのだろうか・・・。
最高尚宮の料理を口にするや、提調尚宮は激怒する。「お前はこんなものを私に食べろというのか!」そして提調尚宮はスバル尚宮や気味尚宮にも味を見させるが、皆一様に眉を顰める。
チャングムはその話を聞き、自分の味付けに問題があったのか最高尚宮に尋ねる。最高尚宮は「料理の問題ではない」と言うのだが、チャングムの不安は消えなかった。
チャングムは、宴の後かたづけをしている女官たちと一緒に問題の鍋の味を確認する。調味料が多すぎ、味に調和もないというクミョン。ミン尚宮やチョバンは大勢の前で怒鳴りつけるほど酷い味ではないと言うが、「味がおかしい」という点ではクミョンと同意見だった。
突然その場を立ち去り厨房に向かうや、片っ端から調味料を舐めてみるチャングム。そして楊枝で舌をつつきながら気づく。
「舌が鈍くなってるわ!舌が・・・」
提調尚宮の元に集まった尚宮たち。「あんな料理を出すとは!提調尚宮様への反逆です!」スバル尚宮は言い切る。
医女から最高尚宮の健康状態を聞き出したチェ尚宮は、体調の悪化が味覚に影響を及ぼしているものと判断した。提調尚宮との対立に加え、十分に仕事をこなすことのできない健康状態。傀儡であったはずのチョン尚宮に代わり、自分が最高尚宮の座に着くチャンスが巡ってきたのだ。オ・ギョモからも口添えしてもらうようチェ・パンスルに頼み、着々と根回しを進めるチェ尚宮であった。
スバル尚宮に茶を振る舞いながら、「最高尚宮の座を元に戻す時が来た」と話すチェ尚宮。それに対してスバル尚宮はそれとなく賄賂を要求する。茶畑の利権を約束されたスバル尚宮は、提調尚宮の説得にかかる。チェ尚宮を最高尚宮に据えるべきであると・・・。
呪い札事件の後、最高尚宮は自分が追い出されるであろうことを覚悟していた。宴の当日手助けができなかったハン尚宮は何とか最高尚宮の力になろうとするが、最高尚宮はそれを受け容れない。
一方、チャングムは舌の感覚が鈍くなってしまったことを医女に相談するが、時間をかければきっと良くなると励まされるばかりで、当座の解決策がある訳ではなかった。そしてチャングムは新たに臨床系の医書を借り受けるべく、ミン・ジョンホの元を訪ねる。ミン・ジョンホは王子の病気の原因を突き止めたチャングムへの賞賛を惜しまなかったが、そのことで味覚を失ったチャングムの心境は複雑だった。
一方、チェ・パンスルは最高尚宮を交代させるようオ・ギョモを説得していた。呪い札事件での失敗によりチェ一族に対する信頼感が揺らいでいたオ・ギョモであったが、最高尚宮には自分たちの側の人間を置かなければ不都合が起こるとの言葉には納得せざるを得なかった。
最高尚宮の味方は後ろ盾を持たず欲もない、長番内侍のみ。提調尚宮にとって恐ろしい相手ではい。提調尚宮は見舞いにかこつけてスバル尚宮を最高尚宮の元に行かせ、暗に引退を迫る。「そうね。退く時が来たようだね。・・・承知したとお伝えして」このままチョン尚宮は水刺間を去ってしまうのだろうか?
王に引退の意志を伝える最高尚宮。引き留める王を最高尚宮自身が説得し、提調尚宮とチェ尚宮が安心したのも束の間、最高尚宮は思いも寄らぬことを言い出す。「畏れ多くも、一つ最後のお願いがございます」
最高尚宮の願いとは、自分が退くに当り水刺間で最も優秀な二人の尚宮、即ちハン尚宮とチェ尚宮を競わせ、勝った方を次代の最高尚宮とさせたいというものだった。競争により腕を磨き、より優れた者が最高尚宮となれば、良い前例となる。「はっはっは。それは面白いのう。余は高みの見物をしながら有能な人材を登用できるわけだ!」「しかしそれでは・・・」提調尚宮は止めようとするが、長番内侍が割って入る。「妙案でございます。他の部署でも競わせてみてはいかがでしょうか」
最高尚宮は自分の意志を継いでくれる者が次代の最高尚宮となる可能性に賭けたのである。そのためには何としてもハン尚宮が勝たなければならない。最高尚宮は、ハン尚宮に必ず実力で勝ち、最高尚宮となって水刺間の不正を糺すよう命じる。
チェ尚宮もまた提調尚宮に必ず勝ってみせるとの決意を伝えるが、提調尚宮にとっての問題はむしろ「競合によって最高尚宮が決定される」というやり方そのものにあった。各部門の最高尚宮任命権を奪われてしまったら、提調尚宮の存在価値はない。何としても王の決定を覆してみせると息巻く提調尚宮を見て、チェ尚宮は密かに嘲りの笑みを浮かべるのだった。
ハン尚宮はチャングムを呼び、最高尚宮の意志と、自分がそれを受け継ぐために必ず競合に勝つ決意であることを伝える。そして、チャングムに料理の奥義を教え、上級女官として自分を補佐させるつもりであることを話す。だが、チャングムは自分には出来ないと答える。
チャングムは味覚がおかしくなったことをハン尚宮に打ち明ける。医女は時間をかければ治ると言うが、今のチャングムでは手助けするどころか迷惑をかけることになってしまう。提調尚宮の誕生祝いの料理のように・・・。そんなチャングムをハン尚宮は叱りつける。「何故諦めるの!お前らしくもない!」
翌日、ハン尚宮はチャングムを連れて宮外の医員を訪ねるが、どの医員も「いずれは治るかも知れないがそれがいつになるかは判らない」と診断する。
「ハン尚宮様は勝たねばなりません」「お前なしでは勝てないわ」「私のせいで・・・最高尚宮様のお志が果たせないことになっては・・・」「お前がいてこそ果たせるの」「私を・・・お諦めになって下さい!」「お前が必要なの!」
帰り道、二人は市場で盲目の魚売りから鰊を買う。この魚売りは目は見えなくとも手触りと臭いで新鮮な鰊を見分けることができた。この魚売りを見たことが後にハン尚宮にある決意をさせるのだが・・・。
厨房にある食材を手当たり次第に口にし、果ては熱湯を口に浴びせるチャングム。だが味覚は戻ってこない。
一人苦悩するチャングム。
ハン尚宮もただ見守ることしかできない・・・。だが、その夜ハン尚宮はあることを思いつくのだった。
遂に最高尚宮から正式に競合についての発表が行われた。「勝った者が最高尚宮となる。逆に、敗れたものは自ら潔く水刺間を去らねばならない」
そして水刺間の女官たち全員が集められ、ハン尚宮とチェ尚宮を手助けする女官を一人づつ選ぶことが許される。チェ尚宮が選んだのは当然クミョン。「ではハン尚宮も指名せよ」「私は・・・」目を伏せるチャングム、期待に顔を輝かせるチョバン・ヨンノ・ヨンセン・チャンイ。
「チャングムに致します」果たしてチャングムの味覚は戻るのか?ハン尚宮に策はあるのだろうか?


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